十三月の風

アオバ

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14話

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「急に……幽霊とか言われても……」
 目の前で悲しむ幽霊はハヤトと名乗った。見た目通りの年齢で元の人物が死んだのであれば三十代くらい。個別の記憶を持つ二番目の幽霊だ。
 動揺して歩き回っている間に、裏から表の世界に移動してしまったのだろうとルークは言う。
 さっきまで、いつも通り仕事をしていたと。夢を見ている気分と。早く目が覚めて欲しいと。ハヤトは言った。
「すぐに理解するのは難しいですよね」
 草むらから山彦が出てくる。
「うわっ、化物」
 当たり前の反応だが、腰を抜かしてしまったハヤトも人間ではない。
「これが普通の反応だな」
「わたしも驚いてたよ、反応が薄いだけで」
「……嬉しそうだな」
 ようやく落ち着いたのか、ハヤトは山彦の手を取り、立ち上がった。
 
「これからどうすればいいんでしょうか」
「そうですねぇ。必死に成仏を目指すか、ゆるーく僕達の世界で生きていくか。どちらかですね。好きな時にこっちの世界に来ることもできますし、楽しく生きている幽霊も沢山いますよ」
 山彦は体を目一杯使い自分達の世界の楽しさを表現する。
「成仏できるの?」
「吸血鬼は心臓に杭を打つと死ぬ。みたいに、魔物ごとに死に方が決まっていて、何番目だろうが人間からしたら同じ幽霊だから。死に方は一緒なんだ」
 でも、それじゃあ、死ぬために生まれたみたいじゃん。
「成仏か……」
「成仏するための未練、わかるんですか?」
「いえ、思いつくものはありますけど、これってものは……正直、死んだことも、まだ半信半疑というか……受け入れられてないというか」
「悪霊より難しいんだ。今までの延長線のように過ごせるから」
 わたしにだけ聞こえるようにルークが呟いた。
「取り敢えず、僕達の世界に行ってみませんか。嬉しくないかもですが、時間は無限にありますし。案内しますよ」
「……そうですね」
 ハヤトが辺りを見渡す。
「結婚……する予定だったんですよ」
「えっ」
「それが、未練だったら……成仏なんて、できないですね」
「会いに行くことはできますよ。夢の中なら話すことも」
 山彦が言葉を絞り出してくれる。
「ここに、彼女と来たことがあるんです。友達とも。楽しかったから死んでも来ちゃったんですかね。ここが一番だなんて思ってなかったけど」
「死んでも来たくなる遊園地か、最高のキャッチコピーだな」
「教えてあげたいですね。運営してる人に」
 少し和んできたかな。
「学生の時にそんな言葉が思いつきたかったなぁ」
「どうして?」
「昔、遊園地でバイトしてたんですよ。だから、その時に思いついていたら、採用されてボーナスとか貰えたかも」
 ハヤトが見上げた夜空には、社会人になってから見た星の何十倍もの数の星が光る。
「あぁ、子供の笑顔が好きだったな。ここに来た理由には従業員の時の気持ちもあったのかなぁ」
 ハヤトが大きく息を吸い、そして、吐き出す。
「俺、そっちの世界で、やること見つかりますかね?」
「どうだろう。何もしなくてもいいのが、少ない魅力なんだが」
「……そうですか。仕事、結構好きだったんで、暇に慣れないとですね」
「そうか。無理に何もしないのはよくないな」
 ルークが山彦にバトンを渡した。十分でも百分でも彼の言葉を待つ覚悟をする。
 
「……もしよければ……僕と一緒に遊園地を作りますか?」
「遊園地?」
「はい……」
 山彦が自分の夢をハヤトに語り出した。これできっと上手くいくだろう。羨ましいくらいに二人の目が輝く。
「人間は凄い。人間にはなれない。そんな考えが彼の気持ちに蓋をしていたんだ」
 はしゃぐ二人にはわたし達が見えていない。わたしの視線もルークだけが映る。
「背中を押せてよかったな」
 小さく頷いた。
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