俺たちの××

怜悧(サトシ)

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番外編

卒業旅行 →side T 【完】

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康史が調べたところ、ハブとマングースの戦いは動物愛護の法律かなんかで何年も前にできなくなったらしい。
仕方がないので、レンタカーを借りて俺達は釣りができるスポットまでやってきた。
6人乗りだといつも乗っている軽自動車と感覚が違うのか、康史はなんだか悪戦苦闘しているようだ。

「マジで?康史、溺れたのかよ」
「死ぬとこだった…………まあ、トールいたから大丈夫だったけどさ」
誠士の言葉にむっとしながらも、康史は頷く。
俺は助手席に乗りながら、真っ青な空と流れていくガジュマルの木を眺めている。
「こっちは、昨日は女の子はつれないし、東山はイケメンなのにマジメだし」
「慣れてないんだよ。俺はサッカーしかしてこなかったからな」
誠士の言葉に東山は反論する。
「中学校の時は東山君は女の子にモテモテだったよね。俺、知ってる」
士龍までも東山いじりに参加はしてくる。
「え、そうだったかな。女の子は親切だったが…………」
「ちょ、鈍感かっ!」
2人でツッコミいれていて、2人が仲良くなって良かったと思う。
まあ、誠士も東山も部活の主将なだけあって、かなりのコミュ力がある。
士龍も何十人もの派閥の頭みたいだし、ちゃんと周りを見てノリをあわせている。
コミュ力ねえのは俺だけかな。
「ねー、トール君も眠たい?昨日結構遅かったよね」
「あ、ああ。ちっとねみい…………」
「俺らが海岸から帰ったの1時過ぎだったし」

あ?
海岸って…………見られたのか?
「シロ、ちょいまて…………オマエら、ゆうべ海岸行ってたの?」
「へへ、やっぱし、外でヤるの開放的だからさー。狙ってたとこに行ったら2人でヤッてたから、俺ら別のとこ行ったんだよ」
軽いノリで答えられて、俺はぱっかんと口を開く。
開放的って。
そんなノリでいいのか。
ちらと虎王を見ると、顔を真っ赤にして頭を手で覆っている。
誠士は肩を揺らしておかしそうに笑っている。
昔から思ってはいたが、あからさますぎるだろ。帰国子女だからなのか。
「シロ、そういうのは、隠せ」
「え、そうなの?」
思わず忠告するが、意味をわかってはいないようだ。
士龍に見られたのかと思うとなんとなく恥ずかしくなる。
「ヤスは知ってたのか?」
「最中に、シロに手を振られたから。気づいてたけど、オレも気にする余裕はなかったかな」
運転しながら、薄ら笑い浮かべて横目で俺を見るのは、面白がっているのだろう。

まあ、いいか。

旅の恥はかきすてみたいな言葉もあるし。
俺は深々と息を吐いて、窓の外に再び視線を移した。



結局、人数分の魚はつれなかったが、その場で買った食材と一緒にバーベキューを楽しんだ。
康史と士龍でほとんど用意してくれたので、味付けも最高だった。
たぶん、これから先こんなゆっくり旅行なんかこれるかわからねえ。
いま、ちゃんと満喫しねーとな。
「ヤッちゃん、俺、来月入ったら予備校いくけど、やっぱり駅前のとこがいいかな?」
「ああ、まあシロなら大丈夫だろうけど、入校選抜あるからある程度は勉強してった方がいいよ」
焼いた肉をつまみながら、士龍は康史に相談している。
本気で進学するつもりらしい。
「真壁君は中学校の時はあまり授業でてないけど、常にトップだったよね」
東山は思い出したように言う。
「え、そうなの?!なんで東高にいったんだ?」
「………………テッペンとるため、だろ」
ニヤリと笑い虎王がからかうように言いながら、士龍が焼いた肉をつまむ。
東山がビビッた表情をするのを、士龍はちがうちがうと手を横に振る。
「まさか、トール君が北高に行くとか思わないし!」
「オレの存在を忘れてたのね。トールは記憶力だけは半端ないから。受験で丸呑みさせたよ。シロってばヒドイ」
「ちょっと考えたらそうだけど。ヤッちゃんは一高行くって思ってたしな」
「オレがトールと離れるわけないだろ。トールの内申点だって、先生にかけあっだし。トールが東高いくならオレもそっちに行きますって」
「それ、脅迫でしょ」
俺は、康史の言葉に少しにやけたくなるのを我慢して、目の前の魚の塩焼きをモグモグと食べる。
いい塩加減でうまい。
「真壁君、進学してどうするんだ?」
「医者になる」
東山の言葉に簡単に言ってのけるが、やっぱり病院の息子だしな。カエルの子はカエルなんだな。
親の稼業はつがんでもいいとは思うが、思うところがあるのだろう。
「なんか、スゲエな。東高のアタマが医者になるとか」
誠士は驚きを隠せないようだ。
「だって、俺、たけおのナースすがたを……………ごふっ…」
「するか、ボケッ」
隣に座っている虎王に激しく頭を叩かれている。
まあ、あれだな。一緒に仕事もしてえってことだな。
もっと、長く康史といる選択もあったとはおもうが、行き先を失敗したとは思わない。

だから、一緒に暮らすことを選択したわけだし。

「なーに考えてんの?」

康史が俺を覗きこむ。
青い空に、綺麗な顔がうつりこむ。
俺は軽く頭を振って、その首に腕を巻き付けて唇を軽くくっつける。

「センセー、トール君がヤッちゃんにいかがわしいことしてまーす」
笑いながら士龍にからかわれて、ハッと笑い返し軽くブイサインをしてやる。
時が過ぎても、こんな時間がずっとすごせたら、いい。

そのためなら、俺は何を引き換えにしても構わねえから。


 【卒業旅行 END】

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