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夏休み編
欲しいものは、今奪うしかない→sideY
しおりを挟むようやく.......。
ようやく.......願いを叶える時がきた。
心臓はバクバクと派手に音を立てている。
呼吸も荒くなっていて、いつ止まってしまうか分からないくらいの全力疾走である。
いつものように部屋でAVを観ていた東流を、オレは背後から思い切り不意打ちで殴り、ナックルタイプのスタンガンで電気ショックを与えて気絶させた。
クマ並みにタフな東流のことだ、早くことをすませなきゃ、すぐに気がついて反撃される可能性は高い。
胸の鼓動を抑えて、ぐったりして痙攣する重たい体を抱えて衣服を剥ぎ取り全裸にした。
AVを観ていたというのに、東流の下半身は全くといってなんの兆しもない。
昔から東流は、性欲には殆ど無関心だった。
ベッドへと転がすと、手首をビニールテープで巻きつけ、ベッドヘッドの柵に括りつける。
「……怪力、だからな」
両脚を開かせ、部屋に置いてあった護身用の鉄パイプを膝裏へ挟んでビニールテープでくくりつける。
「ゴメン……な。でも……好きなんだ」
謝ったとしても、これからやるコトは最低なことには変わりない。
好きだとか以前に、許されることじゃない。
これは、計画的犯罪。
もう一度念のためにと、スタンガンを握って東流の首元へと押し付ける。
流される電流にビクンビクンと痙攣で体が波打つ。
晒されたアナルへ、媚薬のチューブをあてがいゆっくりと中に注入する。
後で彼に殺されても構わない。
指を差し込むと温かく、チューブのぬめりを借りて浅くぬちぬちと抜き差しを繰り返す。
堅くとざされていたそこは、ほぐれはじめて内股が時折震えを繰り返す。
もう、後戻りはできない。
欲しくて、欲しくて……たまらない。
本当に……卑怯で、間違っているけど……。
でも、本当に……欲しいんだ。
こんなに、オレが焦りで必死になっているのはあの時からだ。
3年に進級して1ヶ月がすぎた頃、進路相談が始まったころだった。
進学校であるうちの学校では、ほぼ全員が進学希望だが、彼がそうするとは日頃の様子から思えず、オレは問いかけた。
「あのさ、トールは進学するのか」
折角進学校にきたのだからそっちもあるかもしれないと、念のために聞いてみた。
もう3年になったというのに、相変わらず喧嘩三昧の日常で、やればできるのに勉強になど手をつけている様子はない。
「アァー?なーんか、オヤジのダチんとこで働くことにした。運送業者。アレ、言ってねかったか?」
屋上の金網に寄りかかって空を見上げ、脱色し過ぎてほとんど色を無くしたバサバサの髪を風に靡かせながら答えを返す。
きっと東流には、全く他意はない。
オレは勿論進学するつもりである。
東流が働くようになったら、生活の時間もなにもかもが、学生とは違ってしまう。
「聞いてない」
「悪ィ。まあ、卒業したらの話だしな。まだ、先だろ。ヤスは大学いくんだろ、学校のトップだしな」
「……そのつもりだけどさ……」
オレは東流に合わせて高校もかなりランクを落とした。
それくらい東流と一緒にいたいと思っている。
オトナになったらずっと一緒にいられるようになる、なんて……ガキの時の思い込みだってのは分かっている。
今……、でも今どうにかしないと、東流はどんどんオレから離れていってしまうだろう。
「ンだよ、何て顔してンだ、ヤス。」
くしゃっと大きな掌がオレの頭を捕らえて髪をかき乱す。
見上げると鋭くとがった目が、光を緩めてオレにだけ見せてくれる笑顔が、視界いっぱいに入ってくる。
これを全部オレのものにしてしまいたい。
他のやつらには見せたくない。
なんて醜い独占欲だろう。
「じゃあ、誕生日きたら免許とりにいくんだな。オレはもう取りにいっちゃったけど」
東流の隣に座って俺も金網に寄りかかる。
東流のオヤジさんはヤクザなので、その関係というから危ない仕事を予想していたが、思ったよりも普通の会社のようだ。
「えぇええ!オマエ、いつの間に抜け駆けしてンだよ」
ちょっとふくれっつらでオレを見返す様子が、とっても可愛い。
これがここら辺で鬼だの悪魔だの言われている彼の素顔で、オレにだけ見せてくれているのが嬉しくて仕方がない。
「オレのが誕生日はええのは仕方ねえでしょ。トールの誕生日まで待てなかったしな、丁度受験シーズンだし」
「そらそうだなァ。ちィ、オマエだけ車乗れるとか、ちょー羨ましいンだけど」
心底悔しそうに唇を尖らせてる拗ねた顔も、何もかもオレだけのものにしえ閉じ込めてしまいたい。
10年以上拗らせた初恋は、オレの心をしっかり蝕んでいる。
「助手席乗せてやるから、我慢しろ」
親が誕生日祝いにと、軽自動車をプレゼントしてくれた。
本当にオレの親は甘いと思う。
「じゃあよ、夏休みにさ…………海、連れてけ」
命令し慣れた様子で、満面の笑顔を浮かべてオレを顔を覗き込む様子に俺は笑い返した。
「いいよ」
「セージ誘おうか?」
無粋にも東流はもう1人の親友の名前を口にする。
「……誠士は夏大会の試合じゃないか?」
「そうか、じゃあ二人でいくか」
嬉しそうに笑って腰をあげ、東流ががっしりとした体を伸ばすのを見上げてオレは、今しかないのだという言葉を心の中で繰り返した。
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