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しおりを挟む「士龍、いいかげん小倉をかまいすぎ。かまうと調子乗るからさ、アイツ」
オレらを空き教室に招き入れた村澤さんは、不機嫌な表情で士龍の前に菓子パンといちごみるくを置いて腕組みをした。
「ハルちゃんは俺に対しては口だけだしな。よくトール君には突っ込んでって壊滅してんのにさ」
空き教室には、去年までの幹部たちがトランプをして遊んでいたが、士龍が入ってきたとたん、トランプをやめて士龍に椅子を出したり、接待が始まった。
「しかし今のはマズイな。小倉は士龍が大好きだからよ。ハセガワ潰しにいったのも、絶対士龍に認められたかったからだろ」
村澤さんはタバコに火を点けて、心配そうな表情で士龍を見返す。
こういう態度がまるで息子を心配するかのようなオヤジのように見えて、村澤さんをオヤジくさく見せている。
小倉さんがハセガワに執着するのが、士龍に自分を認めさせたいというものならば、オレ自身の感情にも心当たりがある。
「それが、士龍は抜け忍の富田とお付き合いなんかしだすし、小倉は荒れるんじゃねえの」
「抜け忍て、ココは忍びの里かよ。んー、にんにん」
士龍は指を組み合わせて、こうだっけとか村澤さんに聞きながら、忍者のポーズをとろうとしている。
「まあ、そうだけどよ。大体さあ、ホントにこのショボいののどこに惚れたのよ。士龍ならオンナも選び放題だったじゃねえの。喧嘩だって、士龍には勝てそうじゃねえだろ」
村澤さんは訳がわからんといったようにオレの方を眺めて、ちんこがいいってねえとつぶやき、オレの股間ばかりを見つめてくるので何だか居心地が悪すぎる。
「まー前も言ったけどさ、最初はカラダかな。オンナとするよりキモチイイし、優しいし」
「まあ、聞いたけどね。えろえろ小悪魔ちゃんだろ、ちゃんと考えたんだよな、シロー」
栗原さんは母親か何かのように、ちゃんといつも考えて行動するんだよと告げる。
それにしてもえろえろ小悪魔ちゃんとは何のことだろう。
「考えて悩んだよ」
「悩んだんだ」
士龍が悩んだことが意外だったかのように、栗原さんはほおっと感心したような表情になる。
「そりゃあ悩んだよ。弟だからさ。兄弟は流石にイケナイかなって」
「弟?富田が?」
「とーちゃんが一緒なんだ、俺に似てカッコイイだろ?」
栗原さんは初耳だったらしく驚いてオレの顔と士龍の顔を見比べていたが、あんまり似てないなって呟く。
村澤さんはあまり驚いていないようにタバコをふかしていたので、先に聞いていたのだろうなと思う。
「富田は、それでイイのか?…………一度は、それで士龍はお前を捨てたんだぞ」
念を押すように告げる村澤さんは、オレを心配しているのではなく、中途半端な真似をするなよという念押しだ。
なんだかんだ、士龍は仲間には愛されている。
「村澤さん。オレは士龍を兄貴とか思ってねぇです。そりゃ一度は振られたけど、命懸けでオレを助けてくれた人です。それにオレは、去年士龍にテッペンとらせたかったんすよ。それくらい憧れてたんす。士龍が手に入るなら何もいらねぇくらい、好きです」
「ほーんと、揃ってアホ兄弟かよ……士龍がモノにされたってわかって……、小倉は荒れるぜ」
オレの言葉に村澤さんは心底呆れた表情を浮かべるが、それはオレたちを応援するようなオーラをもっていた。
「ショーちゃん、ショーちゃん、たけおが俺のモノなんだぞ」
村澤さんの言葉に士龍は違うぞと頬を膨らませているが、それがまた可愛いからほかのやつに見せたくないなと独占欲が働く。
「…………どっちでも一緒だって」
「士龍、そいつに本気なんだな。面倒くさがりの士龍が動くと言ってんだもんな、しょうがない、俺らはいつだってあんたの味方だ」
「ショーちゃん、いつもありがとね」
村澤さんの言葉に嬉しそうな笑顔を浮かべてぎゅっと抱き着く様子についつい妬けてしまう。
彼らとオレとは比較なんかできないものだって、心のどこかでわかっているのに……どうしてこんなにも醜く嫉妬してしまうんだろう。
こんな嫉妬なんて、まったく意味をもたないのに。
「今更でしょ。いつも士龍が俺らを守ってくれてんだからな」
村澤さんたちはぽんぽんと士龍の背中を叩いて、任せろと力強く言っていた。
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