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満願成就
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直哉たちに頭を下げる。虎王は、離反組だからわだかまりはでかいのは分かっている。
「なんで、富田なんですか?」
直哉はまだ釈然としないのか、俺と虎王の顔を交互に見返して睨みつけている。
「ンなの、知るか。分かって恋愛なんかできんだろ、とりあえずそういうことだから」
感情の動きなんかは、全くわからない。そんなもんはわかるわけがない。いつの間にか欲しくなっていたのだ。
俺は、限界とばかりに立ち上がりここから出ようと、虎王の腕をグイッと引いた。
「ちゃんと話すっったのはアンタだろ?中途半端すんなよ」
面倒になったのがバレたのか、虎王は俺の肩を掴んで椅子に座らせる。
「だってよ、すぐ納得してくれっと思ったし、ナオヤすら味方してくんねえしよ」
俺がぶうたれると、直哉は眉を下げて困ったような顔をして俺を見返す。
「俺らは、士龍サンの味方ッスよ。この赤髪が本当に気に食わないだけです」
「だいたい富田、オマエ、ウチを抜けたクセにどのツラ下げて、士龍サンと付き合うとか!」
幹部たちがワイワイと虎王を誹謗するのが、なんだか悔しいし、哀しい気持ちにもなる。
「悪ィ、俺がコイツんこと可愛いって思ってンだ。もちろんオマエらのことも大事だけどさ。ホンキなんだ……」
言っても人の恋心など理解はしてもらえないと思う。全部本当のことを話したら、きっと逆上するだろう。
視線をちらっと虎王に向けると、俺の言葉に驚いているような表情を浮かべている。
「そりゃさあ、いつもタイマンしろとか煩く絡んでくるのウゼェなァって最初は思ってたケドよ。今は違うんだ」
「……士龍サン、騙されてますって。コイツはテッペンとるのにウチと争わなけりゃ楽なはずだし」
直哉は言うが、争いたくないのは俺の方だ。戦いたがっていたのは虎王で、俺はなんとか避けたくて仕方がなかった。
「俺は元々、テッペンなんか欲しくないよ。面倒だしね、向いてないよ」
「士龍がテッペンとるなら、オレははいらねえし」
最初からそうしたかったのだと虎王は続けたが、胡散臭そうな顔のメンバーは信じてはいないだろう。
「トップなんかになったら、全校生徒の喧嘩にでていかなくちゃならなくなるだろ。それはできない。俺は、オマエらを守るので精一杯なんだよ」
これ以上停学記録は更新できないし、三年になったら将来のことも少しは考えなくてはいけないと思う。
「わかりました。士龍サン。……富田、士龍サンになんかあったら、俺らは全てをかけて潰しにいくからな……」
直哉が捨て台詞のような言葉を叩き付けると、他の連中を引き連れて空き教室をぞろぞろと出て行く。
「熱いなあ、二年生」
「ショーへー、オマエは先に富田を殴ってるからね。オマエはアイツらのこと言えないからね」
道郎と将兵はぐだぐだ言い合いをして、まあがんばれよと俺の背中を叩く。
「そんなにイイちんこって、オマエさあ、富田になにされたのよ。後で詳しく教えろよな」
耳元で将兵が囁くのに、俺はなんだか恥ずかしい気持ちになって、その背中をグーで殴った。
「教えない。言ったら減るからヤダ」
「ケチ、相談に乗ってやったじゃねえか」
「もう、ショーへーもシローをからかうなって。行くぞ」
道郎と将兵はお幸せにと手を振って教室を出て行く。なんだかんだ言っても、俺が男と付き合おうがそんなに気にしない奴らで良かった。
リンチとかで、男同士のセックスは良く聞く話だけれども、恋愛となるとそんなに聞かない。だから、直哉たちが怒っていたのもそういう理由もあるのだとは思う。
気持ち悪いとか言われたら、流石に立ち直れないような気もしたしな。
「たけお、お許し出たし、一緒に帰るぞ」
虎王の腕を引くと、空き教室から出て駐輪場へと向かった。
「なんで、富田なんですか?」
直哉はまだ釈然としないのか、俺と虎王の顔を交互に見返して睨みつけている。
「ンなの、知るか。分かって恋愛なんかできんだろ、とりあえずそういうことだから」
感情の動きなんかは、全くわからない。そんなもんはわかるわけがない。いつの間にか欲しくなっていたのだ。
俺は、限界とばかりに立ち上がりここから出ようと、虎王の腕をグイッと引いた。
「ちゃんと話すっったのはアンタだろ?中途半端すんなよ」
面倒になったのがバレたのか、虎王は俺の肩を掴んで椅子に座らせる。
「だってよ、すぐ納得してくれっと思ったし、ナオヤすら味方してくんねえしよ」
俺がぶうたれると、直哉は眉を下げて困ったような顔をして俺を見返す。
「俺らは、士龍サンの味方ッスよ。この赤髪が本当に気に食わないだけです」
「だいたい富田、オマエ、ウチを抜けたクセにどのツラ下げて、士龍サンと付き合うとか!」
幹部たちがワイワイと虎王を誹謗するのが、なんだか悔しいし、哀しい気持ちにもなる。
「悪ィ、俺がコイツんこと可愛いって思ってンだ。もちろんオマエらのことも大事だけどさ。ホンキなんだ……」
言っても人の恋心など理解はしてもらえないと思う。全部本当のことを話したら、きっと逆上するだろう。
視線をちらっと虎王に向けると、俺の言葉に驚いているような表情を浮かべている。
「そりゃさあ、いつもタイマンしろとか煩く絡んでくるのウゼェなァって最初は思ってたケドよ。今は違うんだ」
「……士龍サン、騙されてますって。コイツはテッペンとるのにウチと争わなけりゃ楽なはずだし」
直哉は言うが、争いたくないのは俺の方だ。戦いたがっていたのは虎王で、俺はなんとか避けたくて仕方がなかった。
「俺は元々、テッペンなんか欲しくないよ。面倒だしね、向いてないよ」
「士龍がテッペンとるなら、オレははいらねえし」
最初からそうしたかったのだと虎王は続けたが、胡散臭そうな顔のメンバーは信じてはいないだろう。
「トップなんかになったら、全校生徒の喧嘩にでていかなくちゃならなくなるだろ。それはできない。俺は、オマエらを守るので精一杯なんだよ」
これ以上停学記録は更新できないし、三年になったら将来のことも少しは考えなくてはいけないと思う。
「わかりました。士龍サン。……富田、士龍サンになんかあったら、俺らは全てをかけて潰しにいくからな……」
直哉が捨て台詞のような言葉を叩き付けると、他の連中を引き連れて空き教室をぞろぞろと出て行く。
「熱いなあ、二年生」
「ショーへー、オマエは先に富田を殴ってるからね。オマエはアイツらのこと言えないからね」
道郎と将兵はぐだぐだ言い合いをして、まあがんばれよと俺の背中を叩く。
「そんなにイイちんこって、オマエさあ、富田になにされたのよ。後で詳しく教えろよな」
耳元で将兵が囁くのに、俺はなんだか恥ずかしい気持ちになって、その背中をグーで殴った。
「教えない。言ったら減るからヤダ」
「ケチ、相談に乗ってやったじゃねえか」
「もう、ショーへーもシローをからかうなって。行くぞ」
道郎と将兵はお幸せにと手を振って教室を出て行く。なんだかんだ言っても、俺が男と付き合おうがそんなに気にしない奴らで良かった。
リンチとかで、男同士のセックスは良く聞く話だけれども、恋愛となるとそんなに聞かない。だから、直哉たちが怒っていたのもそういう理由もあるのだとは思う。
気持ち悪いとか言われたら、流石に立ち直れないような気もしたしな。
「たけお、お許し出たし、一緒に帰るぞ」
虎王の腕を引くと、空き教室から出て駐輪場へと向かった。
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