俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

返り討ち →side T

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康史のことは誠士に任せているから大丈夫だとして、まあ、この数で報復なあ。
俺は、教習所の駐輪場からの細い路地裏で、10人前後の東高のやつらに囲まれている。
見たことがない連中で、いつも絡んでくるメンツではないようだ。

「あ?ナニ?オマエらの制服見ると、いま腹立って仕方ねえんだけど。怪我する前に、そこどけよ」
教習所の時間は余裕をもってきたが、あんまり長引きたくなくて、獣を追い払うようにしっしと手を横に振る。

「金崎のこたあ、知ったことじゃねえが、やられッぱなしはメンツにかかわんだよ」
赤い髪のわりと身長の高いヤツが、俺に殴りかかってきた。
間合いはいいが、動きがとにかく遅いんだよな。
とりあえず脚をかけて転がし、腹部を踏み付ける。

「タケちゃん!!大丈夫か!?よくも、ハセガワァ!!!」
子分らしい奴らが一斉に襲い掛かってきた。
まあ、いつものヤツらよりは動きが良いし、それなりに強そうだ。
軽くいなしながら、一人づつ地面に殴りつけて沈めていく。
タケちゃんとやらは、すぐに起きあがり俺に襲い掛かってくるので、回し蹴りを食らわせて壁へと叩きつけた。
折れないのは、ガッツがあるし、こいつが一番いい動きをしている。
まあ、だからこの中のボスなんだろうけど。

「多勢に無勢とか、卑怯なんじゃねえの?俺の大事な相棒を、ひでえ目にあわせたのによ」
抑えがきかなくなり、グシャグシャと男達を殴り倒していく。

やべえな。
そろそろ、止めないと。
理性はそういってくれるのだが、感情が追いつかない。
あの時7割で止めたぶん、燻っているのかもしれない。

「ミヤ、逃げろ!ハセガワはオレが抑える」
タケちゃんとやらは俺の胸元にタックルをくらわせて、その間に子分どもを逃がす作戦に出たようだ。
ああ良かった、人殺しにはなりたくねーしな。
こいつなら、ある程度打たれ強そうだ。
タケちゃんの攻撃を受け止めて、反撃をせずに他のヤツらが逃げるまで待ってやる。

二人きりになると、俺は感情の行き場を変えて、タケちゃんとやらを胸元から引き剥がした。
急所にはならない腹部をゴツゴツと殴り始めた。

ふと気がつくと、路地からゆっくりと歩いてこちらに近づいてくる長身の人影かある。
見るとサンドバッグ化したタケちゃんはぐったりしている。

加勢がきたか?
それにしちゃあ、戦意や敵意はまったく感じない。
「誰だ?」
影は近寄ってきて、康史とは違う感じの長身で金髪の美形の男が立っていた。
目元はタレ目で、身長は俺より少し高くガタイもしっかりしている。
戦意はないが、かなり強いということがわかる。
俺と対等まではいかないとは思うが、二人がかりなら危ないかもしれない。

「こんちわ。ウチノ子連れ帰りにきたんだわ」

この場にそぐわない、のほほんとした口調で俺に臆せずに声をかけてきた。
相当腕には自信があるのだろうか。
よく見ると、相手は東高の制服を着ている。
やる気なら、また返り討ちにするだけだ。
「あー?コレ?」
ぶらぶらと吊る下げた意識がほとんどなさそうなタケちゃんを見やる。
力づくで取り返すなら、やってみろと挑発するように見返した。

「オマエ、東高?」
「そだよ」
軽く言葉を返す金髪の男には、まったく戦意も敵意もみえない。
俺をふわふわとした笑顔で見返して、まるで返してと言えば素直に返してくれると心から思っているようだ。
なんだ、こいつは。
「……俺、今すげえ、東高の奴等に怒ってるンだけど……」
簡単に返すわけにはいかないと告げた。
すると金髪の男は整った顔を少し悲しそうに歪めた。
「知ってるよ。トール君が怒って当然だよ。えっと.......ヤッちゃんにひでえことされたんでしょ」
康史のことを、ヤッちゃんと呼ぶのは、幼い時の知り合いと俺の家族だけだ。

こいつは、俺を知っている?
いや、俺はこいつを知っている、のか。

光があたると少しだけ緑に光るビー玉のような目には、ひどく懐かしい気持ちになる。
金髪は記憶よりも光が薄くて、あの頃のようなキラキラではないけれど。

「……オマエ、誰?」

康史と同じくらい綺麗で、天使のように可愛らしい幼なじみがいた。

顔も身体もごつくはなってて面影はまったくないけど。

きっと、そうだ。
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