小虎の初恋

珠雪

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虎の子

虎の子との出会い②(師匠視点)

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元晴が寅次郎のいる村へとやってきたのは春の晴れた日。

冬が明けて春になったとはいえ朝はまだまだ肌寒い気温が続いていた。

宿街から別荘までの距離を考えると朝早くから宿を出なければならない。

肌を刺すような寒さに気が落ちる。
これからの生活に対する不安や心細さから幸先の悪い予感がしたが、かぶりを振るってひたすら目的の村を目指した。

_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_

そうしてやっと日差しが暖かくなり始めた頃、小さな家の集落が目に入る。

少し休憩してから村へと入ろう。
そう決意して道端へと寄り、荷をおろして腰をおろす。

しばらくぼぉっと休んでいると目の前をさっと何かが通り過ぎた。

あまりの一瞬の出来事に気のせいかと思い目を凝らすともう一度、今度は反対側から小さな童が通り過ぎた。

走り去りながならも興味心身にこちらを見るまぁるい目と目が合うとその目は驚いたように限界まで見開かれた。

村の子供か。きっと元晴のことが気になっているのだろう。
通り過ぎたあともこっそりと伺うようにちらりちらりと振り返る。

あぁそうか。
元晴は今、士族としての格好をしていた。
士族と農民では身分が違う。
恐らくそれをわかって話しかけてこないのだろう。

でも好奇心には勝てなかったらしい。
走って通り過ぎながらこちらを見ればバレていないとでも思っているのだろうか。

それでも往復すればバレるに決まっている。


元晴は、その行動の可愛らしさについぞ吹き出してしまった。
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