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しおりを挟むいままで自分の手で調教してきた奴隷たちが、どんな目にあっても、何の感情もわかなかったというのに、こんなにも胸が締め付けられる理由が、串崎にはわからなかった。
いや、わからない振りをしたい、だけ。
「……虎、さん……アタシ、もう我慢できない」
「一真、すまないが、堪えてくれ。全部、甲斐さんのためなんだ」
「甲斐のためとか、わからないわ」
首を振る串崎の様子に、オマエらしくないなと佐倉ははあっと吐息をついて説明する。
「オマエに抱かれて終わりなら、目の前で抱かれた恥辱だけだ。組員を相手にすることで、甲斐さんを抱いたやつらはそれだけではない情を抱く」
「だからって、下のものでもいいっていうの」
組長ならば、詫びのこともありプライドをまだ保てるかもしれない。しかし、下のものに輪姦されたとあっては、矜持はずたぼろである。それに耐えられる精神力かどうか、壊れないと本人が言っても不安で仕方がないのである。
「獣の世界ってのは、上でも下でも欲情の対象になるなら、そこに慕情ってのが生まれる。組長だけですむならそれがよかったんだがなあ」
「わからないわ……」
組長のが使えないんだから仕方ねえよなあとぼやきながらも、佐倉は目の前で陵辱され続ける工藤をちらっと見やる。
人間を調教する仕事をする串崎にそれがわからないわけはない。情をもてば心が流される。上に立つにしても、それは必要だ。一度落ちたまま這い上がれないようなやつなら、そのまま雌扱いされるだけだが、工藤はそういう人間ではない。
「オマエにはわかるだろ。人間は所詮は獣だ。あと、組長からの褒美、一億くらいにするか?」
「……お金とかいらないわよ。でも、本当になんでもいいのかしら?」
それならばひとつだけ、望みがあると串崎は念を押すように告げた。
「なんだよ、一真、オマエ怖い顔してんなあ。甲斐さんに、惚れたんか」
ニヤニヤと下世話な表情で言う佐倉を、串崎はギッときつい眼差しで睨みつける。
「自分のことには、疎いのに、本当に嫌なヒト。……そうね、なんでもいいというなら甲斐がほしいわ」
快感に既に意識を飛ばしながら、男達の欲望を受け止めて腰を振り続けている工藤を眺めて、串崎は唇を強く噛み締める。
「……おやっさんの言ったとおりか。まあ、甲斐さんに極道はやめさせねえけどな」
「嫌がるかしら」
串崎の不安そうな表情に、佐倉は肩をすくめてその背中をとんとんと叩く。
「どうだろうな。……さっきオマエとしてる時の甲斐さんは凄く満ち足りた顔してたけどな」
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