竜攘虎搏 Side Dragon

怜悧(サトシ)

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意志薄弱

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 富田君は、ギュッと抱きしめて背中を何度も撫でて落ち着かせるように、唇をチュッチュと吸いあげる。
「ぶ、っとんでる、、の、みそ、」
 このまま脳みそも何もかも壊れてしまえばいいんだけど。
 ごめん、限界かもしれない。
 ちゃんと脅迫されてあげたかったけど、苦しくて死にそう。
「やらしくて、えろい顔」
 ぐちゃぐちゃに濡れた俺の体をタオルでぬぐいながら、ゆっくりとペニスを引き抜く。
 脚を開いたまま引き抜かれる抜かれる切なさに、俺は深く息を吐き出す。

 もっ、と、ほしい。

「…………きもち、いい、から……な」
 俺は気持ちいいことは好きだから。
 だから、もう終わりにしなきゃいけない。
 …………富田君とエッチをするのは、好きだけど。
 好きになりすぎて、心が苦しいから早くやめないとだ。
 苦渋の想いを張り巡らせている俺の顔を覗きこんで、富田君は何かを吹っ切るように口を開いた。
「……あ、あのさ……眞壁……」
 優しい言葉とか、今は聞きたくねえな。
 もう決心が鈍るのは、いやだ。これ以上気持ちをもっていかれるのは勘弁だ。
 俺は富田君の言葉を遮るように手を押し当てて、呼吸をととのえるように深く息を吐き出して告げた。
「………これ、つづけたら、おれ、ダメそ。なあ………ぜんぶ、バラしていいから………もう、おしまい……にしよ」
 動画をバラ撒くならバラまいていい。
 派閥なんか、俺は好きでやってはない。
 頼まれたから、 預かってるだけで、誰が離れていこうと関係ない。
 みんなにいいカッコしてるだけで、俺は薄情な人間だ。
「な、んで?」
 面食らったような富田君の表情は、暗く翳る。
 俺は富田君から身体を離すと、ベッドヘッドに置いてあるタバコの箱を手に取ってくわえた。
「だって……もう、おれ、たけおのちんこなしで、イケなくなりそ。そしたら、おれのせっくすらいふが悲惨だろ」
 実際、もうそうなってるかもしれない。
 悲惨なセックスライフの始まりだ。我慢きかなかったら、ゲイバーとか通っちまうかな。
 唇に咥えたタバコに火をつける。
 ずっと禁煙してたけど、落ち着かないからまた復活しちまうかも。
「……イヤだ」
「だって、オマエ、俺のこと嫌いだろ。俺のせっくすらいふ、責任とれるの?」
 半笑いを浮かべて、すぱーと煙を富田君の顔にわざと吐き出した。

 実際笑うしかないだろう。
 自分を嫌っていて便所代わりにしている相手を好きになったって報われっこない。
 俺を嫌いなヤツを好きになるとか、本当に無理すぎる。
 苦しいし、それでも身体を繋ぐのはつらい。
 快楽に負けて負けまくって、ズルズルと引きずった結果がこれだ。
 匂い嗅ぐだけで、条件反射で勃起するくらいだ。
「嫌いだけど。でも、アンタを精液便所にするって言った」
「だから、全部バラせって。動画でもなんでもばらまいても、別にいい。そんなの脅迫にならねえよ」
 脅迫材料なんか、最初から俺には無意味だ。
 イライラして、手に取った灰皿で殴りたくなってしまう。
「脅迫が無意味なら、じゃあ、なんで、アンタは…………いままで続けてたんだ」
 富田君は必死の形相で意味が分からないと食いついてくる。

 もう、いやだ。

 ……面倒臭いのも辛いのも、もう、やなんだ。

「そんなの……オマエとのセックスが気持ち良かったから。そんだけだよ」
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