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第一話 拳銃遣いと龍少女
夜空に架かる虹 Part.2
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「わたし、アイリスっていいます」
その女は少女と呼ぶに相応しい外見で、十七歳かそこからだ。
背は低めだが、顔立ちはどこか年齢よりも大人びていて、可愛いと甘やかすより美人と褒めるべきだろう。自由奔放な金髪は腰ほどの長さがあり、同じく黄金の瞳は太陽に照らされた小麦のように、灯りの傍ではくっきりと力強い。その癖、彼女の肌は四六時中太陽の照りつける西部には珍しく、雲のように白く透き通っていて、その剛柔が絶妙なバランスを保った芸術的な美しさは、なるほど、攫われそうになるのも納得がいくものだった。
まぁ一度、助けたんだ二度でも同じだろう。
そう考えていた旅人だったが、いささか考えが甘かったと痛感する事になる。
「兎は初めて食べましたけど、意外とおいしいですね」
餓えた少女に食事を出してやれば、まぁ食べること食べること。
少女は一切躊躇いなく、両手で肉を鷲掴みにし、それこそ男でも引くくらいにがっついていた。これから先、男絡みで困ったならば食事に誘ってみれば解決しそうなくらいに、品というものがなく、これに比べれば先住民やオーク族の食事風景のなんと文明的な事か。食事を恵んでいるというより、動物に餌付けしている気分だ。
骨に付いた肉片まで綺麗に平らげると、彼女はマントで口元を拭い、実に満足げな笑みを浮かべる。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます、二度も助けてもらって」
「まるで野蛮人だな、どれだけ飯喰ってなかったんだ」
「さぁ? 忘れちゃいました」
休む事を一時諦めた旅人は、自分のコーヒーを淹れるついでに、少女にも一杯淹れてやると石壁に再び背中を預けた。
揺れる炎を眺める少女は、なんというか幻想的な存在に思える。
悪くない、美人だ。さぞ言い寄る男も多いだろう。
ふと、顔を上げた少女と目が合い、旅人はハットを目深に下げる。炎の灯りを押しのけるほど少女の笑みは眩しい、強烈すぎる魅力ってのは度数の高い酒と同じで、いきなり摂取すると身体に悪い。
「――? どうかしました?」
「いや、なんでもない。お前こそ、なんの用で俺を探してたんだ」
「ああ、そうでした! すっかり忘れてました」
パンと彼女は両手を打つ。それにしても少女の声は元気が良く、夜の荒野によく響く。先程まで餓えてひーひー言っていたとは思えない。
「お礼をしようと思ってたんです、町で助けてもらったので。危ないところでした」
「…………それだけか?」
「はい、それだけですよ? 本気を出せれば、あんなのなんてことないのですが、今日は日が悪くて」
わたし、つよいんですよ、と少女は笑うが、随分大きく出たものだ。見たところ少女は着の身着のままといった様子で、馬もなければ、装備も無し。マントの下に銃を提げている可能性はあるが、抵抗できずに攫われかけた事を考えれば丸腰だろう。
そもそも徒歩で荒野を移動するなど、隣町まででも準備不足どころか自殺行為も甚だしい、馬鹿のやる事だ。西部での移動には馬が必須、そんな当たり前の事さえ気に留めず、礼をする為だけに後を追うなど、どうかしている。
正直言って疑わしい事この上なく、この非常識を世間知らずなんて言葉で片付けるなら、きっと彼の旅路はとっくの昔に終わっている。
だが、旅人の疑念なんて露知らずといった様子で、少女は不思議そうに首を傾げた。
「わたし、何かヘンなこと言いましたか? お世話になった方にお礼をするのは自然な事だと思うんですけど。しかも、命の恩人ともなれば」
「礼なら酒場にいた赤毛の女にすればいい、全部あの女のおかげだ」
「ヘザーさんですね、もちろん彼女にもお礼は伝えましたよ。そうしたら形にするなら、あなたにと言われまして」
「それでわざわざ追いかけてきたってのか? ……徒歩で? っつうかお前、あの町の人間じゃないんだろ、どうやってここまで来たんだ」
気になる点が多すぎて、処理できるところから処理しようとする旅人だが、当の少女は最初の質問にギクシャクしながら応じるのだった。
「それはまあ、歩いたり、とか……ですかね」
「この荒野だぞ、誤魔化すにしてもマシないい訳使え」
「うーん、それについては、あまり話したくありません。なので聞かないでください」
少女は明るく、しかしぴしゃりと言い切った。
西部に移住してくる人間の中には、元の場所で色々とやらかした連中も多く、執拗に詮索しないのが暗黙の了解だ。他人の事情なんて知らぬが吉であるから、旅人もその習慣に倣って話を先に進める。
「ふん。そんでさらに、あの町から礼を言う為にだけに俺を追ってきたのか?」
「そうですよ、何度も言ってるじゃないですか。誰かに助けられたら、それがどんなに小さな事でもキチンと返しなさいと教わったものです。一族の教えというものですね」
そう言って少女は微笑むが、旅人は苦笑いだ。
感謝などしばらくされた事も無ければ、丁重な感謝など生まれてこの方受けた例しがないので返し方が分からないというのが、正確かもしれなかった。
「なんだ、どっかの部族出身か?」
「そうですね…そんな感じです。たくさんありますけど、強いていうなら龍族…ですかね」
先住民と一言で掛かっても様々な部族に分かれている。少女の言う龍族もおそらくその中の一つだろう、元々先住民は土地や自然との繋がりが強いこともあり、大空を我が物顏で飛び回るドラゴンを部族名に冠していてもなんら不思議はない。
とはいえ、アトラス共和国による侵略により土地を追われた部族がほとんどで、軍との戦闘により滅んだ部族もあるくらいだ。残った小規模の部族を知っているかとなれば別の話で、旅人の訝る眉のシワに少女は驚くのだった。
「ドラゴンですよ、ドラゴン⁉︎ 知らないんですか、あの強くて可愛い空の覇者を」
言いたいことはいくつか浮かんだが旅人は呑み込んだ。無論、ドラゴンならば知っている。ドラゴンに関する情報は多くはないが、なんならどうやって殺すかまで対策を練るくらいには詳しい。ドラゴンといえど基本的には生き物、つまるところどデカイ空飛ぶトカゲと同じで、頭か心臓に鉛をぶち込んでやれば動かなくなる。
その際に問題となるのは鱗の強度だが、貫くことは不可能ではない。しかし、そんな事を話しても仕方がないので、彼は本筋に話を戻す。
「……雇われただけだ、礼なんかいらん」
「そうはいきません、命の恩人に対して礼を失したとあれば、末代までの恥ですから。なんとしてもお礼をさせていただきます! さあ、なんでも申しつけてください!」
返される側の意見は一切無視した、一方的な返礼なんて迷惑以外の何ものでも無い。大体、行き倒れかけていた少女にどんな事ができるのかがそもそもの疑問としてあり、旅人は答えに詰まる。
しかし、そんな彼を急かすように、少女は「さぁさぁさぁ」と両腕を振り上げて迫るのだった。……それだけならよかったが、旅人は大いに仰天することになる。なにしろ両腕を振り上げた際に、めくれ上がった少女のマントの下は、驚くことに素っ裸なのだから。
旅人が思わず飲みかけのコーヒーを吹き出したのは仕方のない反応だった、こんな少女が布きれ一枚で出歩いてるなんて誰が想像するだろうか。
「おまっ……! その下に服着てねえのかよ⁉」
と思わず怒鳴っても、少女はきょとんとした顔で「はい」と答えるだけで、正しい反応を示したのは、食事中からずっと二人を見つめていたシェルビーの方だった。
