落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第17話 Fランク冒険者の初仕事

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約束の日、アルトは少しだけ背筋を伸ばして冒険者ギルドの扉を開けた。
カウンターで待っていたギルドマスターは、アルトの姿を見ると頷き、登録用の書類と小さな銅製のプレートを取り出した。

「今日から君も、このアッシュフォード冒険者ギルドに所属する正式な冒険者だ。ランクは【F】。一番下だが、全ての冒険者はここから始まる。このプレートがその証だ。紛失するなよ」

ギルドマスターは、アルトの名前とランクが刻まれたプレートを手渡した。
ひんやりとした金属の感触。
ずしりとした重み。
アルトはそれをしっかりと受け取り、胸元の服に留めた。
ついに、自分も冒険者として認められたのだ。

「Fランクとはいえ、ギルドの一員である以上、その行動には責任が伴う。依頼を確実にこなし、他の冒険者や村人たちの信頼を得られるよう、精進することだな。期待しているぞ、アルト」

マスターからの激励の言葉に、アルトは力強く頷いた。

「はい!ありがとうございます!」

周囲の冒険者たちも、どこかアルトを見る目が変わったように感じられた。
もう「使えないギフト持ち」ではなく、「ギルドに認められた新人」として見られている。
それは、アルトにとって大きな一歩だった。

正式な冒険者となったアルトは、早速、Fランクとして初めての依頼を受けることにした。
依頼掲示板には、以前は見えなかったFランク向けの依頼がいくつか追加されている。
スライムやラット討伐に加え、「近くの森の定期見回り」や、「キノコの魔物・ブルーキャップの傘の採取」といった、少し毛色の違う依頼もあった。

アルトは少し考えた末、「ブルーキャップの傘の採取(5個)」の依頼を選んだ。
報酬は銅貨20枚。
ジャイアントラット討伐より少し高い。
以前ギルドでその名を聞いたことがあり、毒を持つという点で、これまでの相手とは違う経験ができるだろうと考えたからだ。

依頼書をギルドマスターに提出すると、マスターはアルトにアドバイスをくれた。

「ブルーキャップか。あのキノコは毒胞子を撒くからな。風向きには十分注意しろ。それと、傘に直接触れると皮膚がかぶれることがある。丈夫な手袋は必須だぞ」

「はい、気をつけます」

アルトはギルドを出ると、まずは村の雑貨屋へ向かい、マスターのアドバイス通り、丈夫な革手袋を購入した。
念のため、顔の下半分を覆える清潔な布も用意した。
さらに、リナの元を訪ね、ブルーキャップの毒に効くかもしれない、簡単な解毒作用のある薬草を分けてもらった。
備えあれば憂いなしだ。

準備を整えたアルトは、ブルーキャップが生息するという森の奥深く、湿気の多い地帯へと足を踏み入れた。
そこは、以前ファイアハーブを採取した場所よりもさらに奥まった場所で、空気はひんやりと湿り気を帯び、陽の光もあまり届かない、少し不気味な雰囲気が漂っていた。

慎重に進んでいくと、やがて、じめじめとした地面に、青白い光をぼんやりと放つキノコが点在しているのが見えてきた。
大小様々な大きさの、奇妙な形のキノコ。
これがブルーキャップだ。
近づくと、傘の部分から、キラキラと光る青白い胞子が、ゆっくりと漂い出ているのが見える。

アルトは風向きを確認し、風下側からゆっくりと近づいた。
買ってきた革手袋をはめ、用意した布で鼻と口をしっかりと覆う。
そして、息を軽く止め、ナイフを使って手早くブルーキャップの傘の部分だけを切り取っていく。
切り取った傘は、直接手で触れないように注意しながら、薬草とは別の、専用の採取袋にそっと入れていく。

作業は順調に進むかに思えた。
しかし、採取している最中、ふとアルトはギフトの実験で感じた「微弱な衝撃波」のようなもののことを思い出した。

「もしかして、あれでこの胞子を吹き飛ばせないか…?」

好奇心から、アルトは試しに、漂ってくる胞子に向かって腕を突き出し、ギフトの反射の感覚を応用して、軽く「気」を放つようなイメージで力を込めてみた。
すると、どうだろう。
気のせいかもしれないが、アルトの周囲を漂っていた胞子が、一瞬だけフワリと揺らめき、彼から少し遠ざかったように見えたのだ。

「…やっぱり、何か出てる?」

ギフトの新たな可能性かもしれない。
完全に胞子を防げるわけではないが、使い方によっては、毒などの厄介な効果を少し軽減できるかもしれない。
アルトは少し興奮しながらも、今は依頼に集中することにした。

あと一つで目標の5個、というところで、不意に風向きが変わった。
アルトがそれに気づくより早く、濃密な青白い胞子のかたまりが、風に乗って彼の顔めがけて飛んできた。

「しまっ…!げほっ、げほっ!」

布で覆ってはいたものの、隙間から胞子を吸い込んでしまったらしい。
激しい咳と共に、急な目眩と吐き気がアルトを襲う。
視界がぐらつき、立っているのもやっとだ。

「まずい…!これが、ブルーキャップの毒…!」

アルトは慌ててその場から数歩下がり、新鮮な空気を求めて大きく息を吸い込んだ。
そして、震える手でリナにもらった解毒薬草を取り出し、口に含んで強く噛みしめる。
苦い味が口の中に広がった。

幸い、吸い込んだ胞子の量が少なかったのか、あるいは薬草が効いたのか、数分ほどで目眩と吐き気は治まってきた。
しかし、毒の恐ろしさを身をもって体験し、アルトの額には冷や汗が滲んでいた。

「油断してた…」

Fランク冒険者としての初仕事は、思った以上に危険と隣り合わせだということを、アルトは痛感した。
まだ依頼は終わっていない。
アルトは気持ちを引き締め直し、残りのブルーキャップの傘を、先ほどよりもさらに慎重に採取する必要があった。
ギフトの新たな可能性と、毒への対処という新たな課題。
アルトのFランク冒険者としてのキャリアは、波乱含みで幕を開けたのだった。
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