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しおりを挟む辞退する幹部もいたが、無理矢理組長命令で加えて結局全員を相手した工藤は、半分意識がない状態だった。
ほとんど休みをとらせず湯浴みをさせて、浴衣を着せられ再度部屋へと引き出された。
かなり凄惨な状況になって、まだ頭は朦朧としていたが、工藤はなんとか組長の前に座っている。
「甲斐、お前には北のシマの事務所を預ける」
北地区は比較的シマとしては大きいが、それほど拓けた地区ではないので、稼ぎは少ない。更迭としてはかなり落とされることになるが、シマをもたせてもらえるだけ、穏便な処遇である。
「……ありがとうございます」
頭を下げてがらがらになった声で礼を述べる。
身体ひとつで首も繋がったのだから、串崎にも感謝しないとならないかもしれないと、工藤が串崎を見やると、組長は串崎の前に立つ。
「串崎、アンタには今回の褒美に甲斐をほしいと願ったらしいが……そんなんでいいのか」
組長がそんなんでといったことについても、異論はあるのだが、工藤は何でそんな話になってるんだと串崎をぎっと睨み据える。
「……はあ、てめえ、何言ってんだ……」
褒美って。それはどういうことだ。
確かに工藤が他の組員に抱かれたら串崎には何かやると組長が言ってたのはぼんやりと覚えていたが、思ってもいない内容に彼は目を見開いた。
「ええ。ですから、今後は甲斐の体を私の許可なく使わないでください」
工藤を組の道具に雌として使うなと串崎は言っているのである。
工藤の貞操が欲しいという串崎の願いは、工藤には有益ではあるが、串崎にはまったく得はない。
大体そんなことをするいわれもなにもないのだ。
「面白いことを言う調教師だな。甲斐に情が湧いてしまったか」
豪快に口をあけて組長は笑い、歳若い調教師を面白がるように眺める。
串崎は驚いている工藤に微笑みかける。
「そうかもしれないですね。今まで、そんなことはなかったのですけどね」
串崎は、そっと工藤に近づいてその腕を掴んだ。
「いただいて、よろしいでしょうか」
「あいわかった」
一度言ったことは覆さないのが極道だと、組長はそう告げると好きにもっていけと串崎に告げた。
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