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愛多憎生
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全部潰しても、多分壊れたものは元には戻らない。
虎王がバイクで戻ってくるなり、不安そうな表情を浮かべて俺を覗き込んでくる。
「士龍……無理して、倒れんなよ」
「大丈夫。セックスなんか俺にしてみりゃ軽い運動だし。全然良くないし気持ちわりいのにさ、カラダは何で反応しちまうんだろうな……」
目を瞑っていて欲しいという願いは聞いてくれていただろうか。それでも耳は塞げなかっただろう。
「…………んな風に言うな」
「ああ。別に、俺はそんなカラダだしどうでもいいんだけど、オマエに泣かれんのはツライ」
虎王のバイクのタンデムに跨り、背中に抱き着くと虎王の身体が少し震えるのが分かる。
こうやって抱きしめること、これからもできるかなんてわからない。
「そんな身体には、後でお仕置きしてやるからな」
虎王は俺にヘルメットをかぶせると、強がっているのか前を向いたままそう告げた。
また、触れてくれるのだろうか。
あまり自信はないけど、俺は少しだけ安心して腰にまわした腕を強く引き寄せ、背中にヘルメットをくっつけてお仕置きして欲しいと頷いた。
小倉の家は建設業なので、実家の裏にでかいバラック小屋がある。大体夜は小倉の取り巻きたちが、そこに集まっているのは知っていた。
喧嘩やなんかがあったときは特に人数を集めて朝まで騒いでいるのも、耳にしていた。
さっき虎王を待っている間にナオヤに電話したら、さっき大人数でバラックに入ってったのを確認したらしい。
数は大体三十人前後だとのこと。
ナオヤたちも、虎王の仲間で軽傷のヤツらを集めてきたらしく、予想どおり五十人は集まったみたいだ。
数ならこっちの方が上だが、通報されないように手早くうまくやらないとならない。
虎王には強がってはみたが、俺の体力は限界に近い。今ある激しい怒りだけが原動力だ。
道郎が俺らのバイクを見つけて、軽く手をあげる。
まさにここが踏ん張りどころだ。男はここぞって時に踏ん張らなきゃならねえって、よくじいちゃんも言ってたしな。
「士龍、無事か!?半殺しにされてねえか?」
道郎は、バイクが停まると駆け寄ってくる。
「だいじょぶ、ケガはあんましてねえよ」
虎王の腰から腕を離して、松葉杖をついて地面に降りる。
「士龍さん!!無事なんすか!」
半ば不思議な顔をして、直哉も駆け寄ってくる。
「んー、暴行より性的暴行されたんだ。まあ、輪姦されたって、女の子じゃないし、そんなにダメージないんだけど。この俺をツブしたつもりになられてんのが、アタマにきてんだけど」
道郎も直哉も唖然と俺を見返し、呆れた表情を浮かべた。
「士龍なあ、もっと恥ずかしがるとか、泣くとかしろよ。いや、泣かれても困るんだけど。なんか、富田が可哀想だろ」
「士龍さんの羞恥心は遠足してるんですよ」
「俺は別にいいんだけど、確かにたけおが悲しい顔するのがイヤだからさ。悪いけど、撮られたデータともどもぶっ潰したいんだけど、力貸して」
ちらと虎王を見遣ると、二人と同様呆れた表情をして俺の方を眺めている。
「別にいいとか、言うな。もっと嫌がってくれねえと、本気で俺が切なくなる」
「じゃあ、通報されないように、一気に片付けて逃げるぞ。三年は卒業かかってんだし」
だから、絶対に警察沙汰にするわけにはいかない。
バラックの入口へ向かう順路と、足音をたてずに合図で一気に攻め込むこと、奴等のスマホを奪って壊す。中にあるパソコンも壊すことを優先する。
ケガは軽傷ですませるため、狙いは下腹部から下肢。ついでに私怨ではあるが幹部のちんこは殴っても蹴っても踏んでも良しとした。
「突入後十五分で一斉にはけるからな。時間ちゃんと見ていくぞ」
