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確かに最初は嫌悪感しかわかなかった。だけど嫌悪しているだけなら、同情だけで一緒に旅などはできない
……伝説の英雄。
国賊といわれ追われた国民の英雄。憧れだったからこその心の抵抗だ。
本心ではないだろうが、だが八つ当たりしてしまうほど追い詰められているのは確かだ。
呪いの力は絶大だ。
彼の強靭な精神力だけで保っているのも確かだろう。
心が弱れば、思考もマイナスの方面に向かう。
「オマエを責めてる訳じゃねえよ」
「そんなこた分かってる。アンタ見捨てて売り飛ばすような男に思われてるのか、俺は」
ルイツはギリギリと奥歯を噛み締めるように言葉を紡いだ。
ただ抱くだけの話だ。見目も麗しい英雄を。
「アンタは強すぎンだよ。弱音吐いてもいいんだ」
初めて会ったとき、王を殺して主人になった俺に、自我を失ったまま犯してほしいと哀願した。
そのときは嫌悪しか抱かなかったが、そこまでにならなきゃ、弱音すら吐かないのだろうか。
「違う」
覆った腕をどけて、ガイザックは首を横に振る。
「ルイツ……、オマエが優しいヤツなンは分かってるさ。そこにつけこむ隙だっていっぱいあるけどな。それをやっちまったら、オレがオレでいられなくなっちまう」
苦悩に満ちた表情や口調が今までになく弱っているのが分かる。
いままでそこまで間をあけたことがなかったというのは、どうなるか分かってなかったということ。
体液だけで大丈夫だというのは、彼の誤算だ。
「もう……本当はやべえンだろ?本当は。そう言えよ」
ルイツは立ち上がり、ガイザックの椅子の横に回ってその腕を掴む。
ガイザックは目を瞠り、ルイツを見上げぐっと唇を噛み締めると、掴まれた腕を払った。
「触ンな。オマエには抱かれたくねえ、ちょっと出てくる」
ガイザックは椅子を蹴るようにして立ち上がり、部屋の壁に立ててある剣を脇に刺す。
「ンな遅くに何処いくンだよ」
「……ケツから栄養補給だ」
ルイツは颯爽と出て行くガイザックの姿を見送り、深く息を吐き出した。
日は既に昇りきっていて、小鳥のさえずりや虫が鳴く声が聞こえ始めるのを聞いて、ルイツはため息を吐き出し硬い木のベッドから身を起こす。
朝になってもガイザックが戻ってこないのは、今までにはなかった。出て行く際の様子が様子だっただけに、ルイツはいてもたってもいられない心地で宿屋を出た。
俺には抱かれたくねえってどういうことだ。
自我を保つための辛さを味あわなくて済むはずだ。そりゃ辛いのには変わりないだろうが、今より楽になるはずなのに。
そこまでの意地を張る理由があるのだろうか。
初めて拒否したのは確かに自分の方だが、無理してまで意地を張り続ける理由などないはずだとルイツは思い拳を握り締める。
女性の体だったらいいのにと言い出すくらいなのに、意地を張る理由なんて考えつかなかった。
ルイツは難しい顔をしながら、連れ込み宿通りを隈なく探そうと目を凝らす。
「どこいっちまったンだよ、くそ、あのオッサンは」
どこからどう見ても、まったくオッサンには見えない姿を探す。
あれだけの美貌だ、目立たない訳はない。
それに、剣を持って出て行ったのだから、まさかかどわかされる心配もないだろう。
だけど胸騒ぎがする。
酷く焦りに似た気持ちでいっぱいになる。
「………そこまでだ。王殺し」
背後から音も無く近づいてきた気配に、ルイツは振り返った瞬間、目の前が真っ赤に染まった。
ガンガンに鳴り響くのは、危険を知らせる警鐘。
咄嗟に脇に下げていた剣を引き抜くも、顔半分をやられているのか視界が暗くて殆ど相手が見えない。相手は3人か。いずれも手練の騎士団員だ。
「生け捕りにして処刑することを新王が望みだ」
胸元へと標的を定められた剣先が、血で霞む目に飛び込む。
ここで死ぬわけにいかない。
死んで政府のやつらに主が移ってしまえば、あの人はまた囚われ、もう二度とは逃れられないだろう。
「……死ぬわけにはいかねえ」
目の前の剣を振り払って、腰を屈めて相手の足元を狙って剣を振るい突き刺す。
足を刺された相手は、ルイツの剣を握りその動きを封じ、背後からもう一人の騎士が頚動脈へと剣を宛がう。
クソ…ここまでか…… 。
