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夏休み編
それでも大事な親友だ →side S
しおりを挟むガチャっと勢い良く部屋の扉が開き、足元がよく拭けていないのか拭いていないのか、床を足跡の形に水浸しにしてタオル一枚だけ腰に巻いて、東流は部屋に戻ってきた。
「セージ、ルール決めたから聞け。コレから、この部屋入る前にチャイム鳴らせ。居るかいねえかわからなくても、そうしろ」
東流はなんの脈略もなく、相変わらずの自分ルールを制定して俺に施行する。
俺だって、まあ、ダチ同士の情事を好きで見たわけじゃない。
正直勘弁してほしいし、本当に心底見たくはない。
「ああ、そりゃルールきめねえでもそうするけどよ……。つか、東流、康史に強姦されたんだべ。怒ってねえの?」
やっぱり不思議すぎて、康史の前ではデリカシーないなとか思うけど、 聞いてしまう。
ちょっと東流は眉を寄せて唇を引くと、話したのかと問うようにちらっと康史を見やる。
「しょうがねえべ、ヤスが俺を強姦してもヤリてえくらい好きだってンだし。まあ、そんなに痛くはなかったしなあ」
おいおい、東流よ、そこはしょうがない、でいいのか。それで済む話なのか。
思わずツッコミいれたくなるが、東流は、軽く笑ってみせる。
「確かに、強姦でもされなきゃ一生気づかなかったかもしれねえけどさ。嫌がらせされるくらい嫌われたと思ったからさ……辛かった。まあ、セックスはキモチいいし、イヤじゃない」
東流の言い分は、相変わらず小学生の思考回路と変わらない。
そして、裏表がなく短絡的だ。
「……康史、オマエよかったな。東流がアホで」
「あァ?!どういうことだよォ、セージ、ディスってんのかァ?アホとか言うな」
ソファーの後ろをドスドスと蹴られて、少し体勢を崩しながらアホな親友の顔を見返した。
康史は水濡れしたフローリングを、東流の後をついてタオルでぬぐっている。
「オマエらが幸せなら俺はかまわねえけどね。キモチーかもしれんけどよ、セックスばっかしてねえで、高校最後の夏休みだし、俺とも遊べよ」
東流が不服そうな顔で、背後から俺の肩に頭を載せてくる。
「そうだよな。でもよセージ、ヤスがひでえんだよ。朝起きると大体縛られてンだぜ、俺だって遊びにいきてえのに。みてよ、コレ」
腕を伸ばして、東流は俺に手首を見せつける。
擦過傷と強く縄かなにかが食い込んだのか鬱血した跡が無数に残っていて、端から見ても無残である。
「ひでえな。……康史のAV、マニアックなのばっかだしな。まあ、付き合うんだし、そういう趣味も我慢してやれよ」
「待ってよ。トールもキモチイイって言ったじゃんよ」
俺にまで非難されて、少し拗ねたように言葉を返す康史に、東流はニヤニヤと楽しそうに笑う。
「背中も足も、今すげえエロい痕だらけだから、プールとか海は無理。なーのーでー、ツーリングしよーぜ」
すくっと立ち上がって、東流は部屋のクローゼットから康史の服を選んで身につけ始める。
ちょっと服がパツパツで無理がある気もするが、まあ大丈夫だろう。
喧嘩でイキんだら、北斗の拳みたく服破れるんじゃねえかな。面白いから、それはやめてほしい。
「わかったよ。でも、トール、オネガイだから暴走族に喧嘩売らないでね」
康史も立ち上がって、服を物色し始める。
二人が、幸せそうだから俺は特にそれ以上の追求はしないことにした。
ダチが幸せなのが、一番だ。
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