俺は集まったメンツ全員の前に立つと、バラックの入り口を指さした。
虎王がバイクで戻ってくるなり、不安そうな表情を浮かべて俺を覗き込んでくる。
「士龍……無理して、倒れんなよ」
「大丈夫。セックスなんか俺にしてみりゃ軽い運動だし。全然良くないし気持ちわりいのにさ、カラダは何で反応しちまうんだろうな……」
目を瞑っていて欲しいという願いは聞いてくれていただろうか。それでも耳は塞げなかっただろう。
「…………んな風に言うな」
「ああ。別に、俺はそんなカラダだしどうでもいいんだけど、オマエに泣かれんのはツライ」
虎王のバイクのタンデムに跨り、背中に抱き着くと虎王の身体が少し震えるのが分かる。
こうやって抱きしめること、これからもできるかなんてわからない。
「そんな身体には、後でお仕置きしてやるからな」
虎王は俺にヘルメットをかぶせると、強がっているのか前を向いたままそう告げた。
また、触れてくれるのだろうか。
あまり自信はないけど、俺は少しだけ安心して腰にまわした腕を強く引き寄せ、背中にヘルメットをくっつけてお仕置きして欲しいと頷いた。
小倉の家は建設業なので、実家の裏にでかいバラック小屋がある。大体夜は小倉の取り巻きたちが、そこに集まっているのは知っていた。
喧嘩やなんかがあったときは特に人数を集めて朝まで騒いでいるのも、耳にしていた。
さっき虎王を待っている間にナオヤに電話したら、さっき大人数でバラックに入ってったのを確認したらしい。
数は大体三十人前後だとのこと。
ナオヤたちも、虎王の仲間で軽傷のヤツらを集めてきたらしく、予想どおり五十人は集まったみたいだ。
数ならこっちの方が上だが、通報されないように手早くうまくやらないとならない。
虎王には強がってはみたが、俺の体力は限界に近い。今ある激しい怒りだけが原動力だ。
道郎が俺らのバイクを見つけて、軽く手をあげる。
まさにここが踏ん張りどころだ。男はここぞって時に踏ん張らなきゃならねえって、よくじいちゃんも言ってたしな。
「士龍、無事か!?半殺しにされてねえか?」
道郎は、バイクが停まると駆け寄ってくる。
「だいじょぶ、ケガはあんましてねえよ」
虎王の腰から腕を離して、松葉杖をついて地面に降りる。
「士龍さん!!無事なんすか!」
半ば不思議な顔をして、直哉も駆け寄ってくる。
「んー、暴行より性的暴行されたんだ。まあ、輪姦されたって、女の子じゃないし、そんなにダメージないんだけど。この俺をツブしたつもりになられてんのが、アタマにきてんだけど」
道郎も直哉も唖然と俺を見返し、呆れた表情を浮かべた。
「士龍なあ、もっと恥ずかしがるとか、泣くとかしろよ。いや、泣かれても困るんだけど。なんか、富田が可哀想だろ」
「士龍さんの羞恥心は遠足してるんですよ」
「俺は別にいいんだけど、確かにたけおが悲しい顔するのがイヤだからさ。悪いけど、撮られたデータともどもぶっ潰したいんだけど、力貸して」
ちらと虎王を見遣ると、二人と同様呆れた表情をして俺の方を眺めている。
「別にいいとか、言うな。もっと嫌がってくれねえと、本気で俺が切なくなる」
「じゃあ、通報されないように、一気に片付けて逃げるぞ。三年は卒業かかってんだし」
だから、絶対に警察沙汰にするわけにはいかない。
バラックの入口へ向かう順路と、足音をたてずに合図で一気に攻め込むこと、奴等のスマホを奪って壊す。中にあるパソコンも壊すことを優先する。
ケガは軽傷ですませるため、狙いは下腹部から下肢。ついでに私怨ではあるが幹部のちんこは殴っても蹴っても踏んでも良しとした。
「突入後十五分で一斉にはけるからな。時間ちゃんと見ていくぞ」
俺は集まったメンツ全員の前に立つと、バラックの入り口を指さした。
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