俺たちの××

怜悧(サトシ)

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冬休み編

クリスマスイヴ→side T

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買い物を終えて誠士とは別れて、コートのポケットにプレゼントをしまって待ち合わせの場所についた。
ただ、立っているだけだというのに、どうして囲みにあっているんだろうか。
周りのカップルたちが、その場を離れて行くのに罪悪感を覚える。
確かに待ち合わせ時間の30分前から、ついついその場所に待機しちまったンだけども。
それは、俺のウキウキ感から為せる技だろう。

「ハセガワァー、随分とオシャレに決めちゃって、まさかのクリスマスイヴデートとかですかァ、キャハ」
俺の胸倉を掴んですごんでみせているのは、東高の制服を着たいつもの糸目の男。
名前は忘れた。
東高のやつらは、本当に俺を目の敵にしている。怪我しないうちに帰ればいいのに。
「うるせェ……よ。邪魔だ。それとも、寂しいからってヒガミですかァ?おめえらと、喧嘩してる暇ねえよ」
面倒くせえなァと思うのだが、こういう奴等は暇だと喧嘩したがるものだ。
今日の格好は、康史に買ってもらった服なので、いつもの俺より数倍以上オシャレになっている。
こんな時に喧嘩はしたくねえなァ。
「ハァ?喧嘩大好きなハセガワ君の言葉とも思えねえけど、よっぽど可愛い子と待ち合わせしてるのかなあ、キャハハ」
すげえ可愛い子と待ち合わせしてんだよ。
俺の首根っこをグイグイと締め付けてくる。
うぜえ……。
我慢の限界……だな。
俺はその手首を掴むと、ぐいっと力を入れなおして鳩尾あたりに一発膝蹴りを食らわせる。
けほっと声をあげて、膝を落とした相手の背中にすかさず踵を押し当てて、ぐっと踏み込んでジワジワと体重を移動する。
「ここで下がっておけよ……折角のクリスマスイヴだぜ、こっから病院送られたくねえだろ」
低く囁きながらぐりぐりと踵でアタマを押しつぶす。
骨を折らないように軽く加減しつつ、でもしっかり痛みを与えるように強く踏みしだく。

「トール、お待たせ。なんだよ、お楽しみ中だったァ?」


囲みを蹴飛ばすように分けて、康史は俺の隣にくると腕をぐっと引く。
「ン、いや。じゃれついてきたから、頭撫でてやっただけだ。」
「へえ……じゃあ、行こうぜ」
地面に突っ伏す男を見下ろして、康史は足早に俺の腕をぐいぐいと引いていった。

「……ったく、ついてそうそう囲まれてるからビックリすんだろ」
ちょっと不機嫌そうな綺麗な横顔を眺めて、俺は歩を早めて康史の歩調に合わせる。
「帽子でも被ればよかったか?」
「いや………トールはオーラがあるから無理だな」
専門店のあるビルに入ると、エレベーター前で立ち止まる。
「オーラねェ?そんなに強くなるつもりもなかったンだけどな、オマエ守れるくれえで良かった」
ぼそっと呟くと、ふと表情を緩めて康史は俺の手をとってぎゅっと握ってくる。
手袋ごしだけど、凄くあったかい気がした。
「東高の因縁は俺のせいだしな。中学の時、俺が東高のボスのオンナを寝とっちゃって連れ去られた時、ムリだっていうのに、乗り込んでくれたじゃん……。俺守るのに、そんなに強くなる必要ができちまった……からだよな」
「そうかも。でも……さ、ヤスがオンナとっかえひっかえしてたのは……俺のせい?」
ピンという音が鳴って、エレベーターの扉が開く。
「叶わないって思ったら……ね。ヤリきれなくなってさ……トールは波砂と付き合ってるしって」
エレベーターに乗り込み少し大目の客の中にまぎれて、俺は口を閉じた。
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