俺たちの××

怜悧(サトシ)

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番外編

卒業旅行 → side T

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「東流、康史!コッチコッチ!!」

ガラガラと康史が用意してくれたカートトランクを引きながら、手を振る誠士の方に歩いていく。
飛行機とか、まじで緊張する。
あんな鉄の塊を浮かせるとか、信じられねえ。

康史の荷物も俺のも全部トランクに詰めたのでまとめてカートはひとつだし、あとは肩掛けバックだけである。
誠士の隣には爽やかに、キャプテン東山がいる。
春休みまでに、誠士にも彼女できればよかったんだけどな。最近は東山と2人で合コン三昧らしい。
「ハヨ、ヒガシ、制服じゃねえと、えらい爽やかだよな」
「な、なんで?!」
「制服とかトレーナーだと、背中に炎がみえんだよな。スポコン的な!」
「ちょ、それ!偏見だからね!そっちこそオシャレじゃないか!」
炎なんか出してないよと必死で言うのが面白い。
「俺はヤスのセンスだしな」
「トールはほっとくと、チンピラ丸出しのアニマル柄装備になるからな」
ちぇ、逆に誠士にからかわれて、俺の楽しみが消える。

あ、そうだ、士龍はまだかな。弟のえーと、タケちゃんだったかな。
どこにいるかな。
俺は待ち合わせの場所あたりをぐるりと見回す。

アイツら背がたけえから、目立つと思うんだけどな。

「あ!!トール君!!」

パタパタと小走りにカートを引きずりながら、金髪をはためかせて士龍がやってくる。
東山は、いきなりやってきた士龍にびびっているようだ。

「お、シロ。急に誘って悪かったな?」

士龍は、緑色の目を向けて首を横にふった。
弟を気にしているのか、ちらちらと後ろを気にしているのか何度も振り替える。

「たけおが、トイレいってからくるって」
士龍は、そう告げると、ソワソワとしている。
相変わらず可愛いな。

「こんにちは。えーと、セイジ君は2回目だよね。俺、東高校の真壁士龍っていいます」
士龍は、礼儀正しく東山にぺこりと頭をさげた。

「こいつ、俺とヤスの小学校ン時のダチなんだ。ちょっと留年して卒業できねかったんだけど、聞いたらコイツも停学中で修学旅行いけなかったらしくてさ」
俺もいけなくて寂しかったしと、付け足して東山に紹介する。
東山は、少しだけ怯えたようにおずおずと手をさしだして、
「え、と……俺は東山輝矢……真壁君は、上川中だったよね?覚えてるかなって言っても、話ししたことはなかったけど」
東山は、士龍のことを知ってるようだ。
知り合いなら良かったと思いながら、飛行機のチケットを誠士から受け取る。

「あ!!東山君!?ああ、サッカー部の!?超人気モノの?うわー、なんで、なんで!?トール君と接点がみつかんないー」
笑いながら差し出された手を握って、嬉しそうに士龍は笑う。
「俺も、真壁君は有名だったから知ってるよ。喧嘩強くて頭が良くて……。でも、東高に行くとか思わなかったけど」
「えー、東高だったらさー、トール君いるかなって思ったし。まあ、ヤッちゃんいるから、流石に勉強教えてもらってたよね。俺のリサーチ不足っ」
てへっと笑うとやっぱり天使の頃の面影がある。

いまは、でっかくなったけど。

ようやく、トイレから帰ってきたのか、仏頂面の弟もやってくる。兄弟っていったけど、あんま似てねえよな。目が同じ緑色がかってるくらいか。
「世話になります。俺、えーと、橘、虎王っす」
ぺこりと頭をさげて、士龍の荷物を手に持ち直す。
あれ、前は富田だったよな。
でも、士龍の前の名前は橘だったし、兄弟だし苗字ってコロコロ変わるんかな。

「先週ね、タケオはとーちゃんのとこに籍をいれたんだよ。俺も、20歳になったら橘に復籍するし。結婚みたいでいいだろ?」
照れたようにへへへと笑い、士龍は説明してくれる。
まあ、実際兄弟なわけだしな。
兄弟で付き合うとか、あんま、俺には実感ねえけど。
ちらと見ると、東山は虎王と今度は握手している。
コミュ力高い東山で良かった。
仏頂面の弟も、なんとなく気が緩みはじめたようだ。
まあ、コイツが俺のとこに乗り込んでこなかったら、士龍にら再会もしなかったしなあ。
「シロは、飛行機乗ったことあんのか?」
「えー、俺、帰国子女だぞ。ドイツへの往復で乗ったし!」
胸を張って威張る感じは、やっぱり士龍は変わってねえなと思う。
「俺、初めてなんだよな。なんであんなん飛ぶんだ?」
「飛行機の羽の上と下の圧力差で揚力が発生するから浮くんだよ。それに、エンジンで加速させてるんだ……」
なんだか、こ難しい説明を士龍が答え始めた。
んなこと、言われてもまったくわからん。
「なんか、よく、わかんねーけど、力で浮いて飛ぶんだな」
「えーと、そだね!なんかのすごい力で飛ぶよ!だから、安心して大丈夫!」
すぐに、士龍はそう返してくれる。
俺が分からなくても、別に馬鹿にしないから安心する。

「そろそろ搭乗手続きするぞ!」
誠士は張り切った声で、カウンターの方に歩き出したので、俺は康史の腕を軽く掴んで、一緒に歩き出した。
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