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第二話 イザリス砦に棲む獣
世界、滅ぼせし者 Part.3
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頭はおろか、心臓までも失った化物の死体、中身を亡くした器となりはてたはずなのに、化物はぞろりと立ち上がり、まるで目覚めたように身体を震わせる。
それはまさしく覚醒の印だった。
信じられない事態に立ち尽くすレイヴン達の前で、化物はみるみる身体を変化させていき、泡立つ傷口からは無くした部分までもが再生していく。
一呼吸か、二呼吸、流れた時間はその程度だったが、転げ落ちた絶望の坂はかなりの深さにまで至っていた。化物を……いや、巨岩の如き邪悪な龍人を見上げるレイヴンは、魔力を読めない人の身でありながら、その龍人の異質を感じ取り、じりじりと距離を取ろうとする。
相手がどう出るにせよ、こちらから仕掛けるにせよ近すぎると、そう思って……。
しかし、彼は龍人の眼からは逃れることが出来なかった。
龍人は言う。しゃがれた、まるで地獄の底から響くような声で。
「……貴様か、人間? 我輩を解いたのは」
「さあ……どうかな…………」
答えるレイヴンだが、ほとんど声になっていなかった。
会話に使う神経さえも惜しい。言葉に出来ない何か、不穏でありながら魅力的な何かに首を絞められているような感覚が、彼を呑み込もうとしていた。
汗が噴き出してくる。
「臆すな、人間。永劫とも思える深淵より我輩を解きし者よ、貴様に褒美を取らそう。望みを言ってみるが良い、魂の奥底に渦巻く欲求を我輩が満たしてやろうではないか」
「……あんたは、何者だ」
馬鹿な質問だ。口にしながらレイヴンはそう思うが、他には何も出てこず、奇跡的な間違いで最悪な返事が返ってこないことを祈る。
残念ながら、無駄な祈りだったが。
「我が名はディアボロス、復活せし三界を統べる支配者なり」
それはまさしく覚醒の印だった。
信じられない事態に立ち尽くすレイヴン達の前で、化物はみるみる身体を変化させていき、泡立つ傷口からは無くした部分までもが再生していく。
一呼吸か、二呼吸、流れた時間はその程度だったが、転げ落ちた絶望の坂はかなりの深さにまで至っていた。化物を……いや、巨岩の如き邪悪な龍人を見上げるレイヴンは、魔力を読めない人の身でありながら、その龍人の異質を感じ取り、じりじりと距離を取ろうとする。
相手がどう出るにせよ、こちらから仕掛けるにせよ近すぎると、そう思って……。
しかし、彼は龍人の眼からは逃れることが出来なかった。
龍人は言う。しゃがれた、まるで地獄の底から響くような声で。
「……貴様か、人間? 我輩を解いたのは」
「さあ……どうかな…………」
答えるレイヴンだが、ほとんど声になっていなかった。
会話に使う神経さえも惜しい。言葉に出来ない何か、不穏でありながら魅力的な何かに首を絞められているような感覚が、彼を呑み込もうとしていた。
汗が噴き出してくる。
「臆すな、人間。永劫とも思える深淵より我輩を解きし者よ、貴様に褒美を取らそう。望みを言ってみるが良い、魂の奥底に渦巻く欲求を我輩が満たしてやろうではないか」
「……あんたは、何者だ」
馬鹿な質問だ。口にしながらレイヴンはそう思うが、他には何も出てこず、奇跡的な間違いで最悪な返事が返ってこないことを祈る。
残念ながら、無駄な祈りだったが。
「我が名はディアボロス、復活せし三界を統べる支配者なり」
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