小虎の初恋

虎の子

虎の子との出会い①（師匠視点）

男の名前は元晴

元々士族の生まれであったが、生まれつき体が弱かった。元晴の母も体が弱く元晴を生んで数年たたずして亡くなってしまった。

しばらくして父の後妻がやってきた。
父は母を愛していたが、跡継ぎに対する不安が家の内外から出ており、後妻の話をはねのけることができなかったと基晴に向かって申し訳無さそうに話していたのを覚えている。
いずれ後妻の子があとを継ぐのだろう。
幼いながらにも自分に後は継げないということを理解していた。
運良く病床から回復し、動き回ることのできるようになったが、十五を越えた頃にとうとう子ができぬ体質と医師に診断されてしまう。

薄々そうであろうなと感じていたのでショックではなかったが、彼の回りそうではなく彼以上にその絶望は深かった。

父はまだ自分を後継にするつもりであったのかと驚く。また、元晴の母を慕ってくれていた家中の人間たちも基晴のことを諦めていなかったらしい。
家はしばらく暗い雰囲気で慎まれていた。

自分に期待を寄せてくれていた周囲からのしかかる哀れみは元晴にとっては的外れで必要のない感情。
元晴はそれらからから逃げ出したかった。

そんな折、父の後妻の長子の結婚が決まることとなった。

いずれ、出ていかなくてはならない。

父やその周りの側近たちには反対されたが、押し切り、父は餞別として母方の祖父宅近くの元お偉いさんの別荘だった家を買い取って呉れたので其処に住むことにした。

そうして元晴は寅次郎のいる村へとこすことになったのである