俺たちの××

怜悧(サトシ)

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社会人編 season2

第7話→sideY

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オレは、弁護士がもっている東流が書きなぐった紙を見やって嘆息をついた。
これじゃあ心配すぎて先に死ぬわけには、死んでもいかないな。
こんな東流をひとりにするだなんて、不安すぎて死ねない。

「…………これは……。あー、あの彼は本気なんですかね」
鞍馬も東流が出ていった扉を眺めて、漸く言葉をしぼりだすと呆れたように呟いた。
「まあ、本気ですね。これじゃああまりに心配なので、これにこのマンションを加えた形で分与する遺書を作成します。それ以外を、あの子に分配でいいですよ。養育費は、きっちり毎月払います」
「…………あなたは一望君を養育するつもりは、ない。と?それでよろしいのかな」
一つ一つ確認するかのように、鞍馬は言葉を切りながら、非難するような目を俺に向ける。
そんな目をされても仕方がないが、薄情なのは間違ってはいない。
「…………僕の仕事は、ご存知のように、海外にほとんど行って仕事をしています。この家には、東流もいますが、彼も長距離の仕事が入ると往復で1週間帰ってこないこともあります。まだ、小学生の一望君を1人で家に置いておくほうが、無理な話になりますよ」
「確かに施設の方が、そこは安心ですね…………。ただ、心情的には彼にはかなり辛い思いをさせることになりますよ」
鞍馬は、俺の薄情な部分をつついてくる。
もし、彼を産んだ彼女がオレに相談したならば、中学生のオレでも産まないでほしいと言っただろう。

それくらい、オレは薄情だ。

勝手に産んで、勝手に彼女は死んだ。
それは、最終的に責任がオレにふりかかる。
確かに中学生とはいえ責任感のない行為をしたのは、オレだ。

その責任をとる気持ちはある。

「……日本に帰った時には、彼と顔を合わすようにします。ただ、彼をこれから育てるのは、いまの生活的にはとても難しいです」
鞍馬は、オレの答えにひどく残念そうな表情を浮かべた。
そして、深い吐息をはくと、養育費にかかる費用を書面で提示した。
月20万円。
少しぼったくり金額とも思ったが、払えない額ではない。オレはその金額に同意してサインをした。



「たっでーまあ、まだ、話つかねーの?」
バタバタとリビングに入ってきた東流は、体を動かしたせいか、肌を紅潮させている。後ろから入ってきた一望も同様に少し汗をかいているようだった。
「話は、さっきついたよ…………」
「ふうん?」
オレの表情を見た東流は、何かを悟ったのか少し眉根を寄せた。
そして、ちらと鞍馬を東流は見やり答えを求めるように首を傾げる。
「日高さんはお仕事で家をあける期間が長いので、一望くんを1人にさせられないのでね。施設か里親を探すことにいたしました。きちんと、養育費も充分に支払ってくれるので、すぐにいい里親が見つかりますよ」
一望の肩をとんと叩いて、鞍馬はカバンを手にすると、オレを一瞥すると、
「では、また検査の結果でもお渡しする時に」
一望はちらとオレを見上げたが、頭をさげて何も言わずに俯いた。

「…………ヤス、おい?それ、マジに言ってんの?」

静かな声だが、東流はオレに対してかなり怒っているようだ。
これも、予想どおりだ。
「…………じゃあ、トール。あえて聞くけどオマエとオレがいないこの部屋に、あの子をひとりきりとかにできるのか?」
オレが問い返すと、東流はムッとしたまま軽く舌打ちをして、肩をそびやかす。
「わかったよ…………ヤス。仕方ねえな……」
返事に納得してくれたのかと思うと、ニヤッと笑い弁護士の後ろにいた一望の肩を掴む。

「決めた。コイツは俺が育てる。俺が仕事を辞める」

東流はオレにまるで宣戦布告のように、告げた。
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