俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

まやかしの終わり →sideT

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「タダイマ……」

帰ってリビングに入ると、すでに飯の支度はしてあって、誠士は俺のダンベルを使って筋トレをしている。

「おかえり。って、東流、暴れた?」
「ちと、絡まれた」
早速、俺の様子を見て異変を感じ取った誠士か突っ込んでくる。
さすがに暴れたあとに教習は、かなり疲れたな。

「東高か?…………だよな、その顔は」
「んな人数いなかったし。そんな問題ねえや。まあ、そのお陰で天使にも会えたしよ」
ドサッと荷物を置いて康史の方に近寄る。
「トール、ちょっと殴られた?…………頬に擦り傷がある」
仲間を逃がすために、タケちゃんが1発食らわせたやつだろう。
わざと避け無かったやつだし、あまり痛くはなかった。
「ああ、かすり傷。なあなあ、シロのこと覚えてる?小学校の時のダチだった」
この1年の記憶がないだけなら、康史も忘れてはいないはずだ。
「ああ、なるほど。だから天使ね。シロに会ったんだ。あいかわらず天使のように綺麗で可愛いかった?」
康史は唐揚げを俺の目の前に差し出すので、ぱくりとくわえる。
「ああ残念ながら、かなりでかくなってた。可愛いってより、イケメンだなあ。俺よりちょい背も高かったぜ」
「そんなにでかくなったんだ。でも、それならイジメにあってなさそうだね。よかった」
康史も、懐かしそうに笑う。
「なんの話だ?」
誠士は別の小学校だったから、士龍のことは知らないだろう。
中学校は、士龍は引っ越して別のところにいってしまったのだ。
「東高だったんだ。俺の小学校のダチ。今日返り討ちにして潰したとこのヤツを迎えにきた」
「え!!」
康史と誠士は2人同時に声をあげた。
「なんで!?シロ?あいつ、普段は天然でかなりのぬけさくだけど、めちゃくちゃ頭はいいんだぞ。小学生で高校の問題解けたくらいだぞ。ドイツには飛び級があって、かなり先の勉強してたって」
「そりゃ、いくら中学校サボりまくったとしても、東高はないよな……。なにやらかしたんだろ」
やっぱり、俺が東高に行くと考えたのだろうか。
引越しの時に、寂しそうな顔をしていたのを思い出す。

「で、今日はドコのやつを潰したの?」
誠士は、ひたすら今日の相手を気にしているようだ。
「わかんない。…………ボスは赤い髪の毛のヤツでタケちゃん。って呼ばれてた」
かわいいネーミングだったが、身長は高い方だし、結構拳は重くていい動きをしていた。
「タケちゃんな。あー、富田派の富田虎王たけおかな。赤い猛獣」 
「その子をシロが、お迎えにきたんだ」
俺が言うと、誠士はぷっと笑ってからふーうと息をつく。
「トールが言うとなんか、喧嘩に聞こえないや」
誠士の言葉になんだか少しほっとした。


飯を食い終わり誠士は帰っていった。
片付けを終えた康史は、ちょっと天井を見上げたあとに、何かを決意したように俺の目の前に座った。
なんだか思い余ったような、少し切羽詰った表情を浮かべて俺の顔をじっと見返す。
なんだろう、あの時のこととかを知りたがっていたというのは、誠士から報告を受けている。

どうにかして、隠さないとならない。
気をつけないとな。

「トールさ、オマエ、いままでオレを…………抱いたことってないのか?」

何を聞くかと思えば。
オレは康史の問いかけの内容に、肩の力を抜いた。

その時のオレは、康史の問いの本当の意味をわからずにいた。

だから、素直に答えた。

「抱いたことは…………ねえよ?でもよ、ヤスが俺に抱いてほしいってなら、俺はいつでも抱くぞ」
今までにはない。
多分、これからもないかもしれないと思っていたが、実は康史は俺には抱かれたいと思っていたのだろうか?

「そうか…………。わかった」

康史は、何かを堪えるようにぐっと拳を握り締めている。
ふるふると全身を震わせているようにも見える。
俺は何か、マズったのか。
どこか、俺の言葉のどこに地雷があったのか。

まったくわからず、俺は康史の腕を握りしめた。

「どうした?」

「なあ。オレは、なんで記憶がなくなった?」

康史は、オレに縋るような表情を浮かべて、オレの肩をがくがくと揺らして強く問い詰めた。
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