「どうどう、大丈夫だ。落ち着け、何でも無い」
興奮した愛馬を宥めるが、旅人の内心はまったく平静を失っていた。
ほぼ素っ裸で出歩き、礼の押し売りをしてくる少女など、確実にトラブルの種だ。なんとかして諦めさせる必要がある。
そう彼が考えていた矢先、少女は口元に小さな笑みを刻んだ。
「……私なら、きっとあなたの願い事を叶えてみせますよ」
静かな言葉に少女を見遣るが、自信ありげなその表情が、むしろ旅人の神経を逆撫でする。
願いを叶える? なるほど願ってもない事だがしかし、彼の抱く願いとは易々と叶うものでは無く、そして決して輝かしいものでもない。そして何より、自らの手で成し遂げてこそ意味を持つ行為だった。
突き放しても縋る様は、うっかり餌付けてしまった結果と知りつつ、彼は軽蔑を込めて少女を睨む。その視線にはふつふつと沸く怒りも込められている。
「まるでおとぎ話のランプだな。じゃあ俺の願い事を当ててみろよ。そしたら頼んでやる」
「あ~、それはできません、教えてもらわないと」
「人捜しだ、今すぐ探し出せるか? そいつのいるところまで俺を運べるか」
詰問。
明るい少女でも、神経に触ったことを理解したらしい。
「……すいません、できないです」
「なら決まりだな、朝になったら町に戻れ。アイリス、だっけか。俺の為に出来る事なんて、お前にゃあねえよ」
旅人がキツい口調で責め立てると、少女は寂しそうに肩を落とした。心なしか萎びた金髪と潤んだ瞳は七色に反射して、見ている人物にも悲しみを伝播させる。
思惑通りに事は運んだ、しかし目の前でこうもがっつり傷付かれると、怒り任せに吐きだした旅人でさえ罪悪感は芽生えるもので、彼もすっかり黙ってしまった。
ただ時間が過ぎ、
薪がパンと弾けた。
会話もすっかり途絶え、沈黙に耐えきれなくなった旅人はさっさと寝支度を整えて、ハットで目と耳を塞ぐ。暫くすると、少女も横になる気配がした。
そして、翌朝
アイリスが目を覚ますと、旅人の姿はなくなっていて、代わりにロングコートが一着残されていた。
その女は少女と呼ぶに相応しい外見で、十七歳かそこからだ。
背は低めだが、顔立ちはどこか年齢よりも大人びていて、可愛いと甘やかすより美人と褒めるべきだろう。自由奔放な金髪は腰ほどの長さがあり、同じく黄金の瞳は太陽に照らされた小麦のように、灯りの傍ではくっきりと力強い。その癖、彼女の肌は四六時中太陽の照りつける西部には珍しく、雲のように白く透き通っていて、その剛柔が絶妙なバランスを保った芸術的な美しさは、なるほど、攫われそうになるのも納得がいくものだった。
まぁ一度、助けたんだ二度でも同じだろう。
そう考えていた旅人だったが、いささか考えが甘かったと痛感する事になる。
「兎は初めて食べましたけど、意外とおいしいですね」
餓えた少女に食事を出してやれば、まぁ食べること食べること。
少女は一切躊躇いなく、両手で肉を鷲掴みにし、それこそ男でも引くくらいにがっついていた。これから先、男絡みで困ったならば食事に誘ってみれば解決しそうなくらいに、品というものがなく、これに比べれば先住民やオーク族の食事風景のなんと文明的な事か。食事を恵んでいるというより、動物に餌付けしている気分だ。
骨に付いた肉片まで綺麗に平らげると、彼女はマントで口元を拭い、実に満足げな笑みを浮かべる。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます、二度も助けてもらって」
「まるで野蛮人だな、どれだけ飯喰ってなかったんだ」
「さぁ? 忘れちゃいました」
休む事を一時諦めた旅人は、自分のコーヒーを淹れるついでに、少女にも一杯淹れてやると石壁に再び背中を預けた。
揺れる炎を眺める少女は、なんというか幻想的な存在に思える。
悪くない、美人だ。さぞ言い寄る男も多いだろう。
ふと、顔を上げた少女と目が合い、旅人はハットを目深に下げる。炎の灯りを押しのけるほど少女の笑みは眩しい、強烈すぎる魅力ってのは度数の高い酒と同じで、いきなり摂取すると身体に悪い。
「――? どうかしました?」
「いや、なんでもない。お前こそ、なんの用で俺を探してたんだ」
「ああ、そうでした! すっかり忘れてました」
パンと彼女は両手を打つ。それにしても少女の声は元気が良く、夜の荒野によく響く。先程まで餓えてひーひー言っていたとは思えない。
「お礼をしようと思ってたんです、町で助けてもらったので。危ないところでした」
「…………それだけか?」
「はい、それだけですよ? 本気を出せれば、あんなのなんてことないのですが、今日は日が悪くて」
わたし、つよいんですよ、と少女は笑うが、随分大きく出たものだ。見たところ少女は着の身着のままといった様子で、馬もなければ、装備も無し。マントの下に銃を提げている可能性はあるが、抵抗できずに攫われかけた事を考えれば丸腰だろう。
そもそも徒歩で荒野を移動するなど、隣町まででも準備不足どころか自殺行為も甚だしい、馬鹿のやる事だ。西部での移動には馬が必須、そんな当たり前の事さえ気に留めず、礼をする為だけに後を追うなど、どうかしている。
正直言って疑わしい事この上なく、この非常識を世間知らずなんて言葉で片付けるなら、きっと彼の旅路はとっくの昔に終わっている。
だが、旅人の疑念なんて露知らずといった様子で、少女は不思議そうに首を傾げた。
「わたし、何かヘンなこと言いましたか? お世話になった方にお礼をするのは自然な事だと思うんですけど。しかも、命の恩人ともなれば」
「礼なら酒場にいた赤毛の女にすればいい、全部あの女のおかげだ」
「ヘザーさんですね、もちろん彼女にもお礼は伝えましたよ。そうしたら形にするなら、あなたにと言われまして」
「それでわざわざ追いかけてきたってのか? ……徒歩で? っつうかお前、あの町の人間じゃないんだろ、どうやってここまで来たんだ」
気になる点が多すぎて、処理できるところから処理しようとする旅人だが、当の少女は最初の質問にギクシャクしながら応じるのだった。
「それはまあ、歩いたり、とか……ですかね」
「この荒野だぞ、誤魔化すにしてもマシないい訳使え」
「うーん、それについては、あまり話したくありません。なので聞かないでください」
少女は明るく、しかしぴしゃりと言い切った。
西部に移住してくる人間の中には、元の場所で色々とやらかした連中も多く、執拗に詮索しないのが暗黙の了解だ。他人の事情なんて知らぬが吉であるから、旅人もその習慣に倣って話を先に進める。
「ふん。そんでさらに、あの町から礼を言う為にだけに俺を追ってきたのか?」
「そうですよ、何度も言ってるじゃないですか。誰かに助けられたら、それがどんなに小さな事でもキチンと返しなさいと教わったものです。一族の教えというものですね」
そう言って少女は微笑むが、旅人は苦笑いだ。
感謝などしばらくされた事も無ければ、丁重な感謝など生まれてこの方受けた例しがないので返し方が分からないというのが、正確かもしれなかった。
「なんだ、どっかの部族出身か?」
「そうですね…そんな感じです。たくさんありますけど、強いていうなら龍族…ですかね」
先住民と一言で掛かっても様々な部族に分かれている。少女の言う龍族もおそらくその中の一つだろう、元々先住民は土地や自然との繋がりが強いこともあり、大空を我が物顏で飛び回るドラゴンを部族名に冠していてもなんら不思議はない。
とはいえ、アトラス共和国による侵略により土地を追われた部族がほとんどで、軍との戦闘により滅んだ部族もあるくらいだ。残った小規模の部族を知っているかとなれば別の話で、旅人の訝る眉のシワに少女は驚くのだった。
