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第二話 イザリス砦に棲む獣

0.45インチの声を聞け Part.4

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 強烈な雨風に雷と、昨晩は酷い天気だった……らしい。
 魔力の使いすぎで一日中ベッドの住人とかしていたレイヴンは知らぬ所だが、とにかく、昨晩の空は大荒れだったと少年は言った。

「――夕方くらいから、雷も鳴りはじめてさ、風はうるさいし、雨もどっさり降ってくるし、雷はどっかんどっかん鳴ってたんだよ。夜になってからもっとスゴくなってさ……あんちゃん知らなかったの?」
「昨日は疲れて寝てたからな。――どうだ、アイリス? そんなに荒れてたのか」

 と尋ねれば、アイリスは自慢げに鼻を鳴らした。

「ふふ~ん、わたしが雷程度に怖じ気づくと思います、レイヴン? ぐっすり寝ていたので覚えてません。けれど、彼の言う通りの天気だったのなら、わたしは一つ納得できることがありますよ」
「……え? 何のことだい、おねえちゃん」

 少年だけが置き去りというのも気の毒なので、説明は必要だろう。その役目はレイヴンが引き継ぐ。

「銃声だ。夜中に撃ち殺されたのなら、誰かが気付く。砦の中で、しかも静かな夜に撃ったとなれば、絶対にな。……そんなにスゴい雨だったのか? 銃声が消えるくらいに」
「うん、たぶん……、拳銃撃ってもわからなかったと思うよ。家の中で話すのも大変だったんだ、ずぅ~っとピシャゴロいってておっかないったらないよ……」
「朝までずっとです?」
「まちがいないよ、眠れなかったんだから」
「それで? どうしてお前が死体を見つけたんだ」
「レイヴン、言葉選び!」
「はいはい、分かったよ……」

 小声で叱られ、レイヴンは肩を竦める。
 そんな些事に拘っている場合ではないだろうに。

「どうしてお前がキャロルを見つけたんだ、家にいたんだろ」
「あ……えっと…………、トイレに行こうとして……、雨止んだからさ……」

 歯切れが悪い。
 が、ここを突く事こそ意地悪だろう、誰にだってガマンには限界があるものだ、片付けるには「なるほど」の一言で充分である。

「じゃあ、便所に行く途中で見つけたのか」
「表通りより路地裏(こっち)とおった方が近いからね。そしたら、そこに……キャロルがいてさ……」

 蘇る記憶はほんの数時間前の出来事だ、慕っていた人物の最後の姿を花束に重ねて、少年の口元は強張る。

「最初はさ、分からなかったんだキャロルだって……。ずぶ濡れで壁に寄り掛かってて、眠ってるみたいだったんだ。でもさ、おかしいだろ? あんなに雨が降ってたのに、外で眠ってるなんて……。それで、声かけてみたんだ、でも起きなくて、顔を覗き込んだら……」

 額には風穴
 そうして、目を見開いたままのキャロルの死に顔を少年は目の当たりにした訳だ。
 思い出すのも辛かったろう、顔面蒼白となった少年をアイリスは抱きしめてやっていた。

「よしよしです、大丈夫ですよ。なにも怖くありませんから。よく話してくれました、きみはとっても勇気があります。キャロルさんも、きっと褒めてくれているはずです。――ですよね、レイヴン?」
「少なくとも疑問は見つかった、お手柄だ」

 死者がどう思うかなど知る由も無く、当然明言など出来ようもない。しかし、少年は間違いなく、死者の為になる物を見ている。
 少年を元気づけているアイリスもその事に気が付いたようで、壁面にざっと目を走らせると首を傾げた。

「この場所、何かおかしいです」
「今日は鋭いな、アイリス。そうだ、変なんだ」
「そうでしょう、そうでしょう、もっと褒めてくださいです」
「……どこが変なのさ、ぼくには分かんないよ」

 落ち着きを取り戻したのか、少年はアイリスの胸から顔を上げて尋ねた。
 一見しただけでは中々気が付かない不審点、そいつは普段から銃を扱う人間しか気にならないような些細なもので、そこに目が行ったということは、アイリスも伊達に銃を扱う人間の傍にいないということか。

