10 / 101
第一話 拳銃遣いと龍少女
悪魔の銃を持つ男《ピストレーロ デル ディアブロ》 Part.2
しおりを挟む
卵七個、パン八切れ、牛肉の塩焼き二切れ、豆煮を三皿
重労働、かつ過酷な環境である西部では、喰える時に詰め込むのが基本とは言え、目を見張らざるおえない。
風呂ですっかり汚れを洗い流したアイリスは、着替えるよりも先に運ばれてきた朝食に大喜びで飛びついたが、自分よりも大量の食べものが、タオル一枚に包まれた細身のどこに収まっていくのかと、レイヴンは不思議でならなかった。
「これが食事なんですね、もぐもぐ……」
「取りゃしねえから、もう少し落ち着いて喰ったらどうだ」
「止まらないんです、料理とはこんなに幸せな気持ちになるんですね」
タオルで肌を覆っただけで貪むさぼる姿の浅ましさ。
当然のように素手で料理をかっこむアイリスは、動物と呼ばれても仕方ないくらい行儀がなっていなかった。そういった習慣の部族で育ってきたのなら無理はないが、さすがに見かねたレイヴンは苦言を呈す。
「アイリス、いったん手を止めろ」
「はい……? どうかしたんです?」
彼女の口元は、ソースやら肉汁やれでぐちゃぐちゃだったので、ナプキンで綺麗に拭ってやってからレイヴンは食器の使い方を教えてやる。このまま外に出したのでは、確実に彼女は恥を掻く。
「なにもない時は仕方ないが、こういう場所では食器を使うんだ。部族には部族の習慣があるし、アトラスにはアトラスの習慣がある。ナイフとフォーク、スプーンを使って食べるんだ、別に難しくはない」
「……面倒じゃないですか? 食べるのは同じなのに」
「ナイフは切るのに便利だし、スプーンは掬うのに適してる。無理くりかっこむより最終的には効率的だ。あと、こっちの方が見栄えが良いぞ」
するとアイリスは、自分とレイヴンの汚れ具合を見比べ、それから食器へと目を落とした。
「レイヴンは、わたしに見栄え良くなってほしいんです?」
「上品に見えて不満には思わないだろ。お前の文化を否定はしないし、それに使いかたを覚えておいて損はない」
「なら、頑張ります!」
奮起するほどでの事でも無いのだが、アイリスはふんすと鼻を鳴らすやスプーンを鷲掴みにして、見よう見まねで豆を掬ってみるが、やはり初めての事らしく中々苦戦していた。皿に残された豆の一粒が彼女の練習相手となるが……。
「む~、手強いです……。豆一粒がこれほど強敵とは……!」
「そのうち慣れるさ、あとは練習だな」
綺麗に食べきったレイヴンは、身支度を調え始める。
シャツの上からベストを合わせ、ガンベルトを腰に巻く。右手に革製の手甲を付けて、最後にハットを被れば準備完了。ポンチョは留守番だ。
アイリスにも準備はあるが、彼女の場合はロングコートを羽織るだけなので、二秒もあれば済んでしまうだろう。乱雑にかけてあったコートを渡してやろうとレイヴンが振り返ると、彼女はもぐもぐと口を動かしていた。
皿は空だが……
「ズルしたな?」
アイリスは、てへへと笑ってみせた。
重労働、かつ過酷な環境である西部では、喰える時に詰め込むのが基本とは言え、目を見張らざるおえない。
風呂ですっかり汚れを洗い流したアイリスは、着替えるよりも先に運ばれてきた朝食に大喜びで飛びついたが、自分よりも大量の食べものが、タオル一枚に包まれた細身のどこに収まっていくのかと、レイヴンは不思議でならなかった。
「これが食事なんですね、もぐもぐ……」
「取りゃしねえから、もう少し落ち着いて喰ったらどうだ」
「止まらないんです、料理とはこんなに幸せな気持ちになるんですね」
タオルで肌を覆っただけで貪むさぼる姿の浅ましさ。
当然のように素手で料理をかっこむアイリスは、動物と呼ばれても仕方ないくらい行儀がなっていなかった。そういった習慣の部族で育ってきたのなら無理はないが、さすがに見かねたレイヴンは苦言を呈す。
「アイリス、いったん手を止めろ」
「はい……? どうかしたんです?」
彼女の口元は、ソースやら肉汁やれでぐちゃぐちゃだったので、ナプキンで綺麗に拭ってやってからレイヴンは食器の使い方を教えてやる。このまま外に出したのでは、確実に彼女は恥を掻く。
「なにもない時は仕方ないが、こういう場所では食器を使うんだ。部族には部族の習慣があるし、アトラスにはアトラスの習慣がある。ナイフとフォーク、スプーンを使って食べるんだ、別に難しくはない」
「……面倒じゃないですか? 食べるのは同じなのに」
「ナイフは切るのに便利だし、スプーンは掬うのに適してる。無理くりかっこむより最終的には効率的だ。あと、こっちの方が見栄えが良いぞ」
するとアイリスは、自分とレイヴンの汚れ具合を見比べ、それから食器へと目を落とした。
「レイヴンは、わたしに見栄え良くなってほしいんです?」
「上品に見えて不満には思わないだろ。お前の文化を否定はしないし、それに使いかたを覚えておいて損はない」
「なら、頑張ります!」
奮起するほどでの事でも無いのだが、アイリスはふんすと鼻を鳴らすやスプーンを鷲掴みにして、見よう見まねで豆を掬ってみるが、やはり初めての事らしく中々苦戦していた。皿に残された豆の一粒が彼女の練習相手となるが……。
「む~、手強いです……。豆一粒がこれほど強敵とは……!」
「そのうち慣れるさ、あとは練習だな」
綺麗に食べきったレイヴンは、身支度を調え始める。
シャツの上からベストを合わせ、ガンベルトを腰に巻く。右手に革製の手甲を付けて、最後にハットを被れば準備完了。ポンチョは留守番だ。
アイリスにも準備はあるが、彼女の場合はロングコートを羽織るだけなので、二秒もあれば済んでしまうだろう。乱雑にかけてあったコートを渡してやろうとレイヴンが振り返ると、彼女はもぐもぐと口を動かしていた。
皿は空だが……
「ズルしたな?」
アイリスは、てへへと笑ってみせた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷女が聖女。
サラ
ファンタジー
冷蔵庫を背負った聖女の略称は冷女でした。
聖女が幸せに過ごす事でその国の豊穣が約束される世界。
『聖女召喚の儀式』で呼び出された玲の称号は『冷女』そして、同時に召喚された従妹のシオリは『聖女』
冷たい女はいらないと捨てられた玲だったが、異世界のステータス開示で見られる称号は略称だった。
『冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』の略称は『冷女』、『聖女に巻き込まれた女』の略称は『聖女』
そして、玲の背中にまるで、背後霊のように付いている冷蔵庫。この冷蔵庫は人には見えない。でも、冷蔵庫はとても便利でサバイバルにピッタリ。しかもレベルが上がると色々と便利な用途(機能)が使えるようになり、冷蔵庫さえあれば生きていくのに問題はない。
これは異世界で冷蔵庫と共に召喚された聖女が幸せになり異世界があるべき姿に戻るお話。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる