十三月の風

アオバ

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12話

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「ところで、ここに住んでいるのか?」
 周りに山はあるが、たしかにここに山彦が住んでいるのはイメージと違うかもしれない。
「いえ、僕の住処だった山は人間によって切り開かれてしまいました。なので、今はホームレスです」
 言葉に反した屈託のない笑顔に体が硬直する。
「嬉しそうに見えるが」
「もちろん、最初は悲しかったですし、悔しかったですよ。でも、それ以上に人間って凄いなって思っちゃったんですよね」
「凄い?」
 取って食われるのではと恐怖していたが、返ってきた意外な言葉に思わず反応をしてしまう。
「切り開かれた結果、できたのが遊園地がだから、そう思えたんですけどね」
 ここではない、どこか別の遊園地が山彦の手の上に具現化する。
「山彦は人を喜ばせるために生まれた妖怪だと僕は思っています。声が返ってくれば、子供も大人もみんな嬉しそうにしてくれるんです。その笑顔が僕は大好きでした」
 ルークの人形劇とは違う。ビデオカメラで撮ったようなリアルな映像が人の笑顔を映す。
「でも、ここはもっと凄いんです。妖怪の力ではここまで人を笑顔にさせることはできません。人生に影響を与えることもできません」
 多分、この魔法は山彦が今まで見てきた景色を映しているのだろう。
「妖怪も遊園地も人間の感情が作り出したものなんですけどね。ここまで大きな差があるのかと、そんな感情が住処を失った悲しみを超えちゃったんですよ」
 気を抜いてしまったからなのか、脈絡もなく見たことない不気味なキャラクターが映し出される。
「これは?」
「あっ、これはダメです」
 山彦は慌てて魔法を消す。
「今のは?」
「……オリジナルのキャラクターです。僕の夢は僕達の世界に遊園地を作ることでして……その遊園地のキャラクターを考えてるんですけど、中々、上手く考えられなくて……」
「凄い夢ですね。でも、そんなことできるんだ」
 僕達の世界とはルークが言っていた裏の世界のことだろう。表と同じと言っていた世界だが建築はできるのか。何ができて何ができないのか、わたしの勝手な想像とズレが生じた。
「魔法を使えば可能だと思うが、何故、わざわざそんなことを?」
 人間を喜ばせたいのであれば、裏の世界じゃ駄目だからかな。
 何かに引っかかったようなルークの言葉がわたしに引っかかってしまう。
「それは、この笑顔を妖怪達の中にも生み出したいからです。僕達は人間よりも自由に動き回れるのに、決まった範囲の中で過ごし、感情もなく決まった行動を続ける。殆どが人間の作ってくれた枠の中で生きています。でも、これが作りものだとしても、僕達にも感情があるんだから、もっと自由に楽しめたらなって。馬鹿みたいですけどね」
 最後、山彦は恥ずかしそうに笑って誤魔化した。
「いいじゃないか。きっとウケるさ」
「うん。行ってみたい」
 わたしが死んで、二番目の幽霊になったとしたら、きっと喜ぶだろう。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「ここを使うのか?」
「使うかもしれませんが、今は参考にするため日本中の遊園地を回っているんです」
 また二人だけが理解をして話が進む。
「見て回るなら昼の方がいいんじゃないか?」
「もちろん、営業時間にもいますよ。営業時間は人やアトラクションが動いている姿をみて、夜に細かいところを見ています」
 この場所の昼の姿を山彦がまた魔法を使い見せてくれる。
「そうだ。もしよければ案内しますよ。このまま、ずっと立ち話もなんですし、昼の姿と共に見れば、楽しめるかと」
 任せるという態度のルークを確認し、そして、わたしは山彦の提案を受けることにした。
「じゃあ、案内しますね」
 張り切って歩き出した山彦の後を追う。
「そういえば、ここのお化け屋敷は怖いって有名ですよね」
「そうなんですよ。僕も怖くて怖くて」
 あぁ、怖かったんだ。
 その姿に似合わぬ返答に笑ってしまう。
「私達の方が恐怖の対象だろ」
「そうですけど、怖いものは怖いんですよ」
「山彦さんがお化け屋敷を作るときは大変だね」
「そこだけは誰か他の妖怪に頼みたいですね」
「あと、キャラクターもな」
 ルークの辛辣な言葉に山彦は笑いながら頭を掻いた。
「あっ、そうだ。二人で言い方が違うけど魔物と妖怪って何が違うの?」
「あぁ、別に変わらない。方言みたいなものだ。好きな方で呼べばいい」
 じゃあ、使い分けようかな。
 人波を進む。山彦の魔法がそんな気持ちにしてくれた。
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