竜攘虎搏 Side Dragon

怜悧(サトシ)

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密月陽炎

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「シロウちゃん、シロウちゃん、早く起きなさーい。お友達がお迎えにきたわよ」
昨夜父に会えたのがよほど嬉しかったのか、かーちゃんは朝から激しくテンションが高い。
 普段もものすごく他のかーちゃんより若く見えるが、今朝は格段にツヤツヤしてキラキラとして見える。
 階段の手すりに掴まりながら、やっとこ体を引きずり居間に降りると、所在なさげな表情で虎王が玄関に立っている。
 学校を休むのかと、メールが来たので単位やべーからなんとか行くと返したら、迎えにいくと返事がきた。
 まあ、虎王のバイクのが速いし安全だ。
 怪我して歩いていたら、戦功が欲しいヤツに狙われる言われた。まあ、確かにそうかもしれないな。
「悪いな。迷惑かける」
「わざわざ、お迎えにきてくれて助かるわ」
「元はと言えば、オレが……」
 かーちゃんに余計なことを言いかける虎王の口を、俺はさっと手で塞いだ。
「たけおが、変な方向にボール飛ばしちゃったからな。フットサルしてて、ボール追いかけて転んだんだよ」
 さらっとかーちゃんに言い訳をすると、虎王の肩に掴まり、いってきますと家を出る。
「その金髪で、いい子ちゃんのフリってかなり無茶だろ」
「英語がうまくなるために、金髪にしてんだよ……」
「ちょ、待て待て、それ通じるのか!」
「ぶは、マジなわけねーだろ。思い出せよ、俺の髪の毛は地毛だよ。脱色してるけどね」
「そうだよな。鷹満の髪も金髪だし。……オレだけ黒髪か」
 ふうと吐息を吐き出して、バイクに跨り俺にメットを渡す。
「オマエは赤いぞ?」
「これは、染めてんだよ!」
 右脚から跨ろうとして、痛めた左足の親指に荷重がかかり思わず呻く。
「をい、痛むのか?…………体重はオレに掛けろよ」
「大丈夫、だ。ちと、体重のかけかた間違えた。まあ、ギュッと抱きついとくぜ」
 密着して匂いを嗅ぐと、なんだかムラムラしてくる。
 どんだけ、俺ってば節操なしなんだ。
「やっべ、ムラムラするー」
 思わず耳元で囁くと、カッと首筋の肌を赤く染めて走りだす。へっへ、虎王め、照れ屋さんだな。
 ギュッと身を寄せてわざと股間を擦りつけると、怒ったように振り返り、
「運転ミスるから、やめろって!!…………学校終わるまで我慢してろよ」
 意外過ぎるマジメな答えにマジメか、と突っ込んで、グイッと腰を抱き寄せた。
 浮かれすぎかもしれないが、ようやく取り戻したんだ。

 …………恋なんて、そういうもんだろ?

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