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がふっと士龍の唇から赤い鮮血が溢れ出している。
オレの目を見つめて、士龍が何か言いたそうに震える血まみれの唇を開く。
「士龍…………、血が…………士龍が、しんじまうッ」
「…………しなね、えから」
掠れきった声だが力があり、生きていることを実感する。
士龍はオレの背中で拘束している鎖を引きちぎった。
「にげ、るぞ」
掠れた声で言うと、ふらふらしながら立ち上がって、オレの腕をぎゅっと握った。
「シロ、大丈夫か。あんま突っ込むなって、防弾チョッキきてても、頭と下半身は防弾じゃねーからさ。足うごけっか?」
「でも、脚やられた……あるけなそ」
ハセガワが何故ここにいるのかは分からなかったが、大半のヤクザを一人で伸していた。
「あ、こないだ報復にきたヤツか。シロの恋人だったのな、捕まってたとこ悪いけど、シロを立たせてやって」
ハセガワはオレを覚えていたのか、声をかけられてオレは士龍の腰をぐっと抱えて支える。
恋人、ではなくて弟でしかない。
だけど士龍は、オレを助けにきてくれたのだ。
この人は、そういう人だ。
恋人じゃなくても、血のつながった弟を見殺しになんかしない。
銃弾を食らっているのに、士龍は意識もしっかりしていて、オレの髪を撫でて無事でよかったと微笑む。
「…………士龍。脚、スゲー血が出てる」
「大丈夫だよ。んな、しけたツラするなよ。……思ったより元気そうで良かった」
どう返事をしていいか分からず、オレはその腰を抱いて非常口に目を向ける。逃げるならば、そこしかない。
「おふたりさん、感動の再会はまた後でやンなよ。とりあえず、逃げるぞ。ケーサツくるから」
ハセガワは、非常口を開けて長髪の鬘を手にしている美人を連れてそこから出ていく。
状況が把握できないまま士龍を連れて外に出ると、元宮と木崎が駆け寄ってきて、オレは混乱したまま二人に礼を言った。
木崎がケガをした士龍についていたそうだったが、ハセガワが二人を護衛して送ると説得してくれて、オレは怪我をした士龍を女装した美人の車に載せた。
女装の美人がカツラを振り回して、男たちを容赦なく蹴りこんでた姿を見たが、彼はハセガワの相棒で有名なイケメンの日高らしい。
暴れていた時はそう違和感を感じなかったが、女装というよりも、あまりに美人すぎてあんまり現実味がない。
ヤクザの下っ端が超絶美人だと舞い上がってた気持ちもわかる。
「シャツで止血はしたけど、シロは横になってた方がいいよ」
カツラをかぶり直した美人は、オレに士龍を後部座席に載せて横になれという。
士龍は痛めた脚を伸ばして半寝の状態になると、血の気がなく顔色が悪く見える。
「君は、助手席に座ってね……名前なんだっけ」
「…………あ、はい。富田虎王っす」
一応年上なので、敬語で返しながら助手席に座る。
「二年の富田か……噂はきくよ。一応、オレら狙われるからさ」
笑って返事をされるが、金崎の一件もあるので敵に思われているのだろうなと思いながら、助手席に座る。
ハセガワに報復に行ったことも聞いているだろうし。
なんだか居心地も悪いなとか思いつつ、後部座席の士龍が気になって仕方が無い。
「ヤッちゃん、車もってんだね。すごいなー」
士龍は相変わらずこんな時でも余裕そうに、のんびりとした空気で日高に話をふっている。
拳銃で撃たれたというのに、そんなに余裕な顔をするのかよ。
会えた嬉しさですっかり忘れかけていたが、オレは士龍に捨てられたんだった。
自分が捨てたヤツを命懸けで助けにくるとか、ホントにこいつはバカじゃないか。
「親から貰ったやつだから、オレが凄いわけじゃないよ。シロは免許とらないの?」
原チャの免許はもっているだろうが、車の方はもっているのかわからない。日高に聞かれるということは、既に士龍は十八歳の誕生日を迎えているのだろう。
「バイトしなきゃね。俺、喧嘩ばっかして怪我も沢山したからさ、あんまりバイトできなくって」
「そうだよね。俺もトールとなるだけ一緒にいたいからさ、バイトあんまりしなかったし」
士龍と日高はどうでもいい世間話を続けている。
意識を保つのも精一杯なんだろうなってのは、額に浮かぶ汗を見ればわかる。
やせ我慢しないで、さっさと気を失ってしまったほうが楽なんじゃないかなと気になって見返す。
「東高の眞壁って名前は聞いて警戒はしてたけど、まさかシロだとは思わなかったな」
「ん、仲間にもトール君には手を出すなってゆってたから。警戒なんていっても、俺じゃあトール君に瞬殺されるってば」
「ちょっと気持ち悪いなって。名前聞くのに、まったく顔あわせないとかさ……オレらのこと避けてた?」
「わかる?……だって俺、トール君やヤッちゃんに会えるかなって東高に入ったんだよ?だから喧嘩したくないし、なるだけ会わないようにしてたんだよ」
会わないようにしてたのに、オレを助けるためにわざわざ会いに行ったんだったよな。
きっかけは、それだった。
