花に嵐

怜悧(サトシ)

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高校に入ってからというもの俺には何一つ得られるものはなく、本当に毎日がつまらなかった。
この学校に来たのは、俺の中学では俺だけで、中学時代のように、バカを言って楽しむようなダチもまったくいねえ。
県内3本の指に入る進学校ってだけで、周りの期待が高く必死でこたえようと勉強しているような奴等ばかりだ。
県内トップの男子高だし、もちろんオンナもいない。
多少ランクを下げても、自分と合う様なやつらのいる高校に入ればよかったと後悔しても先にたたず、である。

毎日窓の外を眺めてぼんやりとしてしまう。
髪を金色にすれば周りの奴らも諦めてくれんじゃないかと思い、一年の夏に金髪にして、格好もだらしなくしてみた。

いわゆる高校デビューってヤツだ。

中学時代もそれなりに目立つ方だったから、すぐに目だって他校生と喧嘩になったが、合気道で鍛えていたのが役に立った。
同級生達も俺を遠巻きにみるようになり、先生からも注意も受けず、気がついたら周りには誰もいなくなっていた。

なのに今年に入ってから、やけに絡んでくる風紀の1年がいる。
今年の首席で入ったという、優等生である。
俺の風貌は校内でもひときわ目立つし、他のヤツらはビビッて目すら合わせない。

「瀬嵐先輩。いつになったら、その毛、染め直してくれるんですか?それに、ピアスもカラーコンタクトも校則違反です」

静かな物言いで、まったく恐れもなく俺を前にして言葉を放つ男に、俺は校門近くで歩みを止められている。
男の名前は、長谷川西覇(はせがわ せいは)。
俺のこの格好にすら、まったくといっていいほど臆した様子はない。この高校の奴は大体こういうのに免疫がないので、近寄ることすらしない。
おくさないどころか、奴は深々と息をついて面倒そうな表情すらみせてくる。
「あ"ァ!…………何か文句あんのかテメエ」
「ええ。…………校則に反してますから、注意を言ってます。それが、風紀委員の僕の仕事なんで」
眼鏡の奥の目は俺がつっかかっても、まったくといっていいほど恐怖感すらみせない。
相当の鈍感か、または、はてしなく天然なのか何かだろう。
綺麗に整ったストレート黒髪は、ピカピカと光っている。
成績優秀でなんの不自由もなく優等生しているお前にはわからねえよ。
もう、俺には関わらねえ方がいいと、少しヤキでもいれてわからせねえとならねえかな。
弱いものイジメは俺は嫌いだが、俺自身の平穏のためなら仕方がない。

ぐっと相手の胸倉を引き寄せると、掴みあげて吊るし脅しを入れようと顔を近づけた。

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