俺たちの××

番外編

卒業旅行 →side Y

カートを担いでずんずんとオレから逃げていく東流の背中を見て、ホントに可愛いなあとほくそ笑む。

｢あんま、からかってやるなよ。見てて笑えるけど、可哀想だからな｣
背後からぼそりと諌めるように誠士に言われて、舌を出す。
すげえ可愛い反応するし、からかいたくなるのは仕方ないだろ。
｢ヤッちゃん、相変わらずだねえ｣
くすくす笑いながら、士龍はオレの横に並ぶ。
そういや、小学生の時も似たようにトールをからかってたよな。
その時は、士龍がやめなよって言ってよく諌めてたっけ。
懐かしい気持ちになってくる。
｢シロこそ、弟くんとどうなの？やっぱり、夜はしっぽりすんだろ？｣
｢ヤッちゃん、オヤジくさい｣
｢康史は、顔は王子様だけど、中身はエロ親父だからな｣
横から誠士も突っ込んでくる。
昔からのダチには、やっぱり弱いかもしれない。全部握られている。
｢まあ、夜は俺らも激しくダンシングしちゃうんだぜ｣
ニヤニヤと士龍は笑いながら中指をたてる。
こいつもたいがいだな。
｢士龍………｣
弟の方がはあっとため息をつく。
｢ダンシングって……それはないだろ…………｣
｢すいません。士龍は、色々頭の中がお散歩してるんで｣
虎王は頭を軽くさげながら、めっと額を叩いている。
｢確かに、むかしから四方八方にネジが飛んでたな｣
｢え、トール君にはかなわないし！｣
モノレールの改札で待ってる東流を指さす士龍を見て、どっちもどっちと思う。
まあ、配線ズレてるしこの容姿なので、東流も士龍を天使だと呼んでたのだと思うけど。
｢ヒガシ、シロの中学ん時はどうだったの？｣
｢入学したころは、凄い綺麗なハーフがいるって噂だったよ。そのうちヤベーから近寄るなってなってって、気がついたらウチの総番だったから｣
｢ハーフじゃないよ、クォーターだよ。俺すっごく可愛いかったから、身を守るうちにそうなっちゃったんだよ。可愛いのも大変なんだよ。ね、ヤッちゃん｣
いきなり振られて戸惑いながら答えて、モノレールの乗車券を買って東流の方に向かう。
｢ま、まあな。腕っぷし強くするしかねーしな。オレにはトールがずっといたけど｣
だから、多分士龍ほど絡まれることはなかったし、士龍も苦労したんだろうなと共感する。
｢すっごく可愛いって、自分で言うんだ｣
誠士は少し驚いたような、どこか可哀想なモノを見る表情をする。
あの可愛らしさは、もう今の面影ではないからなあ。
オレは携帯のどこかに保存しといた、３人で映した小学生の時の画像を見せる。
｢な、な、なにこれ｣
「オレとトールは分かるだろ、こっちの子」
誠士は驚いて、士龍の顔を何度も見返す。

｢時の流れは、残酷だな｣
｢ちょ、どういう意味。ちょっとだけおっきくなったけど、俺可愛いよ？」

オレは後ろで言い合いを始めるふたりを放置して、東流の肩をたたいて改札を通り、モノレールに乗り込んだ。