オレはそれを利用して、士龍を脅して身体を手に入れた。
オレの目を見つめて、士龍が何か言いたそうに震える血まみれの唇を開く。
「士龍…………、血が…………士龍が、しんじまうッ」
「…………しなね、えから」
掠れきった声だが力があり、生きていることを実感する。
士龍はオレの背中で拘束している鎖を引きちぎった。
「にげ、るぞ」
掠れた声で言うと、ふらふらしながら立ち上がって、オレの腕をぎゅっと握った。
「シロ、大丈夫か。あんま突っ込むなって、防弾チョッキきてても、頭と下半身は防弾じゃねーからさ。足うごけっか?」
「でも、脚やられた……あるけなそ」
ハセガワが何故ここにいるのかは分からなかったが、大半のヤクザを一人で伸していた。
「あ、こないだ報復にきたヤツか。シロの恋人だったのな、捕まってたとこ悪いけど、シロを立たせてやって」
ハセガワはオレを覚えていたのか、声をかけられてオレは士龍の腰をぐっと抱えて支える。
恋人、ではなくて弟でしかない。
だけど士龍は、オレを助けにきてくれたのだ。
この人は、そういう人だ。
恋人じゃなくても、血のつながった弟を見殺しになんかしない。
銃弾を食らっているのに、士龍は意識もしっかりしていて、オレの髪を撫でて無事でよかったと微笑む。
「…………士龍。脚、スゲー血が出てる」
「大丈夫だよ。んな、しけたツラするなよ。……思ったより元気そうで良かった」
どう返事をしていいか分からず、オレはその腰を抱いて非常口に目を向ける。逃げるならば、そこしかない。
「おふたりさん、感動の再会はまた後でやンなよ。とりあえず、逃げるぞ。ケーサツくるから」
ハセガワは、非常口を開けて長髪の鬘を手にしている美人を連れてそこから出ていく。
状況が把握できないまま士龍を連れて外に出ると、元宮と木崎が駆け寄ってきて、オレは混乱したまま二人に礼を言った。
木崎がケガをした士龍についていたそうだったが、ハセガワが二人を護衛して送ると説得してくれて、オレは怪我をした士龍を女装した美人の車に載せた。
女装の美人がカツラを振り回して、男たちを容赦なく蹴りこんでた姿を見たが、彼はハセガワの相棒で有名なイケメンの日高らしい。
暴れていた時はそう違和感を感じなかったが、女装というよりも、あまりに美人すぎてあんまり現実味がない。
ヤクザの下っ端が超絶美人だと舞い上がってた気持ちもわかる。
「シャツで止血はしたけど、シロは横になってた方がいいよ」
カツラをかぶり直した美人は、オレに士龍を後部座席に載せて横になれという。
士龍は痛めた脚を伸ばして半寝の状態になると、血の気がなく顔色が悪く見える。
「君は、助手席に座ってね……名前なんだっけ」
「…………あ、はい。富田虎王っす」
一応年上なので、敬語で返しながら助手席に座る。
「二年の富田か……噂はきくよ。一応、オレら狙われるからさ」
笑って返事をされるが、金崎の一件もあるので敵に思われているのだろうなと思いながら、助手席に座る。
ハセガワに報復に行ったことも聞いているだろうし。
なんだか居心地も悪いなとか思いつつ、後部座席の士龍が気になって仕方が無い。
「ヤッちゃん、車もってんだね。すごいなー」
士龍は相変わらずこんな時でも余裕そうに、のんびりとした空気で日高に話をふっている。
拳銃で撃たれたというのに、そんなに余裕な顔をするのかよ。
会えた嬉しさですっかり忘れかけていたが、オレは士龍に捨てられたんだった。
自分が捨てたヤツを命懸けで助けにくるとか、ホントにこいつはバカじゃないか。
「親から貰ったやつだから、オレが凄いわけじゃないよ。シロは免許とらないの?」
原チャの免許はもっているだろうが、車の方はもっているのかわからない。日高に聞かれるということは、既に士龍は十八歳の誕生日を迎えているのだろう。
「バイトしなきゃね。俺、喧嘩ばっかして怪我も沢山したからさ、あんまりバイトできなくって」
「そうだよね。俺もトールとなるだけ一緒にいたいからさ、バイトあんまりしなかったし」
士龍と日高はどうでもいい世間話を続けている。
意識を保つのも精一杯なんだろうなってのは、額に浮かぶ汗を見ればわかる。
やせ我慢しないで、さっさと気を失ってしまったほうが楽なんじゃないかなと気になって見返す。
「東高の眞壁って名前は聞いて警戒はしてたけど、まさかシロだとは思わなかったな」
「ん、仲間にもトール君には手を出すなってゆってたから。警戒なんていっても、俺じゃあトール君に瞬殺されるってば」
「ちょっと気持ち悪いなって。名前聞くのに、まったく顔あわせないとかさ……オレらのこと避けてた?」
「わかる?……だって俺、トール君やヤッちゃんに会えるかなって東高に入ったんだよ?だから喧嘩したくないし、なるだけ会わないようにしてたんだよ」
会わないようにしてたのに、オレを助けるためにわざわざ会いに行ったんだったよな。
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