俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

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俺の言葉に、やっぱりそうだよねーと士龍はしみじみとつぶやき、じいーっと乳首を凝視するので、なんだかとってもいたたまれなくなって、頭に引っ掛けていたタオルを肩にかけて乳首を隠す。

「ンなに見るなよ。シロ。なんか、ん、テレる」

「ちょ、トール君!そこ、テレるじゃなくない。テレるの?それ」
「翻訳すると、恥ずかしいだな。シロもだけど、トールも激しく日本語不自由だから」
康史が思わずといったていで、会話に割り込んでくる。
不自由同士の会話ってことか。
それは会話なりたたねーじゃねーか。
いや、俺のがシロ以下なのか。
視線をさまよわせると、テーブルに突っ伏して虎王が身体を揺らして笑っている。
こいつ、結構笑うんだな。
 「昔の方が、この2人の会話ひどかったけどな」
思い返すように康史が言うが、あまり覚えてない。
記憶力はいいんだけどな。
「そうか?」
そんなに、おかしい会話してたかな。士龍とはかなり通じあってたように思ってたんだが。
「たとえば、宿題の話をしていて、シロがたぶんもう授業中にやり終わってるから、宿題なんかにはしないよって言ったのを、トールはヤル気ないと思って、俺も宿題なんかはやらねーとか言ってて、ふたりで分かりあってるつもりになってるとか。そんなんばっかだ」
「えー、そうだったかな?!」
士龍は首を横にひねっているが、どうやら思い出せないようだ。
俺もまったく思い出せないしな。
そんな、士龍も東高のトップなわけだし、なにがどーなるか先はわからないもんだな。
「シロは、タケちゃんといつから付き合ってんだ?」
ふと、2人のことが気になって聞いてみる。
こないだ、助けた時はよりを戻したとこだったしな。
「えー、こないだからだから、まだ2週間くらいかな」
「別れる前は?」
「2日かな……」
「短くね」
歯切れが悪い感じで、士龍はうーんと考える。
正味一ヶ月に満たないのか。今が蜜月か。
「んー、その前一ヶ月くらいセックスはしてたけどねー。付き合ってはなかったから」
微妙な感じで笑うので、なんだか心配になる。
まあ、ソレは最初は俺らも付き合う前にイタしちまったけど。
「セフレ?」
康史が臆面もなく聞くと、士龍は笑ってそんな感じと言う。
虎王の方は苦笑を浮かべて士龍を見ているので、なんか色々あったんだろうなと思う。

「ヤッちゃんたちは、いつから?」
士龍の問いかけにどう答えようかと、俺は思案していると、康史が横から割ってはいる。
「夏休み。トールを不意打ちで襲って監禁して強姦しちゃった」
カラッと笑いながら平然と康史が言うので、士龍たちも半笑いだがかなり引いている。

だよな。

「ヤス。それ聞くと、すげえ、俺、弱くない?」
「飲み物に媚薬まぜた上で、後ろから殴って、対クマ用のスタンガン使ったけどね」
「ヤッちゃん。絶対、殺しにかかってるよね、ソレ」
「クマ用だったのか…………」
「だって……普通のじゃ、きかなそうだったし……」
「クマ用…………」
虎王は、机をバンバン叩いて笑っているようだ。

俺は新たな真実に、激しくショックを隠しきれなかった。


「やだな。ホンキにしないでよ。クマ用とかは、さすがにウソだからさ」
へらりと笑いながら、本気で肩を落とした俺に康史は宥めるように背中をたたく。
ウソに思えない。

「まあ、それくらいのモノがなくちゃ、自分のモノにはできないと思ってたけどね」
康史の言葉に、少し士龍は驚いた表情を浮かべて首を傾げた。
「え。昔から、トール君は、ずっとヤッちゃんのことしか見てなかったのに?」
不思議そうな顔をする士龍が、たぶん正しいのだろうと思う。
それは、俺が1番分かっている。

凶行をする前に、康史が俺とどうなりたいのか言ってくれてたら、多分だが、俺はOKしてたという自信はある。
康史の頼みはすべて聞いてやりたいくらいに、大事にしていた。
普段の俺の態度やおこないが、康史を凶行にかりたてたので、俺にも責任はある。

「岡目八目って言葉知ってる?」

聞かれた士龍は、意味がわからないのか首をひねる。
俺にもわからない。
「オカメ納豆しかわかんねー」
「実際、本人にはわからないことっていっぱいあるんだよってことだ」
康史はそう言うと、俺の肩を軽く叩く。
「ってわけで、俺は、卑怯な手を使ってコレを手にいれたわけだ」
「別に欲しければ、卑怯な手でもいいんじゃない。イヤなら、逃げるだろうし。ましてや、トール君だし」
少し考えながら告げる士龍は、康史に笑みをつくる。
「…………オレも、コイツを脅して手にいれた」
ボソボソと富田が言いにくそうに話し出す。
あ、だから、士龍が歯切れが悪かったんだなと、理由がわかる。
「そうなの?!」
康史が驚きながら、ココアを入れ直し始める。
「んー。まあ、そうなんだけど、俺も脅されたフリしてたからなー。別にイヤなら逃げたし」
「なんで、フリしてたの?」
「なんとなく、好奇心」
言い出す士龍は、ちょっといたずらっぽい笑顔になる。
「そしたら、なーんか、ハマッちゃってさ。…………ンー気づいたら好きになってたんだよなー」
「軽ッ」
「体からってのも、アリだよね?」
素直に言う士龍のあっけらかんとした様子に、ちょっとばかり心配にはなるが、本人たちが幸せそうなのでヤボはいわずにそうだなと頷いた。


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