俺たちの××

怜悧(サトシ)

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二学期編

厄介なDNA →side Y

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「立ち聞きなんてイケメンのすることじゃないんじゃないの、ヤッちゃん」

屋上の扉前で外を覗き込んでいた俺に、先に戻ってきた波砂は少し怒ったような表情で、オレの肩をパンと叩いた。

波砂はオレの母の妹なので、オレの叔母である。
分かりやすくサザエさんで説明すると、オレがタラちゃんで波砂がワカメちゃんだ。
それが波砂は恥ずかしいのか、絶対黙ってるようにと言うが、オレと波砂の顔のパーツは大きさ以外そっくりである。
まあ、こんだけ似ているし周りにも親戚とはいってはいるのだけど。
「大丈夫、今さら返せとかいわないわ。……トウル、あんたに襲われたのがきっかけとか言ってたけど。本当にそんな卑怯なことしたの?」
半信半疑な顔で聞いてくる。
「……したよ。トールを殴ってスタンガンで気絶させて、縛って無理矢理犯したよ。それくらいの既成事実でもなきゃ、腹くくれないよ」
オレの言葉に驚いて一瞬目を見開いたが、はーっと深々とため息をつかれる。
「ヤッちゃん、アンタ…………ホントに最低ね。あんたもトウルのこと言えないくらい鈍感だよね。トウルはずっとヤッちゃんのこと好きだったよ。付き合ってた時も、よく言ってたよ。ナズはヤスに似てるから一緒にいて安心するって」
少し悔しそうに言う波砂の言葉に自分も同じような気持ちだったことを思い出す。
自分に似た波砂と付き合うなら、まだ仕方が無いかなとか思った。
波砂と結婚したらトールはオレの叔父さんになるのかとか想像したこともあった。

「本当に好きな相手には、いつまでたっても自信とかないもんだ。どうせ叶わないならと思ってオレは思いを遂げた。まさか許してくれるとは思わなかったけど」
「そうね。なんだかんだトウルはヤッちゃんに甘いからな。女子にヒドイ噂流されてるわよ。トウルのこと大事にしてるなら、ちゃんとどうにかしてよね。根回しはしてあげるけど。あんまり酷いことばかりしてたら、またわたしが奪い返すからね」
冗談ぽい口調で憎まれ口を言って、ぽんぽんっと階段を降りていく波砂の背中を見て肩をすくめる。

素直じゃないのは遺伝かもしれないな。
なんだかんだ、波砂はトールを今でも好きなのだ。

女の子たちを丸め込む方法なら、いろいろ知っている。
周りを牽制するのもいいかと思ったけど、波砂のいうとおりだな。

オレは、重い鉄の扉をあけて、フェンスにもたれてだるそうにタバコを吸っている東流に向かって歩き始めた。
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