俺たちの××

番外編

卒業旅行→side Y

タコスを食べた後、東山と誠士はナンパに励むと別行動になった。
まあ、オレらがいたらナンパの邪魔になるしな。

とりあえず部屋に戻ってから、東流の行きたいってたマングースのなんかがあるか確認するかな。

｢ヤッちゃん、折角だから俺らで海岸にでもいかない？｣
士龍が、オレの肩を叩いて顔を覗きこんでくる。
外国人のDNAは、半端ねえな。
あんなにちっさかったのに、ぐんと大きくなって見下ろされてる。
オレだってそんなに身長は低くないのに。
｢海、入るのか？｣
ちらと東流を見ると、目をキラキラさせて入りたいアピールを視線でしている。
夏に入れなかったしなあ。
｢あ、トール君は海に入りたそうだね。明日じゃ、きっと体力なくなってるかもしんないから、今日入る？｣
意味深に笑ってオレを見遣る士龍に、苦笑を浮かべて見返す。
まあ、分かっていらっしゃる。
勿論、家にいるほどのことはしないけどな。
｢ヤス、いきたい｣
｢まあ。いいよ。後で大変なのはトールだけどね。別にいいよね？｣
訳が分からないといった表情をするので、からかいたくなる。
｢じゃ、着替えようぜ。ホテルのプライベートビーチにいこう｣
ちらりと見た砂浜が綺麗に見えたし、オレも遊びたい気持ちがある。

だけどね。
部屋に2人で戻ると、オレは東流の腕をくいっと引く。
｢乳首のピアス、外さないと。いやらしすぎるだろ？｣
耳元で囁くと、東流は一瞬わけがわからないとキョトンとする。
理解させようと、胸元に手を這わせて乳首に触れると、やっと理解したように、目を見開き唇を開こうとするのを指先でとどめおく。

｢後で、ちゃんとハメ直してやるからさ｣

息を吹きかけながら、軽くくすぐるように触れると、切なそうな吐息を漏らす。

｢それ、ピアスだけハメんじゃないだろが｣
欲情を抑え込むように視線をさまよわせて、オレの体を軽く突き放し、ばさばさとシャツを脱ぐ。
｢あ、トール。抜かなくていいの？もう、そっちパンパンじゃん。海パンもっこりはやべえよ｣
からかうように指摘すると、ハッと軽く笑うと、頭をガンと壁へと打ち付ける。
｢ちょ、やめろって！！壁壊れる！！｣
ホテルを壊すわけにはいかないと、東流の体をホールドした。

｢大丈夫だ、収まった｣

いやいやいや、収め方違うだろう。

｢だいじょうぶ、じゃ、ねえからね？おい、たんこぶ出来てねえかよ？｣

｢こんくらいじゃ、キズつかねーよ｣

とりあえず、東流をからかいすぎるのは、やめようと心から思った。


海パンに着替えて、東流のピアスを取ってやってから、プライベートビーチ側のホテルの出口へ向かった。

士龍たちはすでに砂浜で、ボールや浮き輪に空気をいれて待っていた。

｢あは、あんま遅いから1発かましちゃってるかと思ったよ！｣
士龍は歯に衣着せぬもの言いで、笑いながらボールをとんとんと弾いて言う。
｢ああ、ごめんね。トールのチクピー外すのにちょたと時間かかったんだわ｣
オレが東流を指差して説明すると、ああーと、理解したように士龍は東流を眺めた。

｢やっぱし、トール君のカラダって、メチャ鍛えてあるから凄い綺麗だなー｣
｢シロ、性的な視線投げるの禁止ね｣
オレは士龍の額を軽く小突いて、ダメだよーとゆびでバツをつくる。
｢え！まって、まってそんなんじゃないし！！滅多なこと言わないでよ｣
焦る士龍は、背後でむっすりしている虎王を気にしているようだ。
他の人なんかをあまり気にしない性格だが、そこは恋人となるとやっぱり違うんだなと、改めて思う。

東流はどこ吹く風でオレらの言い合いを気にせず、風に吹かれながらザクザクと砂浜を歩いていく。

｢日高さんさあ、あの人を抱いてるんだろ？その気になるのか？｣
虎王は不思議そうに、東流の背中を見ながら問いかける。
｢康史でいいよ。反対に、トールにしかホントの意味でその気にならないよ。タケオ君はどうなの？どっちがどうかわかんないけどさ｣
まあ、士龍の性格からいって、自分からガッといくような感じじゃないしな。
それ言うなら、君もたいがいだからね。
昔の士龍ならまだしも。
｢あ。ああ。士龍は、ガタイとか関係なくて、なんかさあ、可愛いから、さ｣
少し俯きがちに低い声で呟くのは、なんとなく照れているんだろう。

｢それは、オレも一緒だよ。オレにとっては、トールがめちゃくちゃ可愛いからね｣

ふと笑い返すと、虎王はそんなもんだよなと言葉を返す。

でっかいボートをすでに膨らませたのかドヤ顔で担いで手招く士龍の方に、駆け出していく。
オレも、東流の方に近寄り後ろからぐっと抱きついた。

｢なあなあ、トール、海で一緒に溺れないか？｣

東流は、少し訝しい顔をしてオレを見返すと、しばらく意図を探る表情を浮かべてから、ふっと笑い返す。

｢そのお誘いに乗るのは、まだはええな。あっちのちっさい島まで、俺に遠泳でついてこれたら考えてやろうか？｣

指差したのは、500メートル以上先にみえる岩に似た島のようなものだった。