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Misson 2 未開惑星の罠

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『キャプテン!!標的が前方座標x34 y7地点の惑
星に着陸体勢に入っている模様』

伝声管から裏声の宙航士の声が聞こえてくる。
彼女は体は男、心は女性という性同一性障害を背負っていて、見た目だけは女性を目指しているからか、かなり美人だが、声はどうにもならないらしい。

「前方の惑星って、未踏地だろっ?」
「リョク、惑星をスキャンしてくれ。それと小型艇を
発進可能に設定してくれ」
伝声管をつかんで指示をするエドに、カートは困惑をを隠しきれずに眉を寄せた。
未踏地と呼ぶ未開惑星に踏み入れることは、
かなりの危険がある。
大気にしても、土地にしても生物にしても全てが未知数で、人体に計り知れない影響がある可能性も高い。
そんなことは、宇宙を飛ぶ誰もが承知のことで、よほど差し迫った事態であっても躊躇することである。
カートは不審がるような表情をうかべて仮眠台を下りて、エドの側へと近寄った。
「 エド、アンタ、ホントにおかしいよ?」
エドは、カートのほうを振り返ると、珍しくも真剣
な表情を浮かべた。
「確かに、俺は今回の標的には固執してるかも知れないね」
「一人で行く気か?小型艇でなくこの船ごと下ろせばいいだろ」
自分たちを連れていく様子を見せないエドに、噛り
つくようにカートは喚いた。
「下は未踏地で危険だ。全滅ってこともありえるし
そんなことはさせたくないよ」
誰もが分かっていることだ。未踏地の危険はどんな子供でも理解している。
だからこそ、明らかにおかしいエドを1人でなど行かせられないだろ。

「じゃあ、俺も行く。今日のあんたをほっとけねぇよ」
「足手まといなんだけどなあ」
来るなと手で追い払う仕種をするエドに、それでもカートは引き下がるつもりは無いのか腕をぐいと掴んだ。
「それでも行く」
なんだか酷く嫌な予感がする。
それだけだが、俺の勘はよく当たる。
「勝手にすればいい。決めるのはオマエだからな」
邪魔臭そうにカートの腕を振り払うと、エドは伊達のメガネを外した。
「あたしも行くっ。エド様」
必死にエドの前でチェリーは主張したが、エドは首
を横に振った。
「チェリーは待っててくれ。女の子には適した土地じゃ、なさそうだから」
優しい口調で告げると、やれやれと溜息を漏らした。
『エド、スキャン処理終了したわ。惑星は形成初期後
半の可住惑星と判明。酸素量窒素料ともに呼吸環境と
して問題なし。重力は基準値の七割。降りるには問題ないわ』
リョクの声が伝声管から響き、エドは手に持っていた眼鏡を白衣の胸ポケットにしまいこんだ。
「小型艇は?」
『システム起動正常だったけど、ボディに焼損が見られたので、ドクターに指示したわ』
淡々とした調子でリョクは答え、エドは表情を硬く
した。
すぐに出られる状態ではなかったからである。
メカニックのドクター·デルファは腕もいいし、スピードもあるが、それにも限界がある

「デルファは、何分かかるって?」
『十五分くらい待てって』
「分かった。カート、倉庫からボディスーツを持ってきてくれ」
「は?ボディスーツ?可住惑星だろ?」
人が住める場所にボディスーツなど必要ないだろうと驚いて、カートはエドに問い返した。
未踏地と言うことで少し緊張していたカートであっ
たが、可住惑星と聞いてすっかり安堵していたのである。

「人が実際住んでるわけじゃない。空気汚染されてる可能性もあるし、未開惑星ってのは何があるかわからねえだろ。生身で降りる場所じゃないの」
エドは呆れたように説明すると、これ見よがしに小
さく溜め息を吐いた。
「全身?」
強化ゴムでできている密度の高いそのスーツは、と
ても重い。
ボディだけでも七、八キロだから、全身となると考えるだけで気も重くなる。
カートが思わずげんなりとして問い返すと、
「もちろんだ。だが重力は7割しかない。15キロが10キロに減る。あと非常食も小型艇に積んでおいて」
人の悪い微笑みを浮かべたエドは、言い足した。
「人使いあらいよ」
ブツブツと口の中で文句を噛み砕きながら、カート
はさっさと部屋を駆け出した。

「なんだかんだ文句垂れてても、動くのは早いわよね」
そんな彼の出ていったドアを眺めて感心したよう
にチェリーは呟く。
「あいつも、ホントに奴隷根性抜けてないよね」
エドはおもしろそうにそういって、クスクスと笑いながらゆっくりと部屋を出ていった。


ずるずるとボディスーツ2着と、非常食を引き摺り
ながら、カートが小型艇の格納庫に入る。
ばさばさに汚れた金色の頭を振り乱して、機体の底面ににへばりついている青年がいた。

その鳥の巣のような頭には、文字通り可愛いヒヨコ
が乗っかっている。
どっから見ても怪しすぎる男である。
「あ、ドクター。整備は終わったの?」
カートは、その不審人物のほうにずるずると荷物を引きずって歩み寄ると声をかけた。
振り返った青年はは、大きな黄色い防塵用のグラスコープをしていて、どんな顔をしているのかも、表情も掴めない。 

「いや。大気圏抵抗に対する耐性に不備がある」
そっけない抑揚のない声が返ってくるが、カートは
気に止めた様子もなく続けた。
「そっか。難しいことわかんねぇけど、要するにどう
いうことなのさ」
荷物をコックピットの中に詰め込もうと、搭乗台を
よじ上りながら説明を求めると、ドクターは作業を再
開しながら眉を寄せた
「それ以上簡略には、説明不可能だ」
「……まだ、こわれてて、直し終わってないってことだよな。つまり」
荷をすべてコクピットへと詰め込んで、ひょいっと機体から飛び降りると、ドクターのほうへ近寄る。
そして、その作業を興味津々で覗き込むと、ドクターは不快そうにその鼻づらを手で払った。

「邪魔だ。どけ」
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