14 / 17
14話
しおりを挟む
「急に……幽霊とか言われても……」
目の前で悲しむ幽霊はハヤトと名乗った。見た目通りの年齢で元の人物が死んだのであれば三十代くらい。個別の記憶を持つ二番目の幽霊だ。
動揺して歩き回っている間に、裏から表の世界に移動してしまったのだろうとルークは言う。
さっきまで、いつも通り仕事をしていたと。夢を見ている気分と。早く目が覚めて欲しいと。ハヤトは言った。
「すぐに理解するのは難しいですよね」
草むらから山彦が出てくる。
「うわっ、化物」
当たり前の反応だが、腰を抜かしてしまったハヤトも人間ではない。
「これが普通の反応だな」
「わたしも驚いてたよ、反応が薄いだけで」
「……嬉しそうだな」
ようやく落ち着いたのか、ハヤトは山彦の手を取り、立ち上がった。
「これからどうすればいいんでしょうか」
「そうですねぇ。必死に成仏を目指すか、ゆるーく僕達の世界で生きていくか。どちらかですね。好きな時にこっちの世界に来ることもできますし、楽しく生きている幽霊も沢山いますよ」
山彦は体を目一杯使い自分達の世界の楽しさを表現する。
「成仏できるの?」
「吸血鬼は心臓に杭を打つと死ぬ。みたいに、魔物ごとに死に方が決まっていて、何番目だろうが人間からしたら同じ幽霊だから。死に方は一緒なんだ」
でも、それじゃあ、死ぬために生まれたみたいじゃん。
「成仏か……」
「成仏するための未練、わかるんですか?」
「いえ、思いつくものはありますけど、これってものは……正直、死んだことも、まだ半信半疑というか……受け入れられてないというか」
「悪霊より難しいんだ。今までの延長線のように過ごせるから」
わたしにだけ聞こえるようにルークが呟いた。
「取り敢えず、僕達の世界に行ってみませんか。嬉しくないかもですが、時間は無限にありますし。案内しますよ」
「……そうですね」
ハヤトが辺りを見渡す。
「結婚……する予定だったんですよ」
「えっ」
「それが、未練だったら……成仏なんて、できないですね」
「会いに行くことはできますよ。夢の中なら話すことも」
山彦が言葉を絞り出してくれる。
「ここに、彼女と来たことがあるんです。友達とも。楽しかったから死んでも来ちゃったんですかね。ここが一番だなんて思ってなかったけど」
「死んでも来たくなる遊園地か、最高のキャッチコピーだな」
「教えてあげたいですね。運営してる人に」
少し和んできたかな。
「学生の時にそんな言葉が思いつきたかったなぁ」
「どうして?」
「昔、遊園地でバイトしてたんですよ。だから、その時に思いついていたら、採用されてボーナスとか貰えたかも」
ハヤトが見上げた夜空には、社会人になってから見た星の何十倍もの数の星が光る。
「あぁ、子供の笑顔が好きだったな。ここに来た理由には従業員の時の気持ちもあったのかなぁ」
ハヤトが大きく息を吸い、そして、吐き出す。
「俺、そっちの世界で、やること見つかりますかね?」
「どうだろう。何もしなくてもいいのが、少ない魅力なんだが」
「……そうですか。仕事、結構好きだったんで、暇に慣れないとですね」
「そうか。無理に何もしないのはよくないな」
ルークが山彦にバトンを渡した。十分でも百分でも彼の言葉を待つ覚悟をする。
「……もしよければ……僕と一緒に遊園地を作りますか?」
「遊園地?」
「はい……」
山彦が自分の夢をハヤトに語り出した。これできっと上手くいくだろう。羨ましいくらいに二人の目が輝く。
「人間は凄い。人間にはなれない。そんな考えが彼の気持ちに蓋をしていたんだ」
はしゃぐ二人にはわたし達が見えていない。わたしの視線もルークだけが映る。
「背中を押せてよかったな」
小さく頷いた。
目の前で悲しむ幽霊はハヤトと名乗った。見た目通りの年齢で元の人物が死んだのであれば三十代くらい。個別の記憶を持つ二番目の幽霊だ。
動揺して歩き回っている間に、裏から表の世界に移動してしまったのだろうとルークは言う。
さっきまで、いつも通り仕事をしていたと。夢を見ている気分と。早く目が覚めて欲しいと。ハヤトは言った。
「すぐに理解するのは難しいですよね」
草むらから山彦が出てくる。
「うわっ、化物」
当たり前の反応だが、腰を抜かしてしまったハヤトも人間ではない。
「これが普通の反応だな」
「わたしも驚いてたよ、反応が薄いだけで」
「……嬉しそうだな」
ようやく落ち着いたのか、ハヤトは山彦の手を取り、立ち上がった。
「これからどうすればいいんでしょうか」
「そうですねぇ。必死に成仏を目指すか、ゆるーく僕達の世界で生きていくか。どちらかですね。好きな時にこっちの世界に来ることもできますし、楽しく生きている幽霊も沢山いますよ」
山彦は体を目一杯使い自分達の世界の楽しさを表現する。
「成仏できるの?」
「吸血鬼は心臓に杭を打つと死ぬ。みたいに、魔物ごとに死に方が決まっていて、何番目だろうが人間からしたら同じ幽霊だから。死に方は一緒なんだ」
でも、それじゃあ、死ぬために生まれたみたいじゃん。
「成仏か……」
「成仏するための未練、わかるんですか?」
「いえ、思いつくものはありますけど、これってものは……正直、死んだことも、まだ半信半疑というか……受け入れられてないというか」
「悪霊より難しいんだ。今までの延長線のように過ごせるから」
わたしにだけ聞こえるようにルークが呟いた。
「取り敢えず、僕達の世界に行ってみませんか。嬉しくないかもですが、時間は無限にありますし。案内しますよ」
「……そうですね」
ハヤトが辺りを見渡す。
「結婚……する予定だったんですよ」
「えっ」
「それが、未練だったら……成仏なんて、できないですね」
「会いに行くことはできますよ。夢の中なら話すことも」
山彦が言葉を絞り出してくれる。
「ここに、彼女と来たことがあるんです。友達とも。楽しかったから死んでも来ちゃったんですかね。ここが一番だなんて思ってなかったけど」
「死んでも来たくなる遊園地か、最高のキャッチコピーだな」
「教えてあげたいですね。運営してる人に」
少し和んできたかな。
「学生の時にそんな言葉が思いつきたかったなぁ」
「どうして?」
「昔、遊園地でバイトしてたんですよ。だから、その時に思いついていたら、採用されてボーナスとか貰えたかも」
ハヤトが見上げた夜空には、社会人になってから見た星の何十倍もの数の星が光る。
「あぁ、子供の笑顔が好きだったな。ここに来た理由には従業員の時の気持ちもあったのかなぁ」
ハヤトが大きく息を吸い、そして、吐き出す。
「俺、そっちの世界で、やること見つかりますかね?」
「どうだろう。何もしなくてもいいのが、少ない魅力なんだが」
「……そうですか。仕事、結構好きだったんで、暇に慣れないとですね」
「そうか。無理に何もしないのはよくないな」
ルークが山彦にバトンを渡した。十分でも百分でも彼の言葉を待つ覚悟をする。
「……もしよければ……僕と一緒に遊園地を作りますか?」
「遊園地?」
「はい……」
山彦が自分の夢をハヤトに語り出した。これできっと上手くいくだろう。羨ましいくらいに二人の目が輝く。
「人間は凄い。人間にはなれない。そんな考えが彼の気持ちに蓋をしていたんだ」
はしゃぐ二人にはわたし達が見えていない。わたしの視線もルークだけが映る。
「背中を押せてよかったな」
小さく頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる