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この辺では美味しいと有名なイタリアンレストランへと連れてき たが、眞壁はどうやら落ち着かない様子だった。 「こないだの朝飯の………… 。その、礼だ」
わざわざ周りから見てもオシャレな服装に着替えて待ち合わせ場所に来た眞壁は、西高の奴らに絡まれていたオレを颯爽と助けてくれた。
日本人離れした容姿で王子様のように現れた彼を見たら、そこらへんの女だったらすぐに恋に落ちてしまっただろう。
まあ、オレでも乙女ではないのに、胸が高鳴った。
まさに今もちらちらと注がれる女性の視線は、眞壁に向けられているものだ。
「朝飯気に入ったのか。また、作るよ………… 」
こうしてレストランに来て向き合って食事をするという行為にひどく違和感を感じる。
眞壁も同じような気持ちなのか、表情がぎこちなくオレの様子を気にするかのように伺っている。
念のため隣の市まで来たが、こんなところを仲間に見られたらきっと何事かと思われるだろう。
「アンタ、料理うまいのな」
褒め言葉を口にすると、眞壁は一瞬表情を緩めて照れたように視線を落として口を開いた。
「ひとりで食うのも、うまいほうがいいし。ラップしとけば、かーちゃん食うしな」
眞壁の言葉に、最初の日に眞壁を介抱した時に遭遇した年齢不相応な眞壁の母親を思い出した。
「ああ、そういや………… オマエのおふくろさん、前に会ったけどさ、すげえ美人な」
看護婦をしていると言っていた眞壁の母親は、一児の母とは思えないくらい若々しく、生活感が感じられないほど綺麗な女性だった。
眞壁がこれだけ美形なのも、遺伝子なのだなと思う。
「…… え、もしかして俺に飽きたから、次はかーちゃんとか?それは待て。俺はお前をとーちゃんとは呼べない」
オレの話に驚いた表情でぐるぐるとパスタをフォークに巻き付ける様子に思わず腕を掴むと、必死な表情を浮かべ食いつく眞壁に、オレはまさかと言って首を横に振った。
「美人とは言ったけど。熟女好きじゃないし年上好きでもないから。こないだから変な心配すんなよ。襲ったりとか…… しねえから」
そう返事をすると、眞壁は我に返ったようにオレを見返して愛想笑いを浮かべた。
「まあ、卑怯モンのオレが言っても信憑性ないけどさ」
眞壁を脅して自分の好きなように扱っている自分に、信用する要素なんてなにもない。
それに、眞壁に飽きるなんて考えられないほど、執着していることは自分でも分かっている。
「…… いや、ふつーにかーちゃんはねえよ。なに、マジに答えてんだよ」
巻きすぎたパスタを口に頬張って、冗談とは思えないような顔でよかったと胸を撫でおろす眞壁にオレは小さくため息を漏らした。
信用なんてされてないのは分かっている。
眞壁のほうも、いいかげんにそろそろ飽きてくれないかなって思っているのだろう。
「そうだな………… あと、あー、あのよ…… コレ」
元宮のアドバイスを受けて、プレゼントを買おうとモールを覗いて回って似合いそうだと思わず買っていた。
包装するかと聞かれて、気恥ずかしくなって袋でいいと言ってしまったので、飾りもない陳腐な袋を眞壁の前に差し出した。
「…… なに?」
「…… 運気の良くなる、なんか腕輪だ。……アンタに似合うかと思って」
眞壁はふうんといつものままの表情で袋を掴むとガサガサと開けて、シルバーのバングルを腕に嵌めた。
「運気ね?………… ありがと」
目を細めて真ん中に嵌った緑色の石を眺めて、ふっと表情から堅さが抜けるのに、オレはほっと息をついた。
「………… おう…………」
嫌な顔ひとつせずに、眞壁はありがとうとオレに告げた。
オレが贈ったものに腕を通す姿が本当に嬉しくて、これが見たくて男は自分の恋人にモノを贈るのだとこころから思えた。
わざわざ周りから見てもオシャレな服装に着替えて待ち合わせ場所に来た眞壁は、西高の奴らに絡まれていたオレを颯爽と助けてくれた。
日本人離れした容姿で王子様のように現れた彼を見たら、そこらへんの女だったらすぐに恋に落ちてしまっただろう。
まあ、オレでも乙女ではないのに、胸が高鳴った。
まさに今もちらちらと注がれる女性の視線は、眞壁に向けられているものだ。
「朝飯気に入ったのか。また、作るよ………… 」
こうしてレストランに来て向き合って食事をするという行為にひどく違和感を感じる。
眞壁も同じような気持ちなのか、表情がぎこちなくオレの様子を気にするかのように伺っている。
念のため隣の市まで来たが、こんなところを仲間に見られたらきっと何事かと思われるだろう。
「アンタ、料理うまいのな」
褒め言葉を口にすると、眞壁は一瞬表情を緩めて照れたように視線を落として口を開いた。
「ひとりで食うのも、うまいほうがいいし。ラップしとけば、かーちゃん食うしな」
眞壁の言葉に、最初の日に眞壁を介抱した時に遭遇した年齢不相応な眞壁の母親を思い出した。
「ああ、そういや………… オマエのおふくろさん、前に会ったけどさ、すげえ美人な」
看護婦をしていると言っていた眞壁の母親は、一児の母とは思えないくらい若々しく、生活感が感じられないほど綺麗な女性だった。
眞壁がこれだけ美形なのも、遺伝子なのだなと思う。
「…… え、もしかして俺に飽きたから、次はかーちゃんとか?それは待て。俺はお前をとーちゃんとは呼べない」
オレの話に驚いた表情でぐるぐるとパスタをフォークに巻き付ける様子に思わず腕を掴むと、必死な表情を浮かべ食いつく眞壁に、オレはまさかと言って首を横に振った。
「美人とは言ったけど。熟女好きじゃないし年上好きでもないから。こないだから変な心配すんなよ。襲ったりとか…… しねえから」
そう返事をすると、眞壁は我に返ったようにオレを見返して愛想笑いを浮かべた。
「まあ、卑怯モンのオレが言っても信憑性ないけどさ」
眞壁を脅して自分の好きなように扱っている自分に、信用する要素なんてなにもない。
それに、眞壁に飽きるなんて考えられないほど、執着していることは自分でも分かっている。
「…… いや、ふつーにかーちゃんはねえよ。なに、マジに答えてんだよ」
巻きすぎたパスタを口に頬張って、冗談とは思えないような顔でよかったと胸を撫でおろす眞壁にオレは小さくため息を漏らした。
信用なんてされてないのは分かっている。
眞壁のほうも、いいかげんにそろそろ飽きてくれないかなって思っているのだろう。
「そうだな………… あと、あー、あのよ…… コレ」
元宮のアドバイスを受けて、プレゼントを買おうとモールを覗いて回って似合いそうだと思わず買っていた。
包装するかと聞かれて、気恥ずかしくなって袋でいいと言ってしまったので、飾りもない陳腐な袋を眞壁の前に差し出した。
「…… なに?」
「…… 運気の良くなる、なんか腕輪だ。……アンタに似合うかと思って」
眞壁はふうんといつものままの表情で袋を掴むとガサガサと開けて、シルバーのバングルを腕に嵌めた。
「運気ね?………… ありがと」
目を細めて真ん中に嵌った緑色の石を眺めて、ふっと表情から堅さが抜けるのに、オレはほっと息をついた。
「………… おう…………」
嫌な顔ひとつせずに、眞壁はありがとうとオレに告げた。
オレが贈ったものに腕を通す姿が本当に嬉しくて、これが見たくて男は自分の恋人にモノを贈るのだとこころから思えた。
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