36 / 169
意志薄弱
36
しおりを挟む
奢りだと言われてちょっと良さげなイタリアンレストランに連れ込まれて、普通に飯を食っているのだが、なんだか違和感だ。
いつもイライラしたような富田君の表情は、この間からひどく落ち着いていて、普通にイケメンに見える。
好戦的にイラついている表情は、野生動物みたくて近寄りづらい感じだったんだけどな。
なんだか少しは好意をもたれているような錯覚をしそうになってしまう。
身体を繋げているからなのかもしれない。実際に俺もそうなんだから、きっと富田君もそうなのだろう。
まやかしみたいなもんで、いつ消えるかわからない、そんな頼りない気持ちだ。
今日にでも最後だと言われそうな、不安はある。
苛まれそうな気持ちもどうにかしたい。
「こないだの朝飯の…………。その、礼だ」
富田君は、あまり口数は少ないほうで、しゃべらないイメージだけど、色々話してきて少しづつ分かってきた。
元々脅迫とかしてくるタイプでもない。
今更だけど、ホントになんでこんな真似してるのかも、本当に謎すぎる。
1回だけだと思ったし。
俺は海鮮スパゲティをくるくるとフォークに絡ませながら、富田君の顔をちらと見やる。
「朝飯気に入ったのか。また、作るよ…………」
仕上げにエビを刺して口に運ぶ。
まただなんて、フラグを残したりして、我ながらあざといかもしれない。
こんなん、デートみたいだとか思う自分もどうかしてるし、話題が思いつかなくて居心地悪い。
「アンタ、料理うまいのな」
「ひとりで食うのも、うまいほうがいいし。ラップしとけば、かーちゃん食うしな」
「ああ、そういや…………オマエのおふくろさん、前に会ったけどさ、すげえ美人な」
「……え、もしかして俺に飽きたからかーちゃんとか……?それは待て。俺はお前をとーちゃんとは呼べない」
思わず混乱しながらスパゲティをぐるぐると回してると、おいおい巻きすぎと手を掴まれる。
「美人とは言ったけど。熟女好きじゃないし年下好きでもないから。こないだから変な心配すんなよ。……襲ったりとか……しねえから」
もごもごと言うけど、まあ、普通にそんなことしないだろうな。手を掴まれたとこから、熱がじっとりと伝わってくる。
「まあ、卑怯モンのオレが言っても信憑性ないけどさ」
自嘲するように呟く富田君に、なんだか俺の心のどこかが疼くように痛む。
卑怯者だと言いながら、脅迫をやめないのは、何故だろう。
暇つぶしというわけでもなさそうだけど、考える度に深みにはまって頭がぐるぐるする。
「……いや、ふつーにかーちゃんはねえよ。なに、マジに答えてんだよ」
思わず巻きすぎたスパゲティを口に含んで、モシャモシャと食べて会話をかきまぜた。
「そうだな…………あと、あー、あのよ……コレ」
ゴソゴソと富田君は、ポケットから小さい袋を取り出して俺に手渡す。
「……なに?」
「…………運気の良くなるっていう、なんかが彫ってある……腕輪だ。アンタに似合うかと思って」
袋をあけるとシルバーのバングルが入っていた。なんだか頬が緩むのを我慢しながら腕を通す。
なんだか、変な感じだけど、嬉しくてすぐに腕に嵌めた。
「運気ね?…………ありがと」
富田君に貰っただけで、すごく運がイイことなんだけどな。
ちらっと富田君の顔を見ると、照れた表情で視線を逸らした。
「…………おう…………」
もしかして、少しは……期待してもいいのだろうか。
そんな気持ちになって、心臓の動悸がどうにかなりそうなくらいバクバクしていた。
いつもイライラしたような富田君の表情は、この間からひどく落ち着いていて、普通にイケメンに見える。
好戦的にイラついている表情は、野生動物みたくて近寄りづらい感じだったんだけどな。
なんだか少しは好意をもたれているような錯覚をしそうになってしまう。
身体を繋げているからなのかもしれない。実際に俺もそうなんだから、きっと富田君もそうなのだろう。
まやかしみたいなもんで、いつ消えるかわからない、そんな頼りない気持ちだ。
今日にでも最後だと言われそうな、不安はある。
苛まれそうな気持ちもどうにかしたい。
「こないだの朝飯の…………。その、礼だ」
富田君は、あまり口数は少ないほうで、しゃべらないイメージだけど、色々話してきて少しづつ分かってきた。
元々脅迫とかしてくるタイプでもない。
今更だけど、ホントになんでこんな真似してるのかも、本当に謎すぎる。
1回だけだと思ったし。
俺は海鮮スパゲティをくるくるとフォークに絡ませながら、富田君の顔をちらと見やる。