「キャロルさんは壁にもたれていて、額を撃たれてたんですよね? それはつまり、壁を背にした状態で、正面から犯人に撃たれたということですけど、そうなると、おかしな点があるんですよ」
「……別に、壁にはなにもないよ?」
「そうですよ、何もないのがおかしいんです。ほら、この道は狭いでしょう? 仮にレイヴンが拳銃を使って、壁際に立っている人を撃とうとしたら、それだけで道を塞いでしまうくらいです。……そんなに近いところで撃ったら、レイヴン、銃弾はどうなるんです?」
「頭を貫通して、壁にめり込む。口径にもよるが、デリンジャーでもない限り、この距離なら貫通するだろうな。だが――」
「――壁にはその跡がありません。つまり――」
「……キャロルが撃たれたのは、ここじゃないってこと?」

 その通り。
 だが、少年はまだヴァネッサがやったのだと信じているようであった。

「じゃあ、他の場所で殺してここに隠しに来たんだ。ペンダントが盗まれたって言ってたし、ここまで連れてきて、盗んだのかも」
「盗みが目的なら殺したその場で盗って逃げるし、銃なんて目立つ物をあの女は使わない。それに考えてもみろ、ヴァネッサが殺しをやったとしたら、何故朝まで砦に残ってた。すぐに逃げりゃあ掴まりゃしねえのに」
「そういえば、そうですね。当たり前すぎて見逃してました」
「あ、うぅ……それは…………」

 大人げなかったかもしれないが、考えれば考えるほど不自然な点ばかりが目立ってくる。まるで、そう、強烈な意志、いや恨みの様なものが這いずる音が聞こえてきそうなくらいに。

「おやおや、困りますなヴァンクリフさん……」

 ぐずぐずの地面、その水溜りを踏みして立っているのは、沈痛な面持ちのサイモンだった。

「それにアイリスさんも、幼気(いたいけ)な少年を尋問するなど感心できない。キャロルを失い、そして彼は最初に彼女の死に触れた、彼も被害者だと考えなかったんですか? ――きみ、平気かい?」

 が、少年は後ずさり、そのまま走り去ってしまった。

「ふぅむ、子供にはどうも好かれない。妹のようにはいかないな……」
「何か用か、町長?」

 応じたのはレイヴンだった。アイリスに相手させるのは危ないと、彼は直感でそう感じていた、なにやらキナ臭い気配がする。

「いやなに、貴方がたの様子を見に来ただけです。住民達の間で、御二方も妹の事件に関わっているのではないかと疑う声があり、心配になりまして」
「……ご親切にどうも」
「私は無論、無関係だと信じています。なにしろヴァンクリフさん、貴方は化物を退治してくれた英雄ですからね。……しかし、この場を目撃してしまったからには、私も考えを改めざるおえません。悪いことは言いません、すぐに町を離れた方が良い」
「ヴァネッサが殺ったのか、あんたの妹を」

 一旦、忠告は無視して、レイヴンは疑問をぶつける。
 罪人として吊るすからには、それなりの根拠があるはずだ。

「調べもせずに処刑したりはしません、妹は誰にでも公正な態度を望んでいましたからね、私もそれに則って調べました。処刑は、その結果です」
「証拠はあるんです? 町長さん?」

 我慢できなくなったのか、ついにアイリスが口を開いた。ムッとした口調、彼女は明らかに怒りを抱えている。

「アイリスさんが憤るのも無理はないが、彼女は妹のペンダントを持っていた。そしてなにより、昨晩、現場から立ち去る彼女の姿・・・・・・・・・・・・が目撃されているんですよ。目撃者は言いました、犯人は、白い髪のダークエルフだったとね」
「……そんな、そんなの、ヴァネッサとは限らないじゃないですか。町の人が、もっともらしい人物を犯人にしようとしているのかも」
「アイリスさん、今のは酷い難癖ですよ。確かに住民からの情報ならその線も疑いますが、この目撃者は昨日砦に来たばかりの人物で妹と蒼肌については何も知らず、罪を着せるような理由もない、そしてなにより、今この砦にいるダークエルフは、ヴァネッサを置いて他にいない! すべては彼女が犯人であると示しているのに、まだ疑問がありますか!」
「あぅ……、そんな、レイヴンどうしたら…………」
「ない、な」

 言葉に窮したアイリスに代わり、ぽつりレイヴンが溢す。

「反論はない」
「レイヴン⁈ どうしたんです突然ッ⁈」
「部外者が見てたんだろ? 逃げるヴァネッサの姿を。それじゃあ疑いようもねえ、ヴァネッサが殺ったんだ」

 髪逆立てるアイリス。
 しかし彼女の感情など意に介さず、サイモンは極めて冷静に微笑みを浮かべた。

「理解してくれて嬉しいですよ、ヴァンクリフさん。ですが、やはり残念ですが、町からは出た方が賢明でしょうね、先程の子供から噂が広まるでしょうから。お二人がキャロル殺害犯を庇ったと知れれば、何をされるか……。英雄を追い出す形になり心苦しいが、怒りに燃える住民達がどういった仕打ちをとるか、予想もできませんので」
「忠告、痛み入るね。早々に町を出るとするさ、ダークエルフの巻き添えで吊るされたんじゃ、笑い話にもなりゃしねえからな」

 きっと笑いものにはなるだろう、死人に話してやったら酒が進むこと請け合いの、間抜けな死に様といえ、そんな無様は願い下げ。誰しもが抱く、馬鹿馬鹿しい死を避けてやると、サイモンはお辞儀をして去って行く。

「それでは、私はこれで失礼する。お二人の旅の無事を祈ってますよ」

 …………
     ………………

「レイヴンッ! 今のは一体どういうつもりなんです⁈ 事と次第によっては、いくらレイヴンでもわたしは――ッ」

 サイモンの姿が見えなくなるなり、これでもかとばかりにアイリスはがなる、あっけなさ過ぎる掌返しにもうそれこそ怒り心頭であった。まぁ無理もないが、不意にカッカ来ている頭を、レイヴンに指先で弾かれて彼女は面食らった。

「な、何するんです! わたしは怒って――イタッ! ちょっと止めてくださいです!」
「お仕置きだ、お前まで本気にしやがって」
「えっ……? それじゃあ……」

 敵を騙すには味方から、そんな諺もあるくらいだが、あんな簡単な芝居に易々と釣られる姿を見てると、レイヴンはむしろアイリスの方に憤りを感じてしまう。それなりの時間を共に過ごしているのだから、分かり易い嘘くらい見抜いて欲しいものだ。

「ヴァネッサは、やっぱり無実だと?」
「八・二で白だと思う。やっぱり、ヴァネッサには理由がねえ」
「ですよね、ですよね! それじゃあ、サイモンさんに伝えに行きましょう、彼女は犯人ではないと」

 そうしてアイリスは意気揚々と路地から出ようとするが、まったく勘違いも良いところで、すぐさまレイヴンに呼び止められた。

「おいおい、どこ行く気だアイリス」
「決まってるじゃないですか、サイモンさんのお家です」

 レイヴンは頭を振る。それで話が済むのなら、そもそもヴァネッサが吊るされるような事態にはなっていないのが、まだ分からないらしい。或いは、信じたくないのかもしれないが、とにかく路地を出て行く先はサイモンの家であってはならない。下手をすれば、そのまま処刑台行きの道なんてまっぴら御免なのである。

「まずは宿に戻って荷造りだ、ヴァネッサの事はその後だ」
「そんなことしてたら手遅れになっちゃいます」
「とっくに手遅れだ。今更話し合いなんて無駄なんだよ、住民がヴァネッサの絞首刑を望んでる、平和的方法じゃあどうやって止められない」

 こういう時こそ口を開かせるべき物がある。
 そいつは、いつでもレイヴンの腰に提がっていた。耳に痛い正論よりも、火薬のパーカッションの方が誰とっても分かり易いものだ。

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