「これ以上反抗しても無駄だ。大人しく貴様は処刑台へあがるんだ」
畜生……俺は弱すぎる。まだ、俺は……。
……伝説の英雄。
国賊といわれ追われた国民の英雄。憧れだったからこその心の抵抗だ。
本心ではないだろうが、だが八つ当たりしてしまうほど追い詰められているのは確かだ。
呪いの力は絶大だ。
彼の強靭な精神力だけで保っているのも確かだろう。
心が弱れば、思考もマイナスの方面に向かう。
「オマエを責めてる訳じゃねえよ」
「そんなこた分かってる。アンタ見捨てて売り飛ばすような男に思われてるのか、俺は」
ルイツはギリギリと奥歯を噛み締めるように言葉を紡いだ。
ただ抱くだけの話だ。見目も麗しい英雄を。
「アンタは強すぎンだよ。弱音吐いてもいいんだ」
初めて会ったとき、王を殺して主人になった俺に、自我を失ったまま犯してほしいと哀願した。
そのときは嫌悪しか抱かなかったが、そこまでにならなきゃ、弱音すら吐かないのだろうか。
「違う」
覆った腕をどけて、ガイザックは首を横に振る。
「ルイツ……、オマエが優しいヤツなンは分かってるさ。そこにつけこむ隙だっていっぱいあるけどな。それをやっちまったら、オレがオレでいられなくなっちまう」
苦悩に満ちた表情や口調が今までになく弱っているのが分かる。
いままでそこまで間をあけたことがなかったというのは、どうなるか分かってなかったということ。
体液だけで大丈夫だというのは、彼の誤算だ。
「もう……本当はやべえンだろ?本当は。そう言えよ」
ルイツは立ち上がり、ガイザックの椅子の横に回ってその腕を掴む。
ガイザックは目を瞠り、ルイツを見上げぐっと唇を噛み締めると、掴まれた腕を払った。
「触ンな。オマエには抱かれたくねえ、ちょっと出てくる」
ガイザックは椅子を蹴るようにして立ち上がり、部屋の壁に立ててある剣を脇に刺す。
「ンな遅くに何処いくンだよ」
「……ケツから栄養補給だ」
ルイツは颯爽と出て行くガイザックの姿を見送り、深く息を吐き出した。
日は既に昇りきっていて、小鳥のさえずりや虫が鳴く声が聞こえ始めるのを聞いて、ルイツはため息を吐き出し硬い木のベッドから身を起こす。
朝になってもガイザックが戻ってこないのは、今までにはなかった。出て行く際の様子が様子だっただけに、ルイツはいてもたってもいられない心地で宿屋を出た。
俺には抱かれたくねえってどういうことだ。
自我を保つための辛さを味あわなくて済むはずだ。そりゃ辛いのには変わりないだろうが、今より楽になるはずなのに。
そこまでの意地を張る理由があるのだろうか。
初めて拒否したのは確かに自分の方だが、無理してまで意地を張り続ける理由などないはずだとルイツは思い拳を握り締める。
女性の体だったらいいのにと言い出すくらいなのに、意地を張る理由なんて考えつかなかった。
ルイツは難しい顔をしながら、連れ込み宿通りを隈なく探そうと目を凝らす。
「どこいっちまったンだよ、くそ、あのオッサンは」
どこからどう見ても、まったくオッサンには見えない姿を探す。
あれだけの美貌だ、目立たない訳はない。
それに、剣を持って出て行ったのだから、まさかかどわかされる心配もないだろう。
だけど胸騒ぎがする。
酷く焦りに似た気持ちでいっぱいになる。
「………そこまでだ。王殺し」
背後から音も無く近づいてきた気配に、ルイツは振り返った瞬間、目の前が真っ赤に染まった。
ガンガンに鳴り響くのは、危険を知らせる警鐘。
咄嗟に脇に下げていた剣を引き抜くも、顔半分をやられているのか視界が暗くて殆ど相手が見えない。相手は3人か。いずれも手練の騎士団員だ。
「生け捕りにして処刑することを新王が望みだ」
胸元へと標的を定められた剣先が、血で霞む目に飛び込む。
ここで死ぬわけにいかない。
死んで政府のやつらに主が移ってしまえば、あの人はまた囚われ、もう二度とは逃れられないだろう。
「……死ぬわけにはいかねえ」
目の前の剣を振り払って、腰を屈めて相手の足元を狙って剣を振るい突き刺す。
足を刺された相手は、ルイツの剣を握りその動きを封じ、背後からもう一人の騎士が頚動脈へと剣を宛がう。
クソ…ここまでか…… 。
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