「朝飯気に入ったのか。また、作るよ…………」
仕上げにエビを刺して口に運ぶ。
まただなんて、フラグを残したりして、我ながらあざといかもしれない。
こんなん、デートみたいだとか思う自分もどうかしてるし、話題が思いつかなくて居心地悪い。
「アンタ、料理うまいのな」
「ひとりで食うのも、うまいほうがいいし。ラップしとけば、かーちゃん食うしな」
「ああ、そういや…………オマエのおふくろさん、前に会ったけどさ、すげえ美人な」
「……え、もしかして俺に飽きたからかーちゃんとか……?それは待て。俺はお前をとーちゃんとは呼べない」
思わず混乱しながらスパゲティをぐるぐると回してると、おいおい巻きすぎと手を掴まれる。
「美人とは言ったけど。熟女好きじゃないし年下好きでもないから。こないだから変な心配すんなよ。……襲ったりとか……しねえから」
もごもごと言うけど、まあ、普通にそんなことしないだろうな。手を掴まれたとこから、熱がじっとりと伝わってくる。
「まあ、卑怯モンのオレが言っても信憑性ないけどさ」
自嘲するように呟く富田君に、なんだか俺の心のどこかが疼くように痛む。
卑怯者だと言いながら、脅迫をやめないのは、何故だろう。
暇つぶしというわけでもなさそうだけど、考える度に深みにはまって頭がぐるぐるする。
「……いや、ふつーにかーちゃんはねえよ。なに、マジに答えてんだよ」
思わず巻きすぎたスパゲティを口に含んで、モシャモシャと食べて会話をかきまぜた。
「そうだな…………あと、あー、あのよ……コレ」
ゴソゴソと富田君は、ポケットから小さい袋を取り出して俺に手渡す。
「……なに?」
「…………運気の良くなるっていう、なんかが彫ってある……腕輪だ。アンタに似合うかと思って」
袋をあけるとシルバーのバングルが入っていた。なんだか頬が緩むのを我慢しながら腕を通す。
なんだか、変な感じだけど、嬉しくてすぐに腕に嵌めた。
「運気ね?…………ありがと」
富田君に貰っただけで、すごく運がイイことなんだけどな。
ちらっと富田君の顔を見ると、照れた表情で視線を逸らした。
「…………おう…………」
もしかして、少しは……期待してもいいのだろうか。
そんな気持ちになって、心臓の動悸がどうにかなりそうなくらいバクバクしていた。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
反抗期真っ只中のヤンキー中学生君が、トイレのない課外授業でお漏らしするよ
こじらせた処女
BL
3時間目のホームルームが学校外だということを聞いていなかった矢場健。2時間目の数学の延長で休み時間も爆睡をかまし、終わり側担任の斉藤に叩き起こされる形で公園に連れてこられてしまう。トイレに行きたかった(それもかなり)彼は、バックれるフリをして案内板に行き、トイレの場所を探すも、見つからず…?
俺たちの××
怜悧(サトシ)
BL
美形ドS×最強不良 幼馴染み ヤンキー受 男前受 ※R18
地元じゃ敵なしの幼馴染みコンビ。
ある日、最強と呼ばれている俺が普通に部屋でAV鑑賞をしていたら、殴られ、信頼していた相棒に監禁されるハメになったが……。
18R 高校生、不良受、拘束、監禁、鬼畜、SM、モブレあり
※は18R (注)はスカトロジーあり♡
表紙は藤岡さんより♡
■長谷川 東流(17歳)
182cm 78kg
脱色しすぎで灰色の髪の毛、硬めのツンツンヘア、切れ長のキツイツリ目。
喧嘩は強すぎて敵う相手はなし。進学校の北高に通ってはいるが、万年赤点。思考回路は単純、天然。
子供の頃から美少年だった康史を守るうちにいつの間にか地元の喧嘩王と呼ばれ、北高の鬼のハセガワと周囲では恐れられている。(アダ名はあまり呼ばれてないが鬼平)
■日高康史(18歳)
175cm 69kg
東流の相棒。赤茶色の天然パーマ、タレ目に泣きボクロ。かなりの美形で、東流が一緒にいないときはよくモデル事務所などにスカウトなどされるほど。
小さいころから一途に東流を思ってきたが、ついに爆発。
SM拘束物フェチ。
周りからはイケメン王子と呼ばれているが、脳内変態のため、いろいろかなり残念王子。
■野口誠士(18歳)
185cm 74kg
2人の親友。
角刈りで黒髪。無骨そうだが、基本軽い。
空手の国体選手。スポーツマンだがいろいろ寛容。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる