俺たちの××

怜悧(サトシ)

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夏休み編

性癖と受容 →sideT

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知ってはいたつもりだ。
なんとなく分かってはいた。

「なあ……ヤス……。オマエ……どSだろ……」 

なんとか意識を取り戻し、ザーメン塗れになった体を康史に拭かせながら、俺はぼんやりとつぶやいた。 
叫びすぎたのか喉がカラカラに枯れてしまって、ずっしり体が重たい。 

「そ、そうかな。普通じゃないか?オレが持ってるAVと、そうそうかわらねえと思うけど」 
視線をさまよわせながら誤魔化そうとしている康史の綺麗な顔に、俺は腕を伸ばしてデコピンをかます。
ぐったりしている俺を気遣って、デコに冷えピタも貼ってくれる。普段はこんなにも優しい奴なのにな。 
ギャップがデカすぎるにも程がある。
「オマエのコレクション、拘束とか調教とか、そんなんばっかじゃねえか。ソレ標準にすんなよ」 
「でも、トールもキモチよかったんだろ?」 
自信ありげに顔を覗き込まれ、ヤル前よりすごくいい顔をしてるなと思うと少し嬉しくなった。 
好きだとは告げたが、多分半信半疑な顔をしていた。
多分、ガキの頃からずっと好きだったのかもしれないと思う。
だけど、オレは男と付き合えるとは思ってなかった。
それに周りから女の子のような扱いされるのを嫌っていた康史だから、無意識に諦めて顔が似ている波砂と付き合ったのだと、今なら思える。
「まあな……途中からぶっとんで覚えてねえけどな。クスリ入りはもう勘弁だな。覚えてねえのヤダし」 
うっすらと残る記憶のなかで、ここぞとばかりにいやらしいことばかり言わされたりした気もするが、どうやら記憶が曖昧だ。 
すげえ恥ずかしかったのだけは覚えている。
「そ、そうなのか。あ、ちゃんと動画残したから後で見ればいいよ」 
スマートフォンを翳してへらっと笑っている康史を俺は凝視した。 
ちょ、動画とかいつの間に撮ってやがったんだ。 
反射的に俺は康史の腹にかなり加減したクリーンヒットをカマしていた。 
「今すぐ、消せ。ぶっ殺すぞ」 
「痛、ッ、ちょ、暴力反対。…え、もったいな……」 
嫌がる康史に俺は腕を伸ばして、スマホを握る手をつかみ寄せる。
「そのスマホ、二つに折るぞ」 
脅しをかけて、康史がしぶしぶ動画を消すのを見届けながら、俺は深くため息をついた。 

このまま康史のSM趣味で調教されちまうんじゃねえか………俺。 

多分、俺は康史の性癖を拒絶できないだろうな。

うすら寒くなる背筋にぶるっと身を震わせて、動画を消してすりよってくる康史の体を抱きしめベッドに招き入れた。 

それでも、好きなんだからまあ、仕方ねえな。
俺は、康史の性癖でもなんでも全部受け入れてやっても、いいと考えていた。
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