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愛裸武勇
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誰もいなくなった部屋にひとりで居るのがつらくてたまらず、グラグラする視界の中で、着れそうな服を取り出して羽織り、何も考えずに松葉杖を手にして飛び出した。
虎王に拒否されたくないと恐くて仕方がなくっている。それくらいなら、自分からどっか遠くにいこう。
杖につかまりながら、外に出たがまだ薄ら寒い。虎王と一緒にいたいのに、辛すぎて逃げたい。
「…………あるけ、ねえ……」
声すら俺のものじゃないみたいでガラガラで汚い。
歩いて帰るのは厳しいな。虎王のバイクを借りようか。
もう一度、部屋に戻って玄関を見るとバイクの鍵があった。コンビニは歩いてすぐなので、歩いて行ったのだろう。
鍵を持って駐輪場までなんとかたどりつく。
虎王は優しいから。俺を責めない。あんまり責められてもつらいけど、優しいのも辛くなってくる。
虎王のバイクに触れると、ひんやりと冷たく感じる。
数え切れないほどタンデムしてもらったなあと思い出すと、また何だか辛くなってくる。視界が霞む。ぼんやりとしながら、なんだか自分がバカみたいで笑えてくる。
身体動かないし、これじゃバイクにも乗れない。身体が寒さで冷たくなってくる。
いきなりグイッと掴み起こされると、マジ切れした虎王の顔が近くに見えた。
「士龍!こんなとこで、なにして、んだよ!バカ野郎!」
ぐいっと引きおこされて襟首を掴まれているのは把握できる。見つかってしまったなと思い、嘘の笑いを貼り付ける。
「……みつかっちゃった……なんだろう?かくれんぼ、かな」
ぐわっと顔が真っ赤になって、虎王が怒りの形相になるのをぼんやりと見返す。
「バカ言ってンじゃねェよ、オマエ、ふざけんな!」
「ほんとは……たけおのバイク盗んで家にかえろうかなって。でも、のれねえの、くらくら、ふらふらしちってさ」
「そりゃ熱あんだし、怪我してんだぞ。乗れても事故るぞ。死ぬ気かよ、バカしてんなよ」
ぐっと抱き寄せられて何だか安心して力が抜ける。虎王が探しに来てくれたのが、純粋に嬉しかった。
「……そんなにオレと一緒にいたくねえかよ。そりゃ、無様にまた捕まって、何度もアンタに助けられて不甲斐なくて。オレは、アンタに何もしてやれてねえけど……だから……」
違う。一緒にいたい。ずっと一緒にいたいのだ。
答えの代わりに首を横に振って虎王の頬を何度も撫でる。
「ちが、う。そんな、顔すんな。いっしょに、いたい。けど、たけおが、優しいからさ、なんか、おれ、だめなんだよ」
虎王は、俺が言った言葉に涙目になっている。
泣かしたくはないんだ。泣かないでほしい。
「そんな、顔するな…………」
手を伸ばして少し濡れた目尻を撫でると、グイッと引き寄せられて抱きしめられる。
「たけおは……やさしくて…………だから、だめなんだ」
俺の気持ちは伝わるのだろうか。
抱き返す虎王の腕は、更に優しくて不安になる。
「士龍、部屋に戻ろう。ここじゃ風邪をひく」
虎王は転がった松葉杖を拾うと、俺の重たい体を抱えてエレベーターへ向かう。
俺は虎王と一緒に居てもいいのだろうか。
エレベーターに乗り、何とか気持ちを伝えようと口を開いた。
「俺、もっと……平気にしてられるって、思ってたんだ」
ぽつりぽつりと話を始めると、虎王は口を挟まずに聞いてくれている。
身体を支えたまま部屋に戻り、虎王は寝室に入るとベッドにおろして汗ばんだ服を脱がそうとする。
「……俺、オマエの前で、他のやつのちんこ欲しいと、言ったし、実際、セックスもしてしまった」
虎王は、少しハッとしたような表情を浮かべたが俺の髪に手を触れて、身体の汗をタオルでゆっくりと拭う。
「オレは見てない」
「…………聞いていた、だろ」
見ないで欲しいという頼みは聞いてくれていたようだ。
だけど無かったことにはできない。
「聞こえていたけど、そもそもオレが捕まったせいだろ」
「だから、とにかく、やさしくは、されたくねえんだよ」
俺の言葉に、虎王は分からないという表情を浮かべて首を横に振ると、手をそっと掴んでくる。
「なあ、オレ以外の奴にちんこハメさせやがったド淫乱って、いたぶられたいの?後でお仕置きしてやるって言っただろう」
少し熱をもった言葉が耳元で響いて、そこには変わらない虎王の熱量を感じて俺は振り返る。
「違う。そうじゃない。もう、オマエは俺を抱いてはくれねえかなとか、思ったら苦しくて、わけわかんなくなった」
虎王はそんなことありえないなんて呟いて、触れた手で汗ばんだ肌をそっと愛撫してくる。
「こっちはケガ人に無理はさせたくねえから、ガマンして手を出さなかったのに、変な勘ぐりするなよ」
虎王に拒否されたくないと恐くて仕方がなくっている。それくらいなら、自分からどっか遠くにいこう。
杖につかまりながら、外に出たがまだ薄ら寒い。虎王と一緒にいたいのに、辛すぎて逃げたい。
「…………あるけ、ねえ……」
声すら俺のものじゃないみたいでガラガラで汚い。
歩いて帰るのは厳しいな。虎王のバイクを借りようか。
もう一度、部屋に戻って玄関を見るとバイクの鍵があった。コンビニは歩いてすぐなので、歩いて行ったのだろう。
鍵を持って駐輪場までなんとかたどりつく。
虎王は優しいから。俺を責めない。あんまり責められてもつらいけど、優しいのも辛くなってくる。
虎王のバイクに触れると、ひんやりと冷たく感じる。
数え切れないほどタンデムしてもらったなあと思い出すと、また何だか辛くなってくる。視界が霞む。ぼんやりとしながら、なんだか自分がバカみたいで笑えてくる。
身体動かないし、これじゃバイクにも乗れない。身体が寒さで冷たくなってくる。
いきなりグイッと掴み起こされると、マジ切れした虎王の顔が近くに見えた。
「士龍!こんなとこで、なにして、んだよ!バカ野郎!」
ぐいっと引きおこされて襟首を掴まれているのは把握できる。見つかってしまったなと思い、嘘の笑いを貼り付ける。
「……みつかっちゃった……なんだろう?かくれんぼ、かな」
ぐわっと顔が真っ赤になって、虎王が怒りの形相になるのをぼんやりと見返す。
「バカ言ってンじゃねェよ、オマエ、ふざけんな!」
「ほんとは……たけおのバイク盗んで家にかえろうかなって。でも、のれねえの、くらくら、ふらふらしちってさ」
「そりゃ熱あんだし、怪我してんだぞ。乗れても事故るぞ。死ぬ気かよ、バカしてんなよ」
ぐっと抱き寄せられて何だか安心して力が抜ける。虎王が探しに来てくれたのが、純粋に嬉しかった。
「……そんなにオレと一緒にいたくねえかよ。そりゃ、無様にまた捕まって、何度もアンタに助けられて不甲斐なくて。オレは、アンタに何もしてやれてねえけど……だから……」
違う。一緒にいたい。ずっと一緒にいたいのだ。
答えの代わりに首を横に振って虎王の頬を何度も撫でる。
「ちが、う。そんな、顔すんな。いっしょに、いたい。けど、たけおが、優しいからさ、なんか、おれ、だめなんだよ」
虎王は、俺が言った言葉に涙目になっている。
泣かしたくはないんだ。泣かないでほしい。
「そんな、顔するな…………」
手を伸ばして少し濡れた目尻を撫でると、グイッと引き寄せられて抱きしめられる。
「たけおは……やさしくて…………だから、だめなんだ」
俺の気持ちは伝わるのだろうか。
抱き返す虎王の腕は、更に優しくて不安になる。
「士龍、部屋に戻ろう。ここじゃ風邪をひく」
虎王は転がった松葉杖を拾うと、俺の重たい体を抱えてエレベーターへ向かう。
俺は虎王と一緒に居てもいいのだろうか。
エレベーターに乗り、何とか気持ちを伝えようと口を開いた。
「俺、もっと……平気にしてられるって、思ってたんだ」
ぽつりぽつりと話を始めると、虎王は口を挟まずに聞いてくれている。
身体を支えたまま部屋に戻り、虎王は寝室に入るとベッドにおろして汗ばんだ服を脱がそうとする。
「……俺、オマエの前で、他のやつのちんこ欲しいと、言ったし、実際、セックスもしてしまった」
虎王は、少しハッとしたような表情を浮かべたが俺の髪に手を触れて、身体の汗をタオルでゆっくりと拭う。
「オレは見てない」
「…………聞いていた、だろ」
見ないで欲しいという頼みは聞いてくれていたようだ。
だけど無かったことにはできない。
「聞こえていたけど、そもそもオレが捕まったせいだろ」
「だから、とにかく、やさしくは、されたくねえんだよ」
俺の言葉に、虎王は分からないという表情を浮かべて首を横に振ると、手をそっと掴んでくる。
「なあ、オレ以外の奴にちんこハメさせやがったド淫乱って、いたぶられたいの?後でお仕置きしてやるって言っただろう」
少し熱をもった言葉が耳元で響いて、そこには変わらない虎王の熱量を感じて俺は振り返る。
「違う。そうじゃない。もう、オマエは俺を抱いてはくれねえかなとか、思ったら苦しくて、わけわかんなくなった」
虎王はそんなことありえないなんて呟いて、触れた手で汗ばんだ肌をそっと愛撫してくる。
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