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愛多憎生
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しおりを挟む俺はポケットからスマホを取り出すと、倉庫前のドラム缶の蓋を開いて上にコートを脱いで中に挟んで、ドラム缶の中に入れた。
リンチに合うのは最初から分かっているので、できるだけ軽装にしておいたほうがいい。
襲撃をかける段になった時に、スマホが壊されてしまったら連絡がとれなくなる。
ガタガタと軋む扉を開いて倉庫に入ると、一斉に振り向く。
人数的には二十数人といったところだ。小倉派は三年が多いので、危ない橋は渡りたくないと拒否している者もいるんだろう。
金崎のグループは数名いるように思えるが、この辺は虎王のところを潰して、次のトップにするなどと誘ったのだろう。
俺は周りを見渡して、縛られて転がされている虎王の姿に目を止めた。
「やっぱり、1人できたか。士龍ちゃん」
峰は、つかつかと俺の前に歩いてくる。
「なんだよ。1人でこいっつったのはオマエだろ?」
奥の方で小倉はなんだか浮かない顔をして立っている。
あんまり、リンチとか受けたことがらないから、耐えられるかわからない。
痛いのは嫌いなのですぐに泣きを入れてしまうかもしれないが、それも格好悪いな。
松葉杖を引きずって、ゆっくりと歩みを寄せて、峰の顔を睨みおろす。
「ウチのショーちゃんの腹にナイフをぶちこんだんだって」
「将兵の奴が、俺を邪魔するから仕方なくだ。こっちも肋骨折られるし、ボロボロにやられたんだからよ」
「喧嘩に光りモン使ってんじゃねぇよ」
将兵は素手でやり合っただろうが、こいつは武器を使ったのだ。
「まあ、士龍ちゃん。まあ、おちつけよ俺らはオマエとタイマン張る気はない。こっちは人質がいるんだぜ」
峰は、ズルッと引き寄せた虎王の頭を掴んで、俺をにやりと笑いながら勝ち誇った表情を浮かべた。
虎王の表情は無く、俺をちらと見るとダメだと言うように首を横に振った。
卑怯な手だけど、これは弱みをみせる方が悪い。
三年の教室にわざわざ自慢しに行った俺の自業自得ってやつなんだろう。
あの時は虎王とよりを戻して浮かれていて、何も考えちゃいなかった。
足元で転がっている虎王に視線を落とす。口元には思っていたように電球を咥えさせられている。
「人質をとって、俺をどうしてえって?見た通りの怪我人だ。抵抗すらできねえ」
ずっと杖をついて立っているのも疲れるので、近くのコンテナに腰を降ろす。
「ちょ、待って、士龍ちゃん。いま、そこで座るとこ?」
峰の方がなんか焦っているが、松葉杖があっても怪我人が立っているのはしんどい。
まあ、将兵のことでかなり俺も怒ってるけど、人質もいるし、こっちから仕掛けるわけにいかない。
「俺は手術したてだから体力ないからね。タイミング最悪よ。峰ちん。下半身まだ麻酔切れてないしさ」
松葉杖で峰を指し、床コンクリートを杖でトントンと叩く。
峰は隙がない様子で、転がっている虎王を眺めている。
「人質がいても、士龍ちゃんは上から目線だよねぇ。リンチな、いやあ、惜しいなあ、リンだけあってる。リンカンしちゃおうかなって集まったんだけどね」
峰の言葉に俺は本気で驚いて、峰を凝視する。
あんまり物事に驚かない方なんだか、そんな風に言うのは虎王だけかと思ってた。
「さすがの能天気な士龍ちゃんも、ビビったか、キャハハ」
「ん、マジでビビるわ。まさか俺、今、モテ期なのか?」
思わず心の声を呟くと、今度は峰が目を見開いた。
下で転がっている虎王でさえ、驚いた顔で俺を見上げて信じられないと言った表情を浮かべている。
あ、あれか。もしかしたら、くっぷくとかいうやつか。
最初の虎王の動機と一緒だったかな。
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