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番外編:歓びの歌を※Xmas
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なんとなく消化不良のまま、イブの日を迎えてしまったが、覚えてろよと言ったもののって感じではある。
「士龍さん、今日はたけちゃんと何処いくんですか」
「ンー、決めてねえかな。家でケーキでも食うかな」
モトミヤは、同じクラスなので成績表をもらったあとですぐに机によってくる。
「たけちゃんも、毎年イブは誕生日だから俺らがお祝いしてたんだけど、今年は士龍さんがいるから、俺らはみんなでバイクで走りに行くんで」
バイクに乗る真似をするモトミヤを眺めて。引っかかった単語を口にする。
「誕生日?」
「あれ、たけちゃんから聞いてねえっすか」
驚いた顔のモトミヤに、俺は頷く。
「すいません。たけちゃん、イブが誕生日なんすよ」
たけおの誕生日を聞いたことがあったかな。
覚えてはいないので、多分聞いたことはないだろうし、いう機会もなかった。
誕生日用のプレゼントとか何も用意してねえけど、どうするかな。
自分にリボンをかけて、とか、笑えるしベタだろう。
欲しいものが何かすら、わからねえしなあ。
クリスマスプレゼントは用意はしたけど、誕生日用の分はない。
こういうのは一緒にしちゃいけねえし。
帰りに迎えに寄るって言っていたので、個別で買い物をする時間もなさそうだ。
「士龍、帰るぞ」
いいタイミングでガラガラと教室の扉が開いたので、俺は席をたってカバンを持った。
「なあ。たけお、寄りたいとこあるんだけど?いい」
「……デート、予約してるとこあるんだけど、結構ギリギリなんだ」
ちょっと大人っぽい表情を浮かべて告げたたけおに、予約の時間を聞いて、寄る時間はないなあと諦めた。
自分の誕生日だと言うのに色々予約までして、たけおは本当にマメな奴だなと思う。
たけおの部屋で着替えてから連れてこられたのは、ホテルのラウンジで見るからに高級そうなレストランである。金は親から貰ってあるだろうけど、場違いな気もする。
「親父に、士龍と一緒に飯を食うって言ったら、ここがうまいって教えてくれたから、さ」
「あ、おう。見るからにすごそうだもん。つか、たけお誕生日だって教えてといてよ。俺、なんも用意できなかったじゃん」
ラウンジにいるの周りの視線を感じつつ、レストランへと入っていくと、蝶ネクタイのウェイターが頭をさげてくる。
「……あ、まあ、言いにくくてさ、誰かに聞いたのか」
「遠慮するなっての。モトミヤが教えてくれた」
ウェイターに名前を告げたたけおの後ろを歩きながら文句を言うと、首を横に振る。
少しはアピールくらいしてもいいんだろうに。
知るは一時の恥って、じいちゃんも良く言っているし、言うのも同じとか思うのだけど。
案内された席に座ると、たけおの赤い髪と俺の髪はやはり目立つ。
ふたりして身長は高いし、たけおも少し伸びたみたいだから180には届いたようだし。
「今夜は雪になるって言っていた。バイクでこなくて正解だな」
コートを脱いでウェイターに荷物を取り出してから渡すと、たけおは視線を俺に向ける。
「そもそも…………帰らねえし」
「この上に部屋とったとか?ベタだな」
「まさか。バイト代でどうにもならないから、近くのビジホだけど」
無理をしたのかなって感じがしたので、どうにも水臭いなと思い、椅子に座る。
「相談しろよ。誕生日だって知ってたら、俺が用意したのによ」
「士龍、バイトしてねえじゃん」
「してるよ」
「え、何してんだよ。ケンカと受験勉強しかしてるイメージねえよ」
「外じゃねえし。じいちゃんの手伝いで、書類作ったりとか資料まとめたりとか」
じいちゃんは県会議員なので、喧嘩ばかりに担ぎ出される俺を心配して、バイトといって色々作業を手伝わされていた。秘書もいるが、秘書より俺のが手際がいいと褒めてくれたりもした。
俺はじいちゃん子なのだ。
「じゃあ、来年は……士龍に用意してもらうよ」
