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しおりを挟むやっぱり、オレは諦められない。
三日目の夕方にようやくオレは重くなった腰をあげた。
死んでは欲しくなかった。だけど、このままじゃオレのココロの方が死んでしまう。
充電の切れかけたスマホをみると、元宮や三門たちの着信履歴がかなり入っている。
そういや、元宮には月曜に休むと連絡したきりだ。優しいヤツのことだし、また無駄に心配するんだろうな。
でも、どうすりゃいい。もう、あの人はオレに二度と会ってはくれない気がする。
ギュッと拳を握るが力が入らないのか、なんだかひどくだるく感じる。そういえば何も喰ってなかったな。
伝えたい。
…………忘れられないこと、全部。
オレは、夕暮れの日差ししか入ってこない昏い部屋の中、決心したようにジャケットを羽織ると、バイクの鍵を手にする。
話を聞いてはくれないだろうことは分かってはいた。
だけど、人の心を突き動かすことができるのは、それより上位の感情だけだ。
こんなことだけで、諦められっこないだろ。
ヘルメットを被るとバイクに跨ってエンジンを蒸す。
あの人はあまり夜に出歩くタイプじゃないが、今時分なら街のゲーセンとかにいるかもしれない。
仲間と一緒なら、そんなに邪険にはしないかもしれない。
…………せめて、声をかけるくらいなら。
オレは駅前の近くのゲーセンの前にバイクを止めてアーケードゲームの前で待ち伏せをした。
眞壁一派がくるゲーセンはここか、村澤さんの家の近くの駅前かどちらかだ。こなかったら、家に直接いこうか。
ゲーセンで待ち伏せして、手持ち無沙汰に一通りアーケードゲームで遊んだがまったく面白くない。
流石に寒さが腹にきたのか催して、近くにトイレを探せずに裏口に出てすぐのところの壁へと立ちションをする。
マナー違反なんだけど、うろうろしてる間にすれ違ったりしたらと思うと、トイレに時間をかけたくなかった。
ふと、横に人影とピリピリとした気配を感じて視線をむけると、いかにもな格好のチンピラたちがいっせいにオレを見る。
クスリかなんかの取り引き、なのか。
手が震えてジッパーが締められない。
「ガキ、テメェいまの見た、のか?!」
カツカツと靴の音が響いてくる。
まったく力もでねえが、どうやって逃げるか。
なんとかジッパーをあげて、近づいた男にアッパーを喰らわせようと腕を下から振り上げたが簡単に掴み取られた。
「逃がさねえよ。ガキ」
体がギシギシして痛い。
顔面にぐるくると黒い布が巻かれているのか、視界が真っ黒だ。
口には猿轡、腕も縛られているのか、ギュッと圧迫されている。ここは、どこだ。
すぐに逃げりゃよかったんだが、ちんこ出したまま逃げられねえし。こんなことなら、恥を捨ててちんこだしたまま逃げればよかった。ここんとこ、ホントに踏んだり蹴ったりだ。
「サツの使いっぱかと思ったけど、タダのガキみたいだな」
ヤニくさい匂いと、まわりからピリピリ肌に感じるヤバイ雰囲気はビシバシ感じる。
やっぱり、こりゃあ、コンクリ詰めコースかな。
最後に、せめて、士龍に会いたかった。未練で頭の中はいっぱいで、たまらない。
オレが死んだら、流石に少しは寂しく思ってくれるかな。化けてでたら、ずっと一緒にいれるかもしれねえな。
怖がってくれるかな……あの人なら普通に話しかけてくれそうだ。
「東高ね。調べたら、医者の隠し子らしいっすよ、こいつ」
一体どこから調べてきたんだ?
疑問符でいっぱいだが、ヤクザもんの考えはわかる。オレの命で親父にユスリをかけるつもりだ。あんな奴に救われるくらいなら、このままコンクリ詰めで構わない。
失恋したばっかで、気力も体力なんかまったく残ってない。
今更どうなっても構わないのに、そのたったひとつのあの人への未練のために生きたいと思う。
殺されたくないと、恐怖感ばかり募っていく。
ただ、あの人に、あいたい。
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