「ドラゴンですよ、ドラゴン⁉︎ 知らないんですか、あの強くて可愛い空の覇者を」
言いたいことはいくつか浮かんだが旅人は呑み込んだ。無論、ドラゴンならば知っている。ドラゴンに関する情報は多くはないが、なんならどうやって殺すかまで対策を練るくらいには詳しい。ドラゴンといえど基本的には生き物、つまるところどデカイ空飛ぶトカゲと同じで、頭か心臓に鉛をぶち込んでやれば動かなくなる。
その際に問題となるのは鱗の強度だが、貫くことは不可能ではない。しかし、そんな事を話しても仕方がないので、彼は本筋に話を戻す。
「……雇われただけだ、礼なんかいらん」
「そうはいきません、命の恩人に対して礼を失したとあれば、末代までの恥ですから。なんとしてもお礼をさせていただきます! さあ、なんでも申しつけてください!」
返される側の意見は一切無視した、一方的な返礼なんて迷惑以外の何ものでも無い。大体、行き倒れかけていた少女にどんな事ができるのかがそもそもの疑問としてあり、旅人は答えに詰まる。
しかし、そんな彼を急かすように、少女は「さぁさぁさぁ」と両腕を振り上げて迫るのだった。……それだけならよかったが、旅人は大いに仰天することになる。なにしろ両腕を振り上げた際に、めくれ上がった少女のマントの下は、驚くことに素っ裸なのだから。
旅人が思わず飲みかけのコーヒーを吹き出したのは仕方のない反応だった、こんな少女が布きれ一枚で出歩いてるなんて誰が想像するだろうか。
「おまっ……! その下に服着てねえのかよ⁉」
と思わず怒鳴っても、少女はきょとんとした顔で「はい」と答えるだけで、正しい反応を示したのは、食事中からずっと二人を見つめていたシェルビーの方だった。
「どうどう、大丈夫だ。落ち着け、何でも無い」
興奮した愛馬を宥めるが、旅人の内心はまったく平静を失っていた。
ほぼ素っ裸で出歩き、礼の押し売りをしてくる少女など、確実にトラブルの種だ。なんとかして諦めさせる必要がある。
そう彼が考えていた矢先、少女は口元に小さな笑みを刻んだ。
「……私なら、きっとあなたの願い事を叶えてみせますよ」
静かな言葉に少女を見遣るが、自信ありげなその表情が、むしろ旅人の神経を逆撫でする。
願いを叶える? なるほど願ってもない事だがしかし、彼の抱く願いとは易々と叶うものでは無く、そして決して輝かしいものでもない。そして何より、自らの手で成し遂げてこそ意味を持つ行為だった。
突き放しても縋る様は、うっかり餌付けてしまった結果と知りつつ、彼は軽蔑を込めて少女を睨む。その視線にはふつふつと沸く怒りも込められている。
「まるでおとぎ話のランプだな。じゃあ俺の願い事を当ててみろよ。そしたら頼んでやる」
「あ~、それはできません、教えてもらわないと」
「人捜しだ、今すぐ探し出せるか? そいつのいるところまで俺を運べるか」
詰問。
明るい少女でも、神経に触ったことを理解したらしい。
「……すいません、できないです」
「なら決まりだな、朝になったら町に戻れ。アイリス、だっけか。俺の為に出来る事なんて、お前にゃあねえよ」
旅人がキツい口調で責め立てると、少女は寂しそうに肩を落とした。心なしか萎びた金髪と潤んだ瞳は七色に反射して、見ている人物にも悲しみを伝播させる。
思惑通りに事は運んだ、しかし目の前でこうもがっつり傷付かれると、怒り任せに吐きだした旅人でさえ罪悪感は芽生えるもので、彼もすっかり黙ってしまった。
ただ時間が過ぎ、
薪がパンと弾けた。
会話もすっかり途絶え、沈黙に耐えきれなくなった旅人はさっさと寝支度を整えて、ハットで目と耳を塞ぐ。暫くすると、少女も横になる気配がした。
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