「まかせとけ。あ、そうだ、コレはクリスマスプレゼント」
運ばれた水に口をつけて、コートのポケットから出した包みを俺はたけおに差し出した。
「士龍さん、今日はたけちゃんと何処いくんですか」
「ンー、決めてねえかな。家でケーキでも食うかな」
モトミヤは、同じクラスなので成績表をもらったあとですぐに机によってくる。
「たけちゃんも、毎年イブは誕生日だから俺らがお祝いしてたんだけど、今年は士龍さんがいるから、俺らはみんなでバイクで走りに行くんで」
バイクに乗る真似をするモトミヤを眺めて。引っかかった単語を口にする。
「誕生日?」
「あれ、たけちゃんから聞いてねえっすか」
驚いた顔のモトミヤに、俺は頷く。
「すいません。たけちゃん、イブが誕生日なんすよ」
たけおの誕生日を聞いたことがあったかな。
覚えてはいないので、多分聞いたことはないだろうし、いう機会もなかった。
誕生日用のプレゼントとか何も用意してねえけど、どうするかな。
自分にリボンをかけて、とか、笑えるしベタだろう。
欲しいものが何かすら、わからねえしなあ。
クリスマスプレゼントは用意はしたけど、誕生日用の分はない。
こういうのは一緒にしちゃいけねえし。
帰りに迎えに寄るって言っていたので、個別で買い物をする時間もなさそうだ。
「士龍、帰るぞ」
いいタイミングでガラガラと教室の扉が開いたので、俺は席をたってカバンを持った。
「なあ。たけお、寄りたいとこあるんだけど?いい」
「……デート、予約してるとこあるんだけど、結構ギリギリなんだ」
ちょっと大人っぽい表情を浮かべて告げたたけおに、予約の時間を聞いて、寄る時間はないなあと諦めた。
自分の誕生日だと言うのに色々予約までして、たけおは本当にマメな奴だなと思う。
たけおの部屋で着替えてから連れてこられたのは、ホテルのラウンジで見るからに高級そうなレストランである。金は親から貰ってあるだろうけど、場違いな気もする。
「親父に、士龍と一緒に飯を食うって言ったら、ここがうまいって教えてくれたから、さ」
「あ、おう。見るからにすごそうだもん。つか、たけお誕生日だって教えてといてよ。俺、なんも用意できなかったじゃん」
ラウンジにいるの周りの視線を感じつつ、レストランへと入っていくと、蝶ネクタイのウェイターが頭をさげてくる。
「……あ、まあ、言いにくくてさ、誰かに聞いたのか」
「遠慮するなっての。モトミヤが教えてくれた」
ウェイターに名前を告げたたけおの後ろを歩きながら文句を言うと、首を横に振る。
少しはアピールくらいしてもいいんだろうに。
知るは一時の恥って、じいちゃんも良く言っているし、言うのも同じとか思うのだけど。
案内された席に座ると、たけおの赤い髪と俺の髪はやはり目立つ。
ふたりして身長は高いし、たけおも少し伸びたみたいだから180には届いたようだし。
「今夜は雪になるって言っていた。バイクでこなくて正解だな」
コートを脱いでウェイターに荷物を取り出してから渡すと、たけおは視線を俺に向ける。
「そもそも…………帰らねえし」
「この上に部屋とったとか?ベタだな」
「まさか。バイト代でどうにもならないから、近くのビジホだけど」
無理をしたのかなって感じがしたので、どうにも水臭いなと思い、椅子に座る。
「相談しろよ。誕生日だって知ってたら、俺が用意したのによ」
「士龍、バイトしてねえじゃん」
「してるよ」
「え、何してんだよ。ケンカと受験勉強しかしてるイメージねえよ」
「外じゃねえし。じいちゃんの手伝いで、書類作ったりとか資料まとめたりとか」
じいちゃんは県会議員なので、喧嘩ばかりに担ぎ出される俺を心配して、バイトといって色々作業を手伝わされていた。秘書もいるが、秘書より俺のが手際がいいと褒めてくれたりもした。
俺はじいちゃん子なのだ。
「じゃあ、来年は……士龍に用意してもらうよ」
「まかせとけ。あ、そうだ、コレはクリスマスプレゼント」
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