74 / 353
二学期編
余韻なき獣 →side 東山
しおりを挟む
体を洗ってシャワーを浴びてタオルを首にかけて戻ってきた長谷川には、さっきの情事の余韻やあんなに垂れ流していたフェロモンなるものが全くなかった。
日に焼けた綺麗な筋肉質な体は、スポーツマンなら誰でもあこがれるもので、精悍な眼差しにすっかり戻っていた。
「ヒガシ、俺の顔になんかついてる?」
長谷川は散らばった下着をひょいっと手にとって、それをがさがさと無造作に身につけていく。
「あ、ああ。東流は、男らしいなってな。ヤッてるとこ目の当たりにした後でも思えるから不思議だな」
下の名前を呼べといわれたことを思い出して、思い切って呼んでみた。
ヤクザの下っ端を締めたとか、高校でたらスカウトされててヤクザになるとか、東高に乗り込んで1教室を壊滅させたとか、悪いうわさしか流れてこなかった。
こんな風に無邪気に笑うやつだとも思ってなかったし、それ以上に同級生に抱かれているとか思いもしなかった。
「ぶっ、何言ってんだか。そりゃあ男だもんよ。何だよ、いきなし。ヤスにはつっこまれてっけど、俺ァ、どーみたって男でしょ」
長谷川はおかしそうに身を折って笑い、目を細めで俺を見返す。
「そりゃそうなんだけどね。それにしても、日高も気絶してる東流と俺をよく二人っきりにしてでてったよなあ」
思わず呟くようにもらすと、意味がわからないとばかりに首をかしげてじっと俺を見返す。
「どういう意味だ」
「いや、まかりまちがって、俺が東流を襲っちまうとか考えなかったのかなとか」
予備校の時間に間に合わないから後はよろしくと、無防備な東流を置いてでていってしまったのだ。
裏切る気はさらさらないのだが、そういう危険性は考えないのだろうか。
長谷川も、何を言い出すのかというような表情を浮かべた。
「……オマエが俺を、か?ぶっは、そりゃ考えないだろ」
「なんでだよ」
そんなに人畜無害そうなのか俺は。
深々とため息をつく。信用されているのはうれしいが、なんとなく釈然としない。
「オマエはスポーツマンだからよ。卑怯なことはしねえし、間違っても俺がオマエにヤられておとなしくしてねえだろうしな」
ニヤッと笑う長谷川は、ふわりと心底恐ろしい凶暴じみたオーラをまとう。
なんだかトラウマっぽいものをふんずけてしまったようだ。
「まあ、そうだろうけどさ…………。東流は日高のどこがイイんだ?そりゃ、ありえないくらいのイケメンだけどさ」
俺は荷物を背負いながら、忘れ物はないかチェックをする。
ありきたりの問いかけに、長谷川はあごに手をあてて本気で悩んで首をひねる。
悩むくらい好きなところがないのか、日高は。
少し哀れに思うが、あんなに女からモテモテなのだ、本命にこれなのだから、ざまあみろとも思う。
長谷川はしきりにうーんとうなって10分ほど悩みぬいて漸く結論をだした。
「……顔だな」
「顔ォ………!!!そんだけかよ」
好きなところを聞かれて返す最低な答えのひとつだぞ。
正直に生きている男は、ごまかすということは知らないらしい。
「イケメンだろ」
当然とばかりに言う長谷川にあっけにとられる。
よっぽど日高の顔がすきなんだなと感心するしかない。
「まあそうだけど」
「だってよ。こんな喧嘩好きになったのは、ヤスの顔のせいっちゃあせいだぞ。ガキのときはヤスが女の子みてえな顔してるからって狙われて、それを助けてるうちにガキ大将になってたし、中坊ン時は、ヤスがところかまわず女こますから周りの男どもがふっかけるのを相手してるううちに、町の中学全部シメちまったし、東高のトップの女こましてさらわれたから助けにいって、東高ぶっつぶしちまったりなあ」
へらりと笑って自慢げに自分の胸元を指差す男は、本当に頼もしい。
こんな男らしい男を、良く抱こうと思えるものだ。
「そりゃ……すごすぎるけど。じゃあ、ガキの頃から好きだったんだな」
「さあ、ヤスに強姦されるまで気づかなかったけどなあ。そうなのかもしれねえな」
そこまでしといて、ただの友情のなせるものだと思ってたという感じである。
それにしても、強姦されたとか。
真に恐ろしいのは日高の方か。
「そりゃ、ゴチソウサマ」
本当に良いカップルだなと思いながら告げると、長谷川はにっとうれしそうに口元で笑う。
こんなに表情豊かなやつだったのかと改めて思い、なんだかまぶしく感じて目を細めて見返すと、長谷川は腰をあげて足を戸口に向けた。
「さあて、いこうぜ。ヒガシ」
俺は頷いて、大きな長谷川の背中を追いかけるようについて部屋を出た。
日に焼けた綺麗な筋肉質な体は、スポーツマンなら誰でもあこがれるもので、精悍な眼差しにすっかり戻っていた。
「ヒガシ、俺の顔になんかついてる?」
長谷川は散らばった下着をひょいっと手にとって、それをがさがさと無造作に身につけていく。
「あ、ああ。東流は、男らしいなってな。ヤッてるとこ目の当たりにした後でも思えるから不思議だな」
下の名前を呼べといわれたことを思い出して、思い切って呼んでみた。
ヤクザの下っ端を締めたとか、高校でたらスカウトされててヤクザになるとか、東高に乗り込んで1教室を壊滅させたとか、悪いうわさしか流れてこなかった。
こんな風に無邪気に笑うやつだとも思ってなかったし、それ以上に同級生に抱かれているとか思いもしなかった。
「ぶっ、何言ってんだか。そりゃあ男だもんよ。何だよ、いきなし。ヤスにはつっこまれてっけど、俺ァ、どーみたって男でしょ」
長谷川はおかしそうに身を折って笑い、目を細めで俺を見返す。
「そりゃそうなんだけどね。それにしても、日高も気絶してる東流と俺をよく二人っきりにしてでてったよなあ」
思わず呟くようにもらすと、意味がわからないとばかりに首をかしげてじっと俺を見返す。
「どういう意味だ」
「いや、まかりまちがって、俺が東流を襲っちまうとか考えなかったのかなとか」
予備校の時間に間に合わないから後はよろしくと、無防備な東流を置いてでていってしまったのだ。
裏切る気はさらさらないのだが、そういう危険性は考えないのだろうか。
長谷川も、何を言い出すのかというような表情を浮かべた。
「……オマエが俺を、か?ぶっは、そりゃ考えないだろ」
「なんでだよ」
そんなに人畜無害そうなのか俺は。
深々とため息をつく。信用されているのはうれしいが、なんとなく釈然としない。
「オマエはスポーツマンだからよ。卑怯なことはしねえし、間違っても俺がオマエにヤられておとなしくしてねえだろうしな」
ニヤッと笑う長谷川は、ふわりと心底恐ろしい凶暴じみたオーラをまとう。
なんだかトラウマっぽいものをふんずけてしまったようだ。
「まあ、そうだろうけどさ…………。東流は日高のどこがイイんだ?そりゃ、ありえないくらいのイケメンだけどさ」
俺は荷物を背負いながら、忘れ物はないかチェックをする。
ありきたりの問いかけに、長谷川はあごに手をあてて本気で悩んで首をひねる。
悩むくらい好きなところがないのか、日高は。
少し哀れに思うが、あんなに女からモテモテなのだ、本命にこれなのだから、ざまあみろとも思う。
長谷川はしきりにうーんとうなって10分ほど悩みぬいて漸く結論をだした。
「……顔だな」
「顔ォ………!!!そんだけかよ」
好きなところを聞かれて返す最低な答えのひとつだぞ。
正直に生きている男は、ごまかすということは知らないらしい。
「イケメンだろ」
当然とばかりに言う長谷川にあっけにとられる。
よっぽど日高の顔がすきなんだなと感心するしかない。
「まあそうだけど」
「だってよ。こんな喧嘩好きになったのは、ヤスの顔のせいっちゃあせいだぞ。ガキのときはヤスが女の子みてえな顔してるからって狙われて、それを助けてるうちにガキ大将になってたし、中坊ン時は、ヤスがところかまわず女こますから周りの男どもがふっかけるのを相手してるううちに、町の中学全部シメちまったし、東高のトップの女こましてさらわれたから助けにいって、東高ぶっつぶしちまったりなあ」
へらりと笑って自慢げに自分の胸元を指差す男は、本当に頼もしい。
こんな男らしい男を、良く抱こうと思えるものだ。
「そりゃ……すごすぎるけど。じゃあ、ガキの頃から好きだったんだな」
「さあ、ヤスに強姦されるまで気づかなかったけどなあ。そうなのかもしれねえな」
そこまでしといて、ただの友情のなせるものだと思ってたという感じである。
それにしても、強姦されたとか。
真に恐ろしいのは日高の方か。
「そりゃ、ゴチソウサマ」
本当に良いカップルだなと思いながら告げると、長谷川はにっとうれしそうに口元で笑う。
こんなに表情豊かなやつだったのかと改めて思い、なんだかまぶしく感じて目を細めて見返すと、長谷川は腰をあげて足を戸口に向けた。
「さあて、いこうぜ。ヒガシ」
俺は頷いて、大きな長谷川の背中を追いかけるようについて部屋を出た。
0
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
松本先生のハードスパンキング パート5
バンビーノ
BL
「お尻、大丈夫?」
休み時間、きれいなノートをとっていた子が微笑みながら言いました。僕のお仕置きの噂は、休み時間に他のクラスにも伝わり、みんなに知れ渡りました。姉は、何をやっているのと呆れていました。姉も松本先生の教え子でしたが、叱られた記憶はないと言います。教室では素振り用の卓球ラケット、理科室では一メートル定規がお仕置きの定番グッズになりました。
でもいちばん強烈な思い出は、理科室の隣の準備室での平手打ちです。実験中、先生の注意をろくに聞いていなかった僕は、薬品でカーテンを焦がすちょっとしたぼや騒ぎを起こしてしまったのです。放課後、理科室の隣の小部屋に僕は呼びつけられました。そして金縛りにあっているような僕を、力ずくで先生は自分の膝の上に乗せました。体操着の短パンのお尻を上にして。ピシャッ、ピシャッ……。
「先生、ごめんなさい」
さすがに今度ばかりは謝るしかないと思いました。先生は無言でお尻の平手打ちを続けました。だんだんお尻が熱くしびれていきます。松本先生は僕にとって、もうかけがえのない存在でした。最も身近で、最高に容赦がなくて、僕のことを誰よりも気にかけてくれている。その先生の目の前に僕のお尻が。痛いけど、もう僕はお仕置きに酔っていました。
「先生はカーテンが焦げて怒ってるんじゃない。お前の体に燃え移ってたかもしれないんだぞ」
その夜は床に就いても松本先生の言葉が甦り、僕は自分のお尻に両手を当ててつぶやきました。
「先生の手のひらの跡、お尻にまだついてるかな。紅葉みたいに」
6月の修学旅行のとき、僕は足をくじいてその場にうずくまりました。その時近づいてきたのが松本先生でした。体格のいい松本先生は、軽々と僕をおぶって笑いながら言いました。
「お前はほんとに軽いなあ。ちゃんと食わないとダメだぞ」
つい先日さんざん平手打ちされた松本先生の大きな手のひらが、僕のお尻を包み込んでくれている。厚くて、ゴツゴツして、これが大人の男の人の手のひらなんだな。子供はこうやって大人に守られているんだな。宿について、僕はあのお仕置きをされたときにはいていた紺の体操着の短パンにはきかえました。あの時の白衣を着た松本先生が夢の中に出てくる気がしました。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
松本先生のハードスパンキング パート1
バンビーノ
BL
中学3年になると、新しい学年主任に松本先生が決まりました。ベテランの男の先生でした。校内でも信頼が厚かったので、受験を控えた大事な時期を松本先生が見ることになったようです。松本先生は理科を教えていました。恰幅のすごくいいどっしりした感じの先生でした。僕は当初、何も気に留めていませんでした。特に生徒に怖がられているわけでもなく、むしろ慕われているくらいで、特別厳しいという噂もありません。ただ生活指導には厳しく、本気で怒ると相当怖いとは誰かが言っていましたが。
初めての理科の授業も、何の波乱もなく終わりました。授業の最後に松本先生は言いました。
「次の授業では理科室で実験をする。必ず待ち針をひとり5本ずつ持ってこい。忘れるなよ」
僕はもともと忘れ物はしない方でした。ただだんだん中学の生活に慣れてきたせいか、だらけてきていたところはあったと思います。僕が忘れ物に気がついたのは二度目の理科の始業ベルが鳴った直後で、ほどなく松本先生が理科室に入ってきました。僕は、あ、いけないとは思いましたが、気楽に考えていました。どうせ忘れたのは大勢いるだろう。確かにその通りで、これでは実験ができないと、松本先生はとても不機嫌そうでした。忘れた生徒はその場に立つように言われ、先生は一人ずつえんま帳にメモしながら、生徒の席の間を歩いて回り始めました。そして僕の前に立った途端、松本先生は急に険しい表情になり、僕を怒鳴りつけました。
「なんだ、その態度は! 早くポケットから手を出せ!」
気が緩んでいたのか、それは僕の癖でもあったのですが、僕は何気なくズボンのポケットに両手を突っ込んでいたのでした。さらにまずいことに、僕は先生に怒鳴られてもポケットからすぐには手を出そうとしませんでした。忘れ物くらいでなぜこんなに怒られなきゃいけないんだろう。それは反抗心というのではなく、目の前の現実が他人事みたいな感じで、先生が何か言ったのも上の空で聞き過ごしてしまいました。すると松本先生はいよいよ怒ったように振り向いて、教卓の方に向かい歩き始めました。ますますまずい。先生はきっと僕がふてくされていると思ったに違いない。松本先生は何か思いついたように、教卓の上に載せてあった理科室の定規を手に取りました。それは実験のときに使う定規で、普通の定規よりずっと厚みがあり、幅も広いがっしりした木製の一メートル定規です。松本先生はその定規で軽く素振りをしてから、半ば独り言のようにつぶやいたのでした。「いまからこれでケツひっぱたくか……」。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる