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愛多憎生
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朝まで意識を失っていたのか、目を覚ますと入院用の仕度をしたバッグがベッドの横に着替えと一緒に置いてある。
身体もいつものように綺麗に拭かれている。
「ん、こういうのはスキがねーよな」
置いてある服に着替えると、松葉杖が近くになかったので脚を引きづりながらバッグを持って部屋を出た。
「あ、士龍、起きた?呼んでくれたらちゃんと支えるし、頼れって。メシ、コンビニのオニギリだけど食べるだろ?」
ソファの上でテレビを見てたのか、虎王は立ち上がって俺の荷物を奪うと腰に腕を回す。
「まったく歩けなくはないし。あと、用意とかありがとな」
「いや、昨夜はオレがスイッチ入っちまってムリさせたし」
支えられてダイニングのイスに座ると、にっこりと満面の笑顔を向けられ思わず見惚れてしまう。
ん、朝からカッコイイな。俺の弟は。
いつも皺寄せてねーで、こんなふうにしてたらマジでモテモテなんじゃねえかな。
ビニールを剥いて渡されたオニギリを口に運びながら、へらへらしてると、虎王は俺の顔をじっと見つめてくる。
「何日くらい入院するんだっけ?あんまり長い期間だと、看護婦とかに狙われるし」
「とりあえず、二泊三日。それ以上は、出席日数やべえから。あとは、リハビリ通えってさ」
看護婦なんて気にしないで良いのにと思いながら、シャケのオニギリをむしゃむしゃと食べる。
「そうか。まあ、毎日病院には行くから」
「っても、三日だけだぞ。まあ、嬉しいなァ。虎王にお見舞いされちゃうとか。すげえ深い愛感じちゃう」
照れてちょっとチャラけた口調で言うと、虎王は俺からオニギリを奪って唇を押し付けてくる。
オニギリよりこっちの方が美味かったりする。
チュッチュッと唇を吸いあげて、俺は虎王の頬を撫でる。
愛されてる幸せって、こんなんだよな。
卒業前で混乱する時期に入院するのは、すこし心配になるのだが、虎王がいるから大丈夫だろう。
思わず勃起しそうになって、慌てて唇を離す。
「よし、行くか。連れてって、ダーリン」
甘えるように腕を支えに立ち上がると、背後から肩に両腕をかけて抱き寄せる。
「バッ、重いって!シロウ」
文句を言いながらも、耳元が真っ赤でなんだか可愛い。
始終へらへらしながら、俺は虎王にタンデムで病院まで連れていって貰った。
「綺麗に貫通してるね。士龍君はいつも危ないケガばかりで、佐々木のおじさんは心配だな」
父の病院で手術を担当する整形外科の医者は、小さいころからの顔見知りだったので、俺は少し安心していた。
いつも、骨折とか陥没とか刺し傷とかばかりで世話になっているので俺にとっては主治医みたいなものだ。
「佐々木のおじさん、俺、これで歩くの大丈夫そう?」
神経は痛めてないって、父は言ってたので多分問題はないと思う。
「筋肉の内側の神経次第だが、院長が初見して見落とすわけないだろうから大丈夫だと思うよ。痛みはどうかな?」
俺の不安を消すように佐々木先生は言ってくれる。
ついつい、佐々木のおじさんとか呼んでしまうけど、結構有名な名医でもある。
「ん、痛み止めのんでるから大丈夫みたい」
傷の具合を見る先生は、少しだけ真剣な表情をして、
「まあ手術して、無理せずにリハビリすれば元のように動かせると思うよ。オペの準備はできてるからね。それと、あんまり危険なことをしちゃダメだよ」
「分かってるよ。喧嘩とかも……好きでやったことはないし」
先生に告げると、すぐに手術の準備をすると言われて手術用の服を手渡される。
カーテンのある部屋の中で緑色の服に着替える。
なんとか着替えて出てくると、既にストレッチャーが用意されていて先生が腰を支えてくれ、俺はよじのぼる。
「全身麻酔と局所麻酔どっちがいいかな?」
自分の脚を切られるのは、あまり見たくない。でも医者になるなら見ておいた方がいいのかな。
スプラッターは嫌なので、内科医になろう。
「全身麻酔でいいよ。眠っちゃうのほうがいいかも」
ストレッチャーに横になると、看護士さんが手術室に運んでくれる。
腕をまくられて、ぷちっと点滴を打たれる。
天井からは光が強く当たり、だんだん、頭の中までぼんやりしてきて、視界が狭くなってゆっくりと俺は目を閉じた。
身体もいつものように綺麗に拭かれている。
「ん、こういうのはスキがねーよな」
置いてある服に着替えると、松葉杖が近くになかったので脚を引きづりながらバッグを持って部屋を出た。
「あ、士龍、起きた?呼んでくれたらちゃんと支えるし、頼れって。メシ、コンビニのオニギリだけど食べるだろ?」
ソファの上でテレビを見てたのか、虎王は立ち上がって俺の荷物を奪うと腰に腕を回す。
「まったく歩けなくはないし。あと、用意とかありがとな」
「いや、昨夜はオレがスイッチ入っちまってムリさせたし」
支えられてダイニングのイスに座ると、にっこりと満面の笑顔を向けられ思わず見惚れてしまう。
ん、朝からカッコイイな。俺の弟は。
いつも皺寄せてねーで、こんなふうにしてたらマジでモテモテなんじゃねえかな。
ビニールを剥いて渡されたオニギリを口に運びながら、へらへらしてると、虎王は俺の顔をじっと見つめてくる。
「何日くらい入院するんだっけ?あんまり長い期間だと、看護婦とかに狙われるし」
「とりあえず、二泊三日。それ以上は、出席日数やべえから。あとは、リハビリ通えってさ」
看護婦なんて気にしないで良いのにと思いながら、シャケのオニギリをむしゃむしゃと食べる。
「そうか。まあ、毎日病院には行くから」
「っても、三日だけだぞ。まあ、嬉しいなァ。虎王にお見舞いされちゃうとか。すげえ深い愛感じちゃう」
照れてちょっとチャラけた口調で言うと、虎王は俺からオニギリを奪って唇を押し付けてくる。
オニギリよりこっちの方が美味かったりする。
チュッチュッと唇を吸いあげて、俺は虎王の頬を撫でる。
愛されてる幸せって、こんなんだよな。
卒業前で混乱する時期に入院するのは、すこし心配になるのだが、虎王がいるから大丈夫だろう。
思わず勃起しそうになって、慌てて唇を離す。
「よし、行くか。連れてって、ダーリン」
甘えるように腕を支えに立ち上がると、背後から肩に両腕をかけて抱き寄せる。
「バッ、重いって!シロウ」
文句を言いながらも、耳元が真っ赤でなんだか可愛い。
始終へらへらしながら、俺は虎王にタンデムで病院まで連れていって貰った。
「綺麗に貫通してるね。士龍君はいつも危ないケガばかりで、佐々木のおじさんは心配だな」
父の病院で手術を担当する整形外科の医者は、小さいころからの顔見知りだったので、俺は少し安心していた。
いつも、骨折とか陥没とか刺し傷とかばかりで世話になっているので俺にとっては主治医みたいなものだ。
「佐々木のおじさん、俺、これで歩くの大丈夫そう?」
神経は痛めてないって、父は言ってたので多分問題はないと思う。
「筋肉の内側の神経次第だが、院長が初見して見落とすわけないだろうから大丈夫だと思うよ。痛みはどうかな?」
俺の不安を消すように佐々木先生は言ってくれる。
ついつい、佐々木のおじさんとか呼んでしまうけど、結構有名な名医でもある。
「ん、痛み止めのんでるから大丈夫みたい」
傷の具合を見る先生は、少しだけ真剣な表情をして、
「まあ手術して、無理せずにリハビリすれば元のように動かせると思うよ。オペの準備はできてるからね。それと、あんまり危険なことをしちゃダメだよ」
「分かってるよ。喧嘩とかも……好きでやったことはないし」
先生に告げると、すぐに手術の準備をすると言われて手術用の服を手渡される。
カーテンのある部屋の中で緑色の服に着替える。
なんとか着替えて出てくると、既にストレッチャーが用意されていて先生が腰を支えてくれ、俺はよじのぼる。
「全身麻酔と局所麻酔どっちがいいかな?」
自分の脚を切られるのは、あまり見たくない。でも医者になるなら見ておいた方がいいのかな。
スプラッターは嫌なので、内科医になろう。
「全身麻酔でいいよ。眠っちゃうのほうがいいかも」
ストレッチャーに横になると、看護士さんが手術室に運んでくれる。
腕をまくられて、ぷちっと点滴を打たれる。
天井からは光が強く当たり、だんだん、頭の中までぼんやりしてきて、視界が狭くなってゆっくりと俺は目を閉じた。
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