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しおりを挟む「なあ……どうなの?なあ、富田。自分の前でメスを寝取られてる気分って、キャハ」
峰さんの、僅かだか少しテンションの低い声がオレへとかけられた。
これは、カラダだけだと士龍は言った。
全く何の意味がないとも。
オレにあの時に言ったように、あの人にとってカラダは脅迫になんかならない。それは本当だろう。
「あ、あ、それじゃ、しゃべれねーよな」
忘れてたと言って、峰さんはオレの口にかけた轡を外してズルッと電球を引き抜く。
オレは逆流する唾液に噎せて、カハッと吐き出しながら峰さんを睨みあげた。
酷い顔だ。
峰さんの顔は、酷く歪んで見える。小倉さんの命令通り動いているのに、このことをよしとはしていない。
ああ、そうか。
この人は、きっと小倉さんを……。
「…………峰さんこそ、どうなんすか?」
「俺?きゃはは…………言ってる意味がわかんねえな、富田、質問には質問で返すんじゃねえよ」
クックと楽しそうに笑いながら、士龍の方をちらりと見やり糸目を更に細くして嘲るような口調で呟く。
「とんだビッチだよな士龍ちゃんは。ハルカのちんこを欲しがって腰擦りつけてやがる。東の眠れる獅子ってのは、実のところは寝れるシリじゃねえかな」
峰さんはわざとらしく士龍を愚弄して、オレの怒りを焚きつけようとしている。
オレが木崎のような士龍の信者だったら、この場で怒りをぶちまけるだろうが、そういうのでもない。
「決まってンじゃねぇすか。アンタも小倉さんも…………ぶち殺したいです……よ。できるなら……。士龍のことは、オレが仕込んだんです。そういう体にしたのはオレですから、仕方ないでしょう」
悔しい。奪われたことは悔しくて仕方がないが、ここでブチ切れても何もできやしない。
なら、少しでもマウントをとってやりたい。
士龍をあんな風に男を受け入れられる体にしたのはオレだ。
「キャハハ。そうなんだ。オマエがねえ……。どんな手使ったかしらねえけど、完全にメスの顔してやがるなあ」
ただ、今は耐えるしかない。
そこまでして、士龍はオレを助けにきたのだ。
オレなんか、半殺しにあったってどうとでもなるのに。
無視して欲しかった。
他の奴に奪われるっていうなら、助けになんてこないで欲しかった
「をい、富田。士龍のヤツ伸びてるから、オマエがどうにかしとけ。俺らは引き上げる。まあ、動画も画像もコッチにはあるからな。逆らおうなんて考えるなと士龍に言っておけよ」
オレを縛っている拘束を外して、小倉さんはオレの腹を蹴り飛ばして倉庫を出て行った。
小倉さんは必死に士龍に自分のモノになれと言っていたが、士龍は断っていたようで、最終的には自分の手下に輪姦させていた。
その様子を撮影した動画と画像で士龍を揺する気のようだ。
少し前のオレと一緒だ。
士龍は、今度も脅迫なんかどうでもいいというのだろうか。
「士龍ちゃんには、呼んだら俺らのとこに来るように伝えとけよ」
峰さんは、呻くオレを見下ろしてどこかイラついてる様子で仲間を引き連れて出て行った。
身体を起こして立ち上がると、腕を縛られたまま精液まみれで放置されたまま、士龍はマットの上で転がっているのが見えた。
涙がだらだらと溢れて止まらない。
こんなこと、してくれなんて思ってない。こんなことされるなら、オレの身体がバラバラになって砕けてしまった方が千倍マシだ。
ズリズリと打ち身で重たい身体を起こして、漸くマットの方へと近寄る。
生臭い匂いと、僅かに血の匂いがする。
小倉さんに顔を殴られたからか、白くて綺麗な顔が青紫に腫れて
いる。
「し、士龍…………ッ」
白目を剥いていて、意識はまったくなくて、紅潮した肌が痙攣を繰り返している。
開いたままになっていてだらしなく晒された脚の付け根からは、こぷこぷと白い液体が溢れていて、無理に突っ込まれたのかアナルも傷ついているかのように血が混じっている。
どうにもできなかった悔しさで、頭が真っ白になる。
涙が溢れて止まらない。
風邪ひかせたらまずいし、早く拭わなくてはと思うのに脱力して身動きができない。
喪失感が半端なくて、たまらなくなる。
「士龍、ッ……ッ士龍…………ッ」
どうにか抱き起こそうと腕を伸ばした瞬間、士龍の緑色の瞳に光が戻り、ぼんやりとしていた焦点がゆっくりオレへと結ばれた。
「だいじょうぶ………か…ッ、士龍……」
オレの涙に気づいたのか、それを拭おうと手を伸ばしかけた士龍は、途中で止めてその指先をぎゅっと握り込んだ。
あんまりオレが泣いてたら、きっと士龍は気にしてしまうだろう。
士龍がいつものように余裕でいられるように、オレは普通にしていなくちゃいけない。
必死に涙を止めようと顔を背けて、鼻をすんと啜りあげる。
弱気を見せたら、ダメだ。一番精神的にショックを受けているのは士龍のはずだ。しっかり支えてやらないとならない。
「……ッと、飛んで、たみてぇ。どんくらい、たったかわかる、か」
ゆっくり頭を起こして周りを見回して状況把握をする様子に、ダメージを受けているとは感じられず、そういえば自分が脅迫している時もこの人は普段通りだったなと思い返す。
「終わって、から…………三十分は、経ってない……」
もしかしたら、全く気にしていないのか。オレだけが気にしているだけで、士龍にとっては輪姦されても、問題ないのかもしれない。
複雑な気持ちで見返すと、士龍はさっさと立ち上がってその場に散らばっている自分の服を拾い上げている。
「…………トイレで軽く身体を拭って服着てくるから、待ってろ」
「待って、手伝う、よ」
「…………オマエはくんな。そこで待っててくれ」
ぴしゃッと拒絶されて、足を引きずりながらトイレに向かう背中をなすすべなく見送った。
何もできなかった。
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