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しおりを挟むコンビニから帰ると、何故か閉めた筈の部屋の鍵は開いていて、嫌な予感がして寝室に入ると、ベッドには士龍の姿がなかった。
部屋に散らばった服と、開けっ放しのクローゼットは物色されたあとが残っている。
……どこ、いった?
そんな時間は経ってないし、熱もあって怪我も酷い状態だ。そんな遠くにはいけないはずだ。
着替えを一人でするにも、時間がかかっただろうし。
あの熱で外にでるとか、バカか。いきなりぶっ倒れたりしたらどうすんだよ。
すぐに追いかければ、間に合う。
オレはゼリーが入った袋を投げ捨てて、そのまま部屋を出て非常階段を駆け足降りる。
一体あの体でどこへいくつもりだ。
階段を駆け下りると目の前を通る県道をみるが、それらしい人影はみあたらない。
目を離したのは、コンビニの行き帰りで、ほんの十五分程度だ。
バイクならどっかで見つけられる。
焦ってオレは駐輪場へ駆け出し、自分のバイクに乗ろうとして、派手に何かにぶつかる。
っ、なんだ?……ひと?
オレのバイクの脇に蹲るようにして、松葉杖を抱えたまま震えているのは士龍だった。
ホッとした反面怒りが湧きおこる。
「士龍!……こんなとこで、な、なにして、んだよ!バカ野郎!」
思わず襟首をつかんで見つかったという安心感で、一気に怒りもやってきたのか、怒鳴りつけてしまう。
士龍は、重そうに瞼を開きオレを見ると、しばらく表情を固めた後に、へらりといつものような余裕そうな笑いを貼り付ける。
「たけお……みつかっちゃった……な、ん、なんだろ?…………かくれんぼ、かな」
この時ほど、オレは士龍をこころから殴りたいと思ったことはなかった。
熱がない状態なら殴っていた。
「バカ言ってンじゃねェよ、オマエ、ふざけんな!?」
オレの剣幕をぼんやりとした目を向けたまま士龍は見返してから、無理に作ったようなへらへら笑いを浮かべた。
「ほんとはさ、……たけおのバイクぬすんで、いえにかえろうかなって。……でも、のれねえの、くらくら、ふらふらしちってさ」
「そりゃ熱あんだし、怪我してんだぞ。乗れても事故るぞ。死ぬ気かよ、バカしてんなよ」
ぐったりとしている体を抱え直して、オレは士龍の言葉に深くためいきを吐き出す。
かえりたい、とか。熱出てるのは分かるけど、そんなにオレの部屋にいるのは嫌なんだろうか。
「なんだよ。……そんなにオレと一緒にいたくねえかよ。そりゃ、無様にまた捕まって、何度もアンタに助けられて不甲斐ねえことばっかだし。オレは、アンタに何もしてやれてねえけど……」
思わず後ろ向きな言葉を吐いてしまい、オレは自分が情けなくなって泣きそうになる。
そんなに、オレと一緒にいたくないのか。
士龍は眉をあげて、首を横に振ってオレの頬を撫でる。
「ちが、う。そんな、顔すんな。いっしょに、いたい。けど、たけおが、やさしいからさ、なんか、おれ、だめなんだよ…………」
士龍の言葉の意味が分からず、オレは抱きしめ直して冷静さを取り戻し、何がダメなのだと聞き返した。
とりあえず、昼日中で駐輪場で抱き合った体勢のまま言い合うオレらは近所からどう思われるかわからない。
オレは士龍の松葉杖を拾い、重たいぐったりした体を抱えてエレベーターへ向かう。
士龍が何がダメだというのか、いまいち理解はできない。
だけど熱を出して震えながら、それほどまでにダメなんだと言われたら、ちゃんと話をしなきゃと思う。
エレベーターに乗ると、熱っぽい吐息を漏らし、士龍は抵抗もせずにオレに連れられてきている。
身体を素直に預けながら熱っぽい表情で、掠れた声を出す
「おれ、もっと…………へいきにしてられるって、じぶんではおもってたんだ」
辛そうな顔で、身震いを何度もしている。
玄関に入ったあたりで、オレの肩に頭を乗せて、熱で潤んだ視線を士龍は向けてきた。
下半身直撃の表情から視線をそらして、虚無の意識をもとうと、頭の中で九九の掛け算をとなえる。
病人相手に盛ってどうする。
士龍の体を抱きながら、ゆっくり歩いて寝室に入るとベッドにおろして汗ばんだ服をぬがそうと手にかける。
「…………だって、たけおのまえで、おれ、ほかのやつのちんこほしがったんだ…………ほしいって、いって」
うわ言のようにオレに語る様子は、いつになくテンパッているように見える。
何をしても、何をされても余裕そうな顔つきでいた士龍が、泣き出しそうな顔で、オレに必死に訴えている。
「オレは見てない」
「…………きいて、ただろ」
見るなと言われたから、目は塞いだ。身体を拘束されたままで耳は塞げないから聞こえてはいた。
「聞こえていたけど、そもそもオレのせいだろう」
「…………だから、とにかく、やさしくは、されたくねえんだよ」
必死で言い募る士龍の気持ちが分からない。
汗をタオルで拭いながら、じっとその傷ついた体を眺める。
悔しくて仕方がなかったし、何も出来ない自分が情けなくて仕方がなかった。
そんなオレを助けようと、体を張った士龍を詰ったりとか責めたりできるわけがない。
「士龍、わかんねえよ。なんだよ、オレ以外の奴にちんこはめさせやがったド淫乱ってさ、…………いたぶられたいの?」
耳元で囁いて腹筋から手を這わせ、胸元に指先をそえてやるとびくりと痙攣する。
「ちが、くて。そうじゃねえよ。も、オマエはもうだいてはくれねーかなとか、思ったらくるしくて、わけわかんなくなった」
士龍が首を振るが、興奮して勃起してることがスエットからもわかるくらいだ。
そういえば、買い物に行く前に抱いてくれって言ってたな。
オレが、もう士龍に手を出さないとか考えて、不安だったのかもしれない。
そんなことありえないのに。
手に触れる汗ばんだ肌をそっと撫でる。でも、ありえないなんてことは、ちゃんと示さないとわからねえよな。
「あんま、病人とかけが人に無理はさせたくねえんだけど」
心に負った傷口くらいは、先に治してやんねぇといけないな。
士龍の顎を掴むと、ゆっくり唇を落として軽く噛んで吸い上げる。
オレはスエットを引き下げて、士龍の勃起したペニスの先端をくりくりと指先で摘まんで捏ねる。
「じゃあ、はやめに、オレの形に矯正しなくちゃな」
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