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青天霹靂
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父と話す時は基本的にドイツ語でしか話さない。
明らかに動揺して俺を見て、上半身につきまくった虎王のキスマークに焦った表情を浮かべてる。
「虎王、どういうことだ!」
父は虎王の胸ぐらをぐいと掴むと、問いただすように激しい口調で言葉を投げつける。
頭が混乱している。これは、一体どんな事態なのだろう。
察することは出来るのに、考えたくないと脳が拒否してる。
「だから、さっき恋人きてるッて言っただろ。………まあ、男だけど。そういうアンタこそ、士龍と知り合いなのか」
「何を言ってるか分かってるのか?……士龍は私の息子だ。オマエらは兄弟なんだぞ!…………それ以前に、お前たちは男同士じゃないか!すぐに別れなさい」
俺と虎王が、異母兄弟で、だから……。
だから、俺は……どうしなきゃいけないんだっけ。
すぐに、別れなさいと父は言っている。
だから……。
「知るかよ!どれが、アンタのタネとか、そうじゃねえとか、ちげーとかどうやったって、分かるかよ!ふざけんな!勝手に人の恋愛に口出してくんじゃねえ!」
「それが父親に対する態度か!」
ああ、虎王がそうなのか。父が唯一愛する息子で、俺がそうなりたくてなれなかった存在。
父が虎王と別れろというのであれば、俺はそうしなくてはいけない。
なんで、神様ってやつはそんないらない偶然とかを俺に突きつけるのだろう。
俺は昔から知っていた。父には、別の家庭があることも、俺に会ったことがない弟がいることも知っていた。
俺が父の幸せを奪ってしまったこと。
全部、分かっていた。
だから、俺は彼からもう、これ以上奪うなんてできない。
振り上げた父の手の平が虎王の頬に決まるところで、横入りして頬に受ける。
反対側から飛んでくる虎王の拳を、自分の掌で捕まえるように受け止めた。
「士龍……」
愕然とした表情で俺を見返す虎王と、きまり悪そうな父の表情に必死に作り笑いを浮かべる。
「とーちゃん、心配しないで。わかったよ。…………大丈夫だよ、俺はたけおと、ちゃんと別れるから」
「何言ってんだよ、…………士龍」
焦ったような虎王の表情が歪んでいるのが目に入るが、虎王にどう言われても俺は別れないといけない。
「たけおも、とーちゃん殴っちゃダメだぞ。朝飯用意すっから、とーちゃんも食べてッて」
「オレは別れないからな!」
虎王が必死で叫ぶのに、心がつきんつきんと突き刺さるような痛みを感じる。
好きなのに別れたくないのは、俺も一緒だ。だけど、そんな感情を今すぐに消さなくちゃいけない。
全部が間違えだったと思い込まなくちゃいけない。
「俺が終わりって言ったら終わりなんだ。わかれよ。さすがの俺だって…………弟とセックスはできねえよ」
弟とセックス……なんて考えたこともなかった。
父親が大切にしていなかったら、俺なら気にしなかったかもしれない。
虎王には悪いけど、彼の大事なものならば、別れるしかない。
一緒にドイツで暮らしていた時も、仕事が終わってもたまにしか家にこない。
休暇がとれると、すぐに日本に帰ってしまう。だけど、それが彼の精一杯なんだって分かっていた。
父にはたかれた頬がじんじんと頬が痛い。
彼に俺は愛されていないのはわかっている。
だけど、ほんのちょっとでもこれ以上は憎まれたくはない。
辛い時ほど平常心でいなくちゃいけないと言い聞かせながら、俺はキッチンへと向かった。
明らかに動揺して俺を見て、上半身につきまくった虎王のキスマークに焦った表情を浮かべてる。
「虎王、どういうことだ!」
父は虎王の胸ぐらをぐいと掴むと、問いただすように激しい口調で言葉を投げつける。
頭が混乱している。これは、一体どんな事態なのだろう。
察することは出来るのに、考えたくないと脳が拒否してる。
「だから、さっき恋人きてるッて言っただろ。………まあ、男だけど。そういうアンタこそ、士龍と知り合いなのか」
「何を言ってるか分かってるのか?……士龍は私の息子だ。オマエらは兄弟なんだぞ!…………それ以前に、お前たちは男同士じゃないか!すぐに別れなさい」
俺と虎王が、異母兄弟で、だから……。
だから、俺は……どうしなきゃいけないんだっけ。
すぐに、別れなさいと父は言っている。
だから……。
「知るかよ!どれが、アンタのタネとか、そうじゃねえとか、ちげーとかどうやったって、分かるかよ!ふざけんな!勝手に人の恋愛に口出してくんじゃねえ!」
「それが父親に対する態度か!」
ああ、虎王がそうなのか。父が唯一愛する息子で、俺がそうなりたくてなれなかった存在。
父が虎王と別れろというのであれば、俺はそうしなくてはいけない。
なんで、神様ってやつはそんないらない偶然とかを俺に突きつけるのだろう。
俺は昔から知っていた。父には、別の家庭があることも、俺に会ったことがない弟がいることも知っていた。
俺が父の幸せを奪ってしまったこと。
全部、分かっていた。
だから、俺は彼からもう、これ以上奪うなんてできない。
振り上げた父の手の平が虎王の頬に決まるところで、横入りして頬に受ける。
反対側から飛んでくる虎王の拳を、自分の掌で捕まえるように受け止めた。
「士龍……」
愕然とした表情で俺を見返す虎王と、きまり悪そうな父の表情に必死に作り笑いを浮かべる。
「とーちゃん、心配しないで。わかったよ。…………大丈夫だよ、俺はたけおと、ちゃんと別れるから」
「何言ってんだよ、…………士龍」
焦ったような虎王の表情が歪んでいるのが目に入るが、虎王にどう言われても俺は別れないといけない。
「たけおも、とーちゃん殴っちゃダメだぞ。朝飯用意すっから、とーちゃんも食べてッて」
「オレは別れないからな!」
虎王が必死で叫ぶのに、心がつきんつきんと突き刺さるような痛みを感じる。
好きなのに別れたくないのは、俺も一緒だ。だけど、そんな感情を今すぐに消さなくちゃいけない。
全部が間違えだったと思い込まなくちゃいけない。
「俺が終わりって言ったら終わりなんだ。わかれよ。さすがの俺だって…………弟とセックスはできねえよ」
弟とセックス……なんて考えたこともなかった。
父親が大切にしていなかったら、俺なら気にしなかったかもしれない。
虎王には悪いけど、彼の大事なものならば、別れるしかない。
一緒にドイツで暮らしていた時も、仕事が終わってもたまにしか家にこない。
休暇がとれると、すぐに日本に帰ってしまう。だけど、それが彼の精一杯なんだって分かっていた。
父にはたかれた頬がじんじんと頬が痛い。
彼に俺は愛されていないのはわかっている。
だけど、ほんのちょっとでもこれ以上は憎まれたくはない。
辛い時ほど平常心でいなくちゃいけないと言い聞かせながら、俺はキッチンへと向かった。
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