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三学期編
バレンタインデー →side T
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気がつけば、どうやらまた意識をすっ飛ばしていたらしい。最近俺の精神力はなまり過ぎてるのかもしれん。康史はいつものように、俺を心配そうな顔をして見ている。
なんて、ホントに可愛らしい顔をしてやがるんだろう。
身体は、綺麗に拭かれていてさっぱりしている。
いつもそうだし、それが気に入ってはいたのだけど。
「……まだ、あさ、じゃねーよな?」
掠れた声はガサガサして、自分でも声を聞き取りずらい。
「気がついた?大丈夫?」
「んー、すげえ…………キモチ良かったぜ」
康史は、なんだか捨てられそうな犬のように不安そうな顔をまだしやがるので、俺は腕を伸ばして抱きしめ引き寄せる。
「あー!夕飯食ってねー!!」
思い出して損した気持ちで思わず大声で叫ぶと、康史は俺を見てぷっと吹き出す。
「すぐにルームサービスで頼むから、待ってて」
俺から離れて、電話機に近寄り何かをオーダーする。
何か気を使いすぎなんだよな。
記憶を失くしてから、セックスも毎日じゃなくて、3日にいっぺんくらいだし、体は楽なんだけど、なんだかもの足りない。
きっと遠慮してんだろうな。
だから、人前であんなことをされても、それすら興奮して欲しいと思った。
また、俺から誘わないとなんかな。
「貞操帯、どうだった?オーダメイドしちゃったけど」
脱がせたサンプルを手にして、康史らちらちら俺を伺う。
「外じゃ感じ過ぎちまって危なくてつけれねーけどな、家でならいいぜ」
「え、いいのか?苦しそうだったけど」
「だから、オマエがそういうの好きなんだから、俺はぜんぶかなえてやるっての。…………愛の誓いってヤツだからさ」
さっき買った指輪を思い出して、放ってあるズボンを拾うと中から指輪を取り出す。
「手ェ出せよ」
「うん……」
ぜんぶひっくるめて、俺は康史を愛してる。
「オマエにプロポーズしたのは、俺の方なんだぜ。ちゃんと思い出せよ」
全裸でカッコつかないが、プロポーズもM字開脚だったなとか思い出して、肝心なとこでいつもそうだなとか客観視する。
「ん、早く思い出したいよ」
指輪を康史の薬指にはめて、手の甲にチュッと唇を押し付ける。
「康史、誓うぜ。俺のぜんぶは、未来永劫、オマエのもんだ。オマエが全部忘れちまっても、ぜんぶオマエのもんだからな。……安心しろ」
康史と呼んで少し違和感があったが、誓いの言葉はそう呼びたかった。
ポタポタと指先が濡れて目をあげると、康史が泣いていた。
「ばっか、泣くんじゃねーよ。そこは、俺を抱きしめてキスするとこ、だろ?」
「東流、愛している。誓うよ」
グイッと康史の胸元へ抱きしめられ、奪うように唇を押し付けられて貪られ、長い長い口付けの果てに、またもや、俺は情けなくもキスだけでイッてしまったのだった。
「そーいえば、チョコレート作ってなかったな」
ホテルを出て、朝日が黄色くて眩しいなとか思いながらダラダラと歩いてると、ふと気がついたように康史が呟く。
「んァ?…………チョコとかよ、菓子メーカの戦略なんだろ?」
「まあ、そうだけどさ。いつも、トールに作ってたからさ。今年はそれどころじゃなくて思いつきもしなかったし、外にも出れなかったしさ」
ん、いつも手作りって言ってたもんな。
いつも女が好きそうなオシャレなヤツだったから、てっきりおすそわけだとばかり思ってたんだが、意外な事実だ。
「今年は両思いになれてから、はじめてだっていうのに」
はーっとため息をついて、残念がる様子がなんとも可愛いらしい。
「そうだな、去年は最悪だったしなあ」
「そうなのか」
「相変わらず、オマエは女に群がられて、そこを襲われたからなー。女とオマエ守るんで必死だったし。ナズとの約束すっぽかして、その後フラれたしなあ」
俺のつぶやきに、まゆをあげて康史は仕方ないなという顔で笑う。
「それは、最悪だったね」
「ああ…………そうだ。ちと、コンビニ寄ろうぜ」
康史の腕を引いて、近くのコンビニに入ると、かごを持って板チョコをドサリと10枚くらい中に入れる。
「トール?」
「1日遅れでも、まあ、それっぽいことしよーぜ。チョコレートざんまい祭りだ」
「昨日1日ずっとデートしたので、俺は充分だよ」
遠慮がちな康史の口調に、俺は背中をぽんと叩く。
「いろんな初めてしてこーぜってさ、俺はオマエに約束したんだ」
ついでに、ジュースやおかしをぽんぽん入れてレジに持っていき会計する。
「トール、ありがとな」
「ヤスの料理はいつもうまいから、俺も楽しみなんだよ」
レジ袋を受け取り、康史の腕を引く。
「かえんぞ、明日は卒検前の最後の教習だからな」
「頑張れよ。っても、まあ、オマエなら運転だけなら問題ねーよな」
康史は俺を見上げてにっと笑うと、家に向かって歩きはじめた。
なんて、ホントに可愛らしい顔をしてやがるんだろう。
身体は、綺麗に拭かれていてさっぱりしている。
いつもそうだし、それが気に入ってはいたのだけど。
「……まだ、あさ、じゃねーよな?」
掠れた声はガサガサして、自分でも声を聞き取りずらい。
「気がついた?大丈夫?」
「んー、すげえ…………キモチ良かったぜ」
康史は、なんだか捨てられそうな犬のように不安そうな顔をまだしやがるので、俺は腕を伸ばして抱きしめ引き寄せる。
「あー!夕飯食ってねー!!」
思い出して損した気持ちで思わず大声で叫ぶと、康史は俺を見てぷっと吹き出す。
「すぐにルームサービスで頼むから、待ってて」
俺から離れて、電話機に近寄り何かをオーダーする。
何か気を使いすぎなんだよな。
記憶を失くしてから、セックスも毎日じゃなくて、3日にいっぺんくらいだし、体は楽なんだけど、なんだかもの足りない。
きっと遠慮してんだろうな。
だから、人前であんなことをされても、それすら興奮して欲しいと思った。
また、俺から誘わないとなんかな。
「貞操帯、どうだった?オーダメイドしちゃったけど」
脱がせたサンプルを手にして、康史らちらちら俺を伺う。
「外じゃ感じ過ぎちまって危なくてつけれねーけどな、家でならいいぜ」
「え、いいのか?苦しそうだったけど」
「だから、オマエがそういうの好きなんだから、俺はぜんぶかなえてやるっての。…………愛の誓いってヤツだからさ」
さっき買った指輪を思い出して、放ってあるズボンを拾うと中から指輪を取り出す。
「手ェ出せよ」
「うん……」
ぜんぶひっくるめて、俺は康史を愛してる。
「オマエにプロポーズしたのは、俺の方なんだぜ。ちゃんと思い出せよ」
全裸でカッコつかないが、プロポーズもM字開脚だったなとか思い出して、肝心なとこでいつもそうだなとか客観視する。
「ん、早く思い出したいよ」
指輪を康史の薬指にはめて、手の甲にチュッと唇を押し付ける。
「康史、誓うぜ。俺のぜんぶは、未来永劫、オマエのもんだ。オマエが全部忘れちまっても、ぜんぶオマエのもんだからな。……安心しろ」
康史と呼んで少し違和感があったが、誓いの言葉はそう呼びたかった。
ポタポタと指先が濡れて目をあげると、康史が泣いていた。
「ばっか、泣くんじゃねーよ。そこは、俺を抱きしめてキスするとこ、だろ?」
「東流、愛している。誓うよ」
グイッと康史の胸元へ抱きしめられ、奪うように唇を押し付けられて貪られ、長い長い口付けの果てに、またもや、俺は情けなくもキスだけでイッてしまったのだった。
「そーいえば、チョコレート作ってなかったな」
ホテルを出て、朝日が黄色くて眩しいなとか思いながらダラダラと歩いてると、ふと気がついたように康史が呟く。
「んァ?…………チョコとかよ、菓子メーカの戦略なんだろ?」
「まあ、そうだけどさ。いつも、トールに作ってたからさ。今年はそれどころじゃなくて思いつきもしなかったし、外にも出れなかったしさ」
ん、いつも手作りって言ってたもんな。
いつも女が好きそうなオシャレなヤツだったから、てっきりおすそわけだとばかり思ってたんだが、意外な事実だ。
「今年は両思いになれてから、はじめてだっていうのに」
はーっとため息をついて、残念がる様子がなんとも可愛いらしい。
「そうだな、去年は最悪だったしなあ」
「そうなのか」
「相変わらず、オマエは女に群がられて、そこを襲われたからなー。女とオマエ守るんで必死だったし。ナズとの約束すっぽかして、その後フラれたしなあ」
俺のつぶやきに、まゆをあげて康史は仕方ないなという顔で笑う。
「それは、最悪だったね」
「ああ…………そうだ。ちと、コンビニ寄ろうぜ」
康史の腕を引いて、近くのコンビニに入ると、かごを持って板チョコをドサリと10枚くらい中に入れる。
「トール?」
「1日遅れでも、まあ、それっぽいことしよーぜ。チョコレートざんまい祭りだ」
「昨日1日ずっとデートしたので、俺は充分だよ」
遠慮がちな康史の口調に、俺は背中をぽんと叩く。
「いろんな初めてしてこーぜってさ、俺はオマエに約束したんだ」
ついでに、ジュースやおかしをぽんぽん入れてレジに持っていき会計する。
「トール、ありがとな」
「ヤスの料理はいつもうまいから、俺も楽しみなんだよ」
レジ袋を受け取り、康史の腕を引く。
「かえんぞ、明日は卒検前の最後の教習だからな」
「頑張れよ。っても、まあ、オマエなら運転だけなら問題ねーよな」
康史は俺を見上げてにっと笑うと、家に向かって歩きはじめた。
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