竜攘虎搏 Side Dragon

怜悧(サトシ)

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番外編:合コンに行こう!

5 side T

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いきなり100倍カッコイイとか、天然に惚気だす士龍にオレは焦って肩を掴む。
まあ、士龍は元々こんな奴だが、合コンでは流石に女子は引くだろうなと、恐る恐る周りを見やると、何故か一堂微笑ましそうな顔をしている。
「身内大好きなお兄さんとか、海外っぽくて、セレブよね」
「やっぱり大病院の息子さんよね」
女子たちはうんうんと頷いて、育ちが良さそうなどと勝手に盛り上がっている。
あとは既に肉食モードに突入している女子たちは、医者のタマゴをゲットしようと必死なようだ。
最初に恋人がいると宣言している士龍には見切りをつけてくれている。
オレの手を出すなという条件もあるのだから当たり前なのだが。
ちらと士龍を見ると、いちごミルクのカクテルを何杯か注文している。
酔うから一杯だけと言ったのを忘れているのだろうか。
「シロウ君て首席だしイケメンだし、大学じゃ、なんか近寄りがたい感じだったけど、印象違うよな」
おカッパの髪の男は、心底不思議がるような感じで士龍を眺めて呟く。
流石に医大に通うようなやつに、オレは慣れてないので何を言えばいいかと考えて、
「黙ってりゃ、頭脳明晰なクールな奴に見えるからな」
「そうそう。ソレ。弟くんは、凄くワイルド系だよね」
「タケオでいいぜ。タメだろ」
「あー、そうだよね。僕は田山崇一、ソウイチでいいよ。タケオは、看護士志望なんだよね。今看護士も仕事にあぶれない職種だし、将来安定だよね」
気さくな様子で名前を名乗られて、オレは何気ない会話に頷く。
プライドの高い優等生という感じはしないし、こういう人間を選んで連れてくるところは、士龍のめざとさが浮き出ている。
「家事手伝いでも、資格はあった方がいいだろうな程度だけど」
「医者になろうとかはなかったの?」
「頭より身体使いたい性分なんだよ」
自慢じゃないが、専門学校もギリギリで受かった状況である。
「橘はぁ、あったま悪いもんね。田山君とかと違うからあ」
オレの前に座っていた女は、田山に媚びを売るようにしなだれかかっている。
完全にターゲットオンされているなあと思って鼻で笑った。
高校まではこういう優等生はモテなかったが、大学からは、将来有望な男に女が群がる。
チラッと士龍を見ると、カクテルをとろんとした目で眺めながらチビチビと飲んでいる。
結構酔ってそうである。
「おい、士龍。一杯だけっつったろ?何杯のんだ?」
「んーー?へへ、いっぱいだけ飲んだ」
その一杯と違うが、もしかして一杯といっぱいの意味を取り違えたのか。
いやでも、あの時わかってるような感じで何でかと問い返したしな。
士龍は帰国子女というのもあってか、同音異義語とか、ちょっと難しいいいまわしとかには弱い。
10歳までドイツ語しか話せなかったのに、10年でこれだけ話せているのも凄いとは思うが、時々かなり間違えている。
今回も間違えたのか?
空いたグラスを見るといちごミルクカクテルだらけである。
カクテルだと思ってないのか?
「士龍、何のんだんだよ?」
「お酒ら、カルアだけらよ……あとはいちごミルクしかのんでらい」
既に呂律が怪しい。行為中の表情を連想させてムラッとくる。
「わりぃ、アニキが泥酔しちまったから、オレらはけるわ。精算しとくから、あとは楽しんで」
オレはぐったりしている士龍の腕を肩にかけて立ち上がる。
「意外すぎなんだけど」
女子たちや、士龍の同級生たちは驚いて見上げたが、士龍はご機嫌な笑顔でへらへらしながら手を横に振る。
「またねー、あしたー」
バイバイと子供のようにぶんぶんと手を振り回すのに、オレは身体を必死にかかえてカードで支払いを済ませてタクシーをつかまえて乗り込んだ。

タクシーの運転手に自宅の住所を伝えると、
「あ、うんてんしゅさん、やっぱり駅前の〇× × 通りにおねがいします」
被せるように士龍が、告げた行き先を変更する。
「おい、なにかん.........」
ふわっと士龍の唇が耳元に押し付けられる。
「.........はやく、たけおが、ほしい」
表情を見ると悪戯っぽいが、我慢できないという欲情に濡れた目で見上げられ、オレは喉を鳴らして頷いた。
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