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無味乾燥。
トレーに無造作に置かれて運ばれてきた食事はらパサパサとする干からびたパンと味の薄い具がほとんど入っていないスープを啜って、鹿狩は眉を寄せた。
家ではお抱えのシェフがいたし、外でもこんな料理には出くわしたことがない。
犯罪者には、こんな扱いなのだなと納得しながら腹におさめる。
すべて食べ終えると、両手を合わせてごちそうさまと呟く。
「ぶはっ、スベク。ホントに礼儀正しいよな」
「あれ?ごちそうさまの挨拶とかしないのか」
首を捻って、トレーを扉の前に戻しながら問い返す。
「しねーよ。つか、アンタにはホントに今のままでいて欲しいんだけどな」
残念そうに言うザナークに、鹿狩は床に腰を降ろすとおもむろに腕立て伏せを始める。
「な、何してるんだ?」
「いや、食後の運動だが。身体が鈍るといけない」
「そんなに鍛えてどうするんだよ」
さらに嫁の貰い手なくなるぞと告げると、それは困るなと言いながらも腕立て伏せをやめない。
「まあ、アンタの身体はホントに引き締まっていて綺麗だとは、俺は思うけど」
「ありがとう。それにしても、暇だな。何か本でもないだろうか」
「看守に言えば、データベースくらいは貸して貰えるかもだけど.....、取引きをもちかけられるかもしれない」
「取り引き?」
背筋をはじめながら、問い返すと座なは視線をさまよわせて、
「看守は、俺たちを人間とは思ってないからな。何かをしてやろうとか考えてない。なにか欲しい時は、身体で取り引きをしないと」
ザナークの言葉に、ひまを潰すねも大変なんだなと鼻先をかいて殺風景な部屋と、何も私物のない様子に納得したように頷いた。
「うまくやってる奴はいるけど、俺は媚びるのは得意じゃない」
だから5年以上もここにいるんだけどと呟き、そろそろ安値で買い叩かれちまうかなとぼやく。
「なあオークションは、何処で行われてる?」
興味深そうに尋ねる鹿狩に、少し考え込みザナークは答えた。
「足がつかないように、仮想空間とかじゃないか」
「なるほどな。こっちからハッキングでもすれば、改竄も出来るな」
「何を考えてる?」
大体ハッキングをするための道具も何も無い。
服すら与えられず素裸の自分たちに、為す術もない。
「いや、この身体をすらりとした美少年に見えるようにデータを書き換えれば、俺でも売れるかなってな」
「ははっ、何アホなこと真面目に考えてんだよ」
「まあ、仮想空間にアクセスしているアドレスを搾取すれば、色々出てくるんだな」
アホと言われたが、気にした様子もなく腹筋を始めながら、ひとりごちで呟く。
「詐欺じゃないか」
「ははっ、そうだな。詐欺でもしなきゃ、外には出られないだろうな。.....取り引きか」
腹筋運動を繰り返しつつ、鹿狩は繰り返し呟いていた。
「毎日が暇で仕方がない。本を読みたいのだが端末を貸与できないか」
何日かして鹿狩は、鉄の扉越しに看守に訴えると看守は扉についた窓を開き、鹿狩を見返すと眉をあげて不思議そうな表情で鹿狩を見る。
「本?オマエは字が読めるのか」
この施設にくるような輩たちは、親に捨てられて薬の支給もままならない者達が多く、文盲なのが殆どである。
金がある者であれば、抑制剤で事件をおこすことはないし、あったとしても大抵は施設に送られずに自宅謹慎で済む。
ここに収容されるような暮らして行く術もなく、日々の暮らしも保障がなく身売りしていた者達には、本を読もうという者は皆無だった。
看守の問いかけに、少しだけ鹿狩は考え込んだがザナークからの話と状況に思い至った様子で、
「簡単なものなら、読めますよ。不眠でどうしても気を紛らわすものが必要なんだ」
誤魔化すように告げると、看守は面倒そうに鹿狩を見返す。
「貸せないこともないが、オマエだけ特別というわけにもいかないのでな。.....少しでかいが、まあ、見目はいいよな」
じっと舐めるような視線を向けて、ガチと扉を開くと慣れた手つきで鹿狩の腕に手錠をかけて、首につけている鎖を引く。
「要望を叶えたいのであれば、まずは善行を積まなければならない」
冷たい廊下を歩きながら、看守はものものしい口調で告げた。
「善行?」
「働かざるものには、何も与えられないってことだ」
鹿狩が房から出されたのは初めてだったが、無機質な壁と白い廊下がずっと続いている。メディカルルームと銘打たれた部屋に入れられると、消毒液くさい香りが鼻を刺激した。
そこには白衣の医師が座っていて、機材が沢山置いてある。
「59番だ。促進剤と導入剤を頼む」
「初回だから、気をつけてくれ。異常が出たら、すぐに行為をやめてこちらに連れてくるように」
医師は鹿狩の腕をとると、静脈を確認して薬剤を突き刺して注入する。
「っ、なに、を?!」
説明もされずに打たれた薬に、鹿狩は目を見張り看守を見返す。
「ここでは寄付をおこなってくれる後見人たちに、サービスを提供しているのだ。発情状態の方が抵抗なくサービスをできるだろう」
まずいと思った時には、すでに手遅れでぐらりと身体が傾く。
合法でも、本人達の意思も関係ないのだ。
薬が身体中にめぐるのか動悸は激しくなっていき、呼吸の感覚も狭まっていく。
「まあ、すぐに気持ちが良くなるさ。オメガは、好きモノだからな、みな、取り引きなど無くてもこれをしたくなって目的がかわるようなヤツらばかりだ」
体勢を崩した鹿狩を、看守は支えてストレッチャーへと乗せた。
トレーに無造作に置かれて運ばれてきた食事はらパサパサとする干からびたパンと味の薄い具がほとんど入っていないスープを啜って、鹿狩は眉を寄せた。
家ではお抱えのシェフがいたし、外でもこんな料理には出くわしたことがない。
犯罪者には、こんな扱いなのだなと納得しながら腹におさめる。
すべて食べ終えると、両手を合わせてごちそうさまと呟く。
「ぶはっ、スベク。ホントに礼儀正しいよな」
「あれ?ごちそうさまの挨拶とかしないのか」
首を捻って、トレーを扉の前に戻しながら問い返す。
「しねーよ。つか、アンタにはホントに今のままでいて欲しいんだけどな」
残念そうに言うザナークに、鹿狩は床に腰を降ろすとおもむろに腕立て伏せを始める。
「な、何してるんだ?」
「いや、食後の運動だが。身体が鈍るといけない」
「そんなに鍛えてどうするんだよ」
さらに嫁の貰い手なくなるぞと告げると、それは困るなと言いながらも腕立て伏せをやめない。
「まあ、アンタの身体はホントに引き締まっていて綺麗だとは、俺は思うけど」
「ありがとう。それにしても、暇だな。何か本でもないだろうか」
「看守に言えば、データベースくらいは貸して貰えるかもだけど.....、取引きをもちかけられるかもしれない」
「取り引き?」
背筋をはじめながら、問い返すと座なは視線をさまよわせて、
「看守は、俺たちを人間とは思ってないからな。何かをしてやろうとか考えてない。なにか欲しい時は、身体で取り引きをしないと」
ザナークの言葉に、ひまを潰すねも大変なんだなと鼻先をかいて殺風景な部屋と、何も私物のない様子に納得したように頷いた。
「うまくやってる奴はいるけど、俺は媚びるのは得意じゃない」
だから5年以上もここにいるんだけどと呟き、そろそろ安値で買い叩かれちまうかなとぼやく。
「なあオークションは、何処で行われてる?」
興味深そうに尋ねる鹿狩に、少し考え込みザナークは答えた。
「足がつかないように、仮想空間とかじゃないか」
「なるほどな。こっちからハッキングでもすれば、改竄も出来るな」
「何を考えてる?」
大体ハッキングをするための道具も何も無い。
服すら与えられず素裸の自分たちに、為す術もない。
「いや、この身体をすらりとした美少年に見えるようにデータを書き換えれば、俺でも売れるかなってな」
「ははっ、何アホなこと真面目に考えてんだよ」
「まあ、仮想空間にアクセスしているアドレスを搾取すれば、色々出てくるんだな」
アホと言われたが、気にした様子もなく腹筋を始めながら、ひとりごちで呟く。
「詐欺じゃないか」
「ははっ、そうだな。詐欺でもしなきゃ、外には出られないだろうな。.....取り引きか」
腹筋運動を繰り返しつつ、鹿狩は繰り返し呟いていた。
「毎日が暇で仕方がない。本を読みたいのだが端末を貸与できないか」
何日かして鹿狩は、鉄の扉越しに看守に訴えると看守は扉についた窓を開き、鹿狩を見返すと眉をあげて不思議そうな表情で鹿狩を見る。
「本?オマエは字が読めるのか」
この施設にくるような輩たちは、親に捨てられて薬の支給もままならない者達が多く、文盲なのが殆どである。
金がある者であれば、抑制剤で事件をおこすことはないし、あったとしても大抵は施設に送られずに自宅謹慎で済む。
ここに収容されるような暮らして行く術もなく、日々の暮らしも保障がなく身売りしていた者達には、本を読もうという者は皆無だった。
看守の問いかけに、少しだけ鹿狩は考え込んだがザナークからの話と状況に思い至った様子で、
「簡単なものなら、読めますよ。不眠でどうしても気を紛らわすものが必要なんだ」
誤魔化すように告げると、看守は面倒そうに鹿狩を見返す。
「貸せないこともないが、オマエだけ特別というわけにもいかないのでな。.....少しでかいが、まあ、見目はいいよな」
じっと舐めるような視線を向けて、ガチと扉を開くと慣れた手つきで鹿狩の腕に手錠をかけて、首につけている鎖を引く。
「要望を叶えたいのであれば、まずは善行を積まなければならない」
冷たい廊下を歩きながら、看守はものものしい口調で告げた。
「善行?」
「働かざるものには、何も与えられないってことだ」
鹿狩が房から出されたのは初めてだったが、無機質な壁と白い廊下がずっと続いている。メディカルルームと銘打たれた部屋に入れられると、消毒液くさい香りが鼻を刺激した。
そこには白衣の医師が座っていて、機材が沢山置いてある。
「59番だ。促進剤と導入剤を頼む」
「初回だから、気をつけてくれ。異常が出たら、すぐに行為をやめてこちらに連れてくるように」
医師は鹿狩の腕をとると、静脈を確認して薬剤を突き刺して注入する。
「っ、なに、を?!」
説明もされずに打たれた薬に、鹿狩は目を見張り看守を見返す。
「ここでは寄付をおこなってくれる後見人たちに、サービスを提供しているのだ。発情状態の方が抵抗なくサービスをできるだろう」
まずいと思った時には、すでに手遅れでぐらりと身体が傾く。
合法でも、本人達の意思も関係ないのだ。
薬が身体中にめぐるのか動悸は激しくなっていき、呼吸の感覚も狭まっていく。
「まあ、すぐに気持ちが良くなるさ。オメガは、好きモノだからな、みな、取り引きなど無くてもこれをしたくなって目的がかわるようなヤツらばかりだ」
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