8 / 34
8
しおりを挟む
そりゃそうだ。
いきなり好きだと言ったとしても、長谷川に好きになって貰える要素など俺には皆無だ。
男であることもだが、人に勉強を教わる身で、順位があがったらだなんて甘い考えすぎる。
自分の手で、自分を変えて好きになってもらわないと意味がない。
「そうか……じゃあもういいや。…………勉強教えなくていい」
好きだと告げた覚悟を自分の手で見せないと、意味がない。
だから、これ以上彼から教えてもらうことはしちゃダメだ。
そう話すと、長谷川は目を驚いたように見開いて俺を怒りに満ちた表情で見返した。
「まったく。何を言ってるんですか。もう少し頑張れば、最初に約束したように、TOP10も狙えるんですよ。ここで諦めるんですか」
訳が分からないといった表情に、俺は逆に眉を寄せた。
諦めるつもりはないが、振られた相手に、勉強を教えてもらうなんて面の厚いことはできない。
それに、二人きりで一緒にいたら、俺だって男である。手を出さないなんて保証はできない。
「…………今、俺、オマエに告白して振られたんだぞ。逆に何でそんな平然としてるんだよ……」
怒りを露わにしている長谷川には、俺の感情的な話はきっとわからないだろう。
「そんな冗談みたいなこと、…………僕は気にしませんよ」
吐き捨てるように告げた長谷川の言葉に、俺は頭の中の線が一本ブチ切れたような気がする。
確かに男同士なんて、ありえないかもしれない。
いや、ありえないことだ。
だけど、冗談になんかさせたくなかった。
冗談でそんなことを言っているわけじゃない。
「……冗談じゃねえ……冗談じゃねえよ。俺はオマエが好きだ。…………簡単に、冗談とか言うな」
ぐっと握り締めたこぶしがわなわなと震えてしまう。
俺の様子に、ハッとしたような表情を浮かべて長谷川は、必死な表情で俺を諭すように肩を掴んだ。
「先輩。冷静になってください…………気の迷いですよ。僕は男で、先輩も男です。生物学上何も生み出せません。寂しい気持ちが勘違いを起こしてるだけです。きっと、綺麗な彼女みつかりますよ」
生物学上、そりゃ、間違えている。
何も生み出さないことなんて分かっている。だけど、そんなんじゃない。
他人の感情まで、理屈化して語られるのは、本当に腹がたつ。
そして、もっと腹がたつのは、何ももっていない癖に、自分を好きになって欲しいと願う自分自身だ。
「もういい………帰れ」
搾り出すような声で告げると、長谷川の掌が宥めるように俺の頭に置かれようとした。
思わずガンと大きな音をたてて、机の上に拳を振り下ろした。
「触るな……勘違いするだろ………優しくすんなよ、ははっ」
じんとする拳をぎゅっともう片方の掌でつつみこんで首を振って見返すと、長谷川はショックを受けた表情をして俺を見返した。
「わかりました。今日は帰ります。」
告げられた言葉を聞いて、俺はその背中を見送った。
いきなり好きだと言ったとしても、長谷川に好きになって貰える要素など俺には皆無だ。
男であることもだが、人に勉強を教わる身で、順位があがったらだなんて甘い考えすぎる。
自分の手で、自分を変えて好きになってもらわないと意味がない。
「そうか……じゃあもういいや。…………勉強教えなくていい」
好きだと告げた覚悟を自分の手で見せないと、意味がない。
だから、これ以上彼から教えてもらうことはしちゃダメだ。
そう話すと、長谷川は目を驚いたように見開いて俺を怒りに満ちた表情で見返した。
「まったく。何を言ってるんですか。もう少し頑張れば、最初に約束したように、TOP10も狙えるんですよ。ここで諦めるんですか」
訳が分からないといった表情に、俺は逆に眉を寄せた。
諦めるつもりはないが、振られた相手に、勉強を教えてもらうなんて面の厚いことはできない。
それに、二人きりで一緒にいたら、俺だって男である。手を出さないなんて保証はできない。
「…………今、俺、オマエに告白して振られたんだぞ。逆に何でそんな平然としてるんだよ……」
怒りを露わにしている長谷川には、俺の感情的な話はきっとわからないだろう。
「そんな冗談みたいなこと、…………僕は気にしませんよ」
吐き捨てるように告げた長谷川の言葉に、俺は頭の中の線が一本ブチ切れたような気がする。
確かに男同士なんて、ありえないかもしれない。
いや、ありえないことだ。
だけど、冗談になんかさせたくなかった。
冗談でそんなことを言っているわけじゃない。
「……冗談じゃねえ……冗談じゃねえよ。俺はオマエが好きだ。…………簡単に、冗談とか言うな」
ぐっと握り締めたこぶしがわなわなと震えてしまう。
俺の様子に、ハッとしたような表情を浮かべて長谷川は、必死な表情で俺を諭すように肩を掴んだ。
「先輩。冷静になってください…………気の迷いですよ。僕は男で、先輩も男です。生物学上何も生み出せません。寂しい気持ちが勘違いを起こしてるだけです。きっと、綺麗な彼女みつかりますよ」
生物学上、そりゃ、間違えている。
何も生み出さないことなんて分かっている。だけど、そんなんじゃない。
他人の感情まで、理屈化して語られるのは、本当に腹がたつ。
そして、もっと腹がたつのは、何ももっていない癖に、自分を好きになって欲しいと願う自分自身だ。
「もういい………帰れ」
搾り出すような声で告げると、長谷川の掌が宥めるように俺の頭に置かれようとした。
思わずガンと大きな音をたてて、机の上に拳を振り下ろした。
「触るな……勘違いするだろ………優しくすんなよ、ははっ」
じんとする拳をぎゅっともう片方の掌でつつみこんで首を振って見返すと、長谷川はショックを受けた表情をして俺を見返した。
「わかりました。今日は帰ります。」
告げられた言葉を聞いて、俺はその背中を見送った。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる