俺たちの××

怜悧(サトシ)

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冬休み編

はじめての待ち合わせ →side T

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「はあ?じゃあ、年明けたら四国にいくってのか」

実家から帰ると、洗濯物をとりこんでいた康史は、俺の報告を聞いて振り返る。
その表情は堅く、かなり不機嫌な眼差しで俺を見返した。
冬休み、受験勉強があるとは言え一緒に住んでるのだし、正月明けたらすぐにまた実家からこっちに帰る予定ではあった。

とりあえず、こっちに帰らず勉強をして、留年回避が決まったら四国にいく。

まあ、康史が不機嫌になるのも仕方がないな。

「まあ、往復で3日もありゃ帰ってこれるって………。んなに、寂しがるなよ」

「違う。寂しいとかじゃない。あのな、オレは行けないんだよ。センター間際だし、そこをちゃんと分かってる?」
イラついた口調で言われなくても、充分にわかってる。つもり、だ。
「ンー、分かってるって。ちょっと四国までバイク飛ばしてくるだけだって、すぐ帰るから」
留年の話をしたら、西覇も親に迷惑をかけられないということで、冬休み中俺のスパルタ教師をしてくれると承諾してくれたのだ。
タンデムに乗せて四国まで連れてくくらいは、何でもない。

四国っていやあ、お遍路とかするとこだからバイクでいけばちょちょいだろう。
自分のオトウトながら、ホントに一途なやつだなぁと思う。

「あのね、分かってないから。それ。全然分かってない。距離とか時間とかじゃないんだ。考えて、トール。トールはもう目つきとかもってる雰囲気とか、そういう悪い連中を惹きつけるんだよ。セイハもある程度戦えたとしても、やっぱり守りながらになるだろ。一人だときついだろうし、それに引き際とか分からないだろ」
要するに、俺の雰囲気が悪いから、類は何かを呼ぶ的な感じで悪を呼ぶってことだろう。
「分かってるって……髪の毛黒くする……。就職の方の内定式もあるし。……俺はセーハに勉強おそわらねえと、卒業できねえし」
「髪黒くしただけじゃ雰囲気変えるのはムリと思うけど……。まあ、セイハにもちゃんと言って置くけど」
なにやら酷く不機嫌のまま、康史は取り込んだワイシャツにきちんとアイロンをかけ始める。

本当に主婦のように手際がいい。

「トール。そこのパンツ畳んで、したら、あっちの引き出しにわけてしまっといて」
かあちゃんかと錯覚するような口調で指示されながら、不機嫌な康史には逆らわず言われたとおりにパンツをしまい始めた。

「……なあ、トール……。明日は、夕飯食いに行こう」

一緒に住んでいるのに変なことをいいだすなと思う。
振り返ると康史は不機嫌を消して、どことなく期待に満ちた視線を送っている。

明日………何かあったっけな。

カレンダーには、特に赤いしるしはないが、24日だなあと思って、俺は漸くはっとした。
そういや、ああ、クリスマスイブってやつか。
サンタさんがこなくなってから、久しくどうでもいい日となっていた。

「いいけど…………イブとかじゃあ、さすがに店とか混むンじゃねえの?」
「何ヶ月も前に……予約してるから。大丈夫だよ」
ちょっと、何だ?
そのリア充っぽいスキル。
確かに、そういうとこマメでイケメンでモテ男の康史なのだが。
俺にまで、それを発揮するのか。
つーか、そしたらやっぱプレゼントとか期待してるよなァ……。
行く前になんか用意しとくか。

「そっか、すげえな。どこらへん?」
「本町の駅前ビル。予備校から近いから終わったらすぐいける」
「分かった。予備校終わるくらいに行くから、待ち合わせだな」
そういや、これまで康史にプレゼントとかはしたことはない。
そんなかしこまった間柄でもなかったし。

恋人同士なんだし、今までとおんなじってわけにもいかねえよな。  

「なんか、待ち合わせとかトールとすんの新鮮だな」 
「初めてかもな」
ガキの頃は、お互いの家に迎えに行っていたし、高校になってからも、殆どの時間一緒にいたから、待ち合わせする必要がなかった。
パンツをしまい終えると、俺は康史の背中を背後から包むように抱きしめ、

「今年はオマエとの初めてづくしだ。俺とオマエのやってねえこと山ほどシようぜ」

耳元で囁くと、かあっと首筋まで真っ赤に染めた康史は照れた表情を浮かべて俺を見上げる。

「……ほんと、無意識に誘ってんじゃねえよ……。参るよ、もう」

誘った覚えはチリほども無かったが、ぐるっと振り返った康史に床へと押し倒された。
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