俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

遊園地→side Y

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正直、驚いて声が出なかった。

まさか、東流から遊園地にいこうなんて言い出すとか。
朝から雪が降るんじゃないか、とか思ってしまった。
だいたい、人混みとか、こーゆー可愛い系のポップなとこは苦手な性分だろうし。
夏休みにあんなことがあって、流れた時にはもう2度と行かないだろうなと、半ば諦めていたのもある。

多分、報復とかでずっと俺が外に出てないのを気にしていたから、気分転換にと考えたのだろう。

東流の思考回路は単純だからわかりやすい。
だけど、分かっていたとしても、正直に嬉しい。
年甲斐もなく大はしゃぎしたいくらいだ。

急行直下する絶叫マシンに並びながら、いまは、2人で肉を齧っている。
幸せすぎて、ホントに嬉しい。
あの時の絶望感なんて、まるでなんだったんだ、って感じだ。

「カップルだらけだなー」

「ココはそーいうとこだからね。まー、俺らもそうだろ」
東流のボヤキに返すと視線を落として、目元を細め小さく頷く。
普段羞恥心のかけらもないのに、こーいうところで照れる姿が可愛くて仕方がない。
マシンに乗る順番になると、東流はさっさと乗り込んでベルトを嵌める。

「上から下まで何度かストンって落ちるやつ」
「バンジージャンプみたいなもんだな」
ちょっと違うけど、 だいたいそんなもんだとかいいながら、見えないように、東流の手を掴んで後ろ手に握る。

「マシンより、コッチのがドキドキしねえ?」
顔を覗き込むと、浅黒い肌を染めて小さく頷いた。

可愛いとこばかりで、ホントにたまんなくなる。
上昇していくマシンに乗りながら、俺は東流の耳元で、愛してるよと、呟いた。


昼メシを食べた後も、行列に並んで絶叫系マシンを愉しみ、東流は文句も言わずに付き合ってくれる。
どのマシンでも平然としてるのは、凄いけどな。 

むしろ、あれか。お化け屋敷とかのがビビるのか?
やっぱりビビらせたいとか考えちまうのは、性癖だろうか。

「トール、お化け屋敷とかいく?」

案の定、東流はちょっと躊躇する。
もしかして、お化け、怖いのか?
これ、か?!
これなのか。
嬉しくなっていこういこうと腕を引くと、ひどく嫌そうな顔をする。

「お化け屋敷は、鬼門なんだ。一回ガキの時、家族で行った事があって…………思わずお化けを殴り倒しちまってな……警察はくるし、オヤジはさっさとバッくれるし……。.....散々だった。まあ、小学生が驚いてやったこと、で収まったんだが。それ以来、遊園地にはきてない」

それは、かなりのトラウマだな。

東流の家はあんなんだから、滅多に家族でなんてないだろうし、幼いながらも鬼門になるよな。

まあ、襲われる気配がわかりすぎるから、ついつい反射的に反撃してしまうだろうし、お化け役の人に怪我させるわけにもいかないな。

「分かった!じゃあ、夜まで絶叫系は乗り切ったし、なんか乗りたいものとかあるか?」

東流は少し考えこんで、軽く視線を天上へと向ける。

「観覧車、乗るか?」

「イタズラしていい?」
思わず言ってみると、東流はちょっと唇を尖らせて、
「そこは、アレだろ。テッペンでキスするやつ、じゃねーの?」
意外にもロマンティックな提案をされて、俺の方が驚いた。

「いいよ。すごく愉